TOBA-BLOG 別館

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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「海一族と山一族」29

2018年01月09日 | T.B.1998年

トーマも詳しい事は知らない。
ただ、
そういう魔法があると聞いた。

曰く、
人を生き返らせることが出来る。

曰く、
年老いた体を若返らせることが出来る。

だが、割に合わない。
困難な願いであればあるほど
必要な命が多くなると言う。

まるで、お伽話の様だと
思ったのを覚えている。

「……本当に、実在するのか?」

そんな魔法が。

ふ、と
アキラが足を止める。

「……いるな」

鬱そうとした森の中の獣道。
だが、
その先に自分たち以外の気配を感じる。

「あぁ」

いる。

それも、ひとりではない。

二人は武器を構え
足音を立てない様
ひっそりと進む。

早くしなければ。
手遅れにならないうちに。

「………なんだ?」

ふと、その場の空気が変わる。
アキラとトーマは顔を見合わせる。

「下だ」

違和感はそこから。
光の線が二人の足元を抜けて伸びていく。

「紋章術の陣」

アキラが呟く。

「これが?」
「あぁ、
 うちは紋章術を使うから、分かる」
「陣と言ったって」

トーマにはただの線にしか見えない。
つまり、
この場にはとても大きな陣が
張り巡らされているという事。

トーマ達が見ているのは
その一部。

「裏一族には
 強力な魔法を使える者が居るのか」
「そう、らしいな」

トーマは問いかける。

「どうする?
 このまま進むか?」

アキラもどう思う?と
尋ねるように聞き返す。

「気配はそう、多くない」

行こう。
二人は頷き前に進む。

ふと、視界が開ける。
暗い道を進んできたので
明るさに目が慣れない。

そんな中、
声が聞こえる。

「来たぞ、別の命が」

喜んでいるような
からかっているような
そんな声が。

「お前らの命も
 使わせてもらう」

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