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「西一族と巧」3

2019年03月29日 | T.B.1996年


「お疲れー!」
「お疲れー!!」
「おい。華は酒だめだぞ」

 3人は、西一族の村でお店が集まる場所へとやって来る。
 食堂が多い。
 辺りは暗くなっていて、店の光が灯る。

 この狩りに出た者たちは、だいたいここで集まっている。

 ので

「耀(よう)、狩りどうだった?」
「うちの班はそこそこだよ」
「うちも獲れたけど、痩せてるんだよなー」
「そうそう」
「うちは小さいけど、数は稼いだ」
「何獲ったの?」
「兎よ。ね、悟(さとる)」
「おい。自慢にならないぞ、美和子(みわこ)」
「狩りの道具だけど、今度一斉に手入れをした方が良さそうだ」
「なら、うちもお願いしたい」
「狩りの合間に集まるか?」

 大宴会のように、みんなで狩りの報告会。

 好きなものを食べ、飲み
 わいわいと、盛り上がる。

 どこからか楽器を取り出し、音楽を奏でる。

「巧」

 耀が、巧の横に坐る。

「お前、当分狩りは休みか?」
「いや、判らないけど」

 なぜ? と、巧は首を傾げる。

「俺、頼まれた用事を少し片付けたいんだ」
「頼まれ?」
「そう」
「ふぅん」

 巧は酒を飲む。

「それで、まあ、」
「代わりに狩りを頼む、てことだろう?」
「話が早いな、巧は!」

 耀は笑う。

「負担にならないように、何人かには声かけてあるんだ」
「そう」
「お礼はするからな」

 巧は、酒を注ぐ。

「お礼ってこれ?」
「いやいや。ちゃんと別に、な」
「用事って、どこに行くんだ?」

 巧は首を傾げる。
 何人かに、狩りの交代を頼んでいる。
 つまり、一日二日の用事ではない、と云うことだ。

「ちょっとな」
「そんなに、長期遠出を?」
「あはは」

「笑い事じゃないぞ、耀」

 いつの間にか、悟が横に立っている。

「用事でも、こまめに村に戻って狩りを手伝え」
「あー、やるやる」
「狩りの腕も落ちるぞ」
「次の村長は口うるさいなぁ」
「ふざけるなよ」
「ふざけてないって」
「悟、やめてくれ」

 巧は口を挟む。

 ここ最近、このふたりの雰囲気は良くない。
 以前はそうでもなかったが
 本当に、ここ最近。
 同じ西一族でも、考え方が違うこともある。
 そのわずかな衝突なのだろうか。

 巧は耀に云う。

「俺は手は空いてるし、狩りは出るよ」
「ありがとうな、巧」

 云いながら、耀は飲む。

 悟は鼻であしらうと、他の席へと行く。

 代わりに

「用事って何だ?」
「何々?」

 向と華が、巧と耀の席に着く。

「ほら、巧食え」
「捌き立ての肉の串焼きは最高ね!」
「お前ら酔っているな」
「私は飲んでないけどー」
「酒はだめだと行ったろう、華!」
「用事ってほら、耀もついに結婚か?」
「きゃー!!」
「はは! 酔っ払いに話しても、右から左だろ?」

 耀の仕草に、3人は笑う。



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