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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「海一族と山一族」30

2018年01月16日 | T.B.1998年

暗い森の中の開けた場所。
鬱そうと暗闇に
一筋の光が差し込んでいる。

滝が流れる水辺の側に
大きな石がある。
儀式に使われる神聖とされる場所。

そこに
カオリが横たわっている。

「カオリ!!」

アキラが呼びかけるが
反応は無い。

まさか。

「まぁ、落ち着け。
 まだ生きているよ」

カオリを連れ去った裏一族が
答える。
その姿はどう見ても海一族。

「まだ、だと」

「大丈夫だ。
 お前達も皆、
 同じく犠牲になるのだから」

そう答える別の裏一族は
山一族の格好をしている。

「こうやって、
 一族の中に入り込んでいるのか」

そこから、更に二人、
トーマとアキラの後ろから現れる。

四対二。

「いけるか?」
「やるしかないだろう」

その前に、と
トーマは問いかける。

「なぜ、お前達が
 俺達の儀式に関わっている。
 いつからだ!?」

「俺達の、儀式、だってさ」

裏一族はこらえきれず吹き出す。

「生け贄を横取りされたとでも
 思っているのか?」

そして、こう続ける。

「これは最初から
 裏一族のための
 裏一族が仕組んだ儀式だよ」

「死なない程度に
 毒を流すのも大変だったな」
「神がお怒りだと
 思わせるような自然な災いを起こすのもね」

そんな訳が、とアキラも言う。

「数十年に一度と
 続いてきた事だ!!
 それを仕組んだ、だと?」

簡単な事だ、と
裏一族は答える。

「数十年に一度の儀式だからだ。
 詳細を知るものは少ない」
「少しずつ、話しをすり替えていけば良い」

ほら、と
カオリを指し示す。

「自然と犠牲者がやって来てくれるから
 楽なものさ。
 どこかの村から攫ってくるより
 穏便で容易い」

「穏便、だと!?」

「だけど、今回は
 ちょっと待てなくてね」

裏一族達も
それぞれに武器を構えはじめる。

「手早く終わらせて貰うよ」


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