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「山一族と海一族」52

2018年05月25日 | T.B.1998年

 相容れない一族。
 山一族と海一族。

 その両一族が、大人数で揃っていると云うのは、壮観である。

「アキラ!」

 メグミが、アキラに近寄る。

「無事で、よかったわ」

 その姿をよく見る。

「いえ……、そこそこに無事みたいね」
「そう云うことにしておいてくれ」
「カオリもマユリも!」

 メグミは、ふたりを抱きしめる。

「無事でよかった!」

「さて」

 海一族の長が、声を出す。

「共に、怪我人がいるようだが、」

 アキラとトーマ
 それに、生け贄のふたりは、応急処置を施してもらった。

「これまでの話を聞かせてもらおうか、トーマに山一族」

 アキラとトーマは頷き、これまでのことを話し出す。

 異変には、裏一族が関わっていたこと。
 生け贄は、そもそも裏一族が欲していたこと。
 すべてに裏一族の痕跡があること。

 そして

「もう、生け贄は必要ないんだ」

 トーマが云う。

「犠牲者はもう出ることはない」

 両一族がどよめく。

「生け贄が、」
「必要ない……?」

「俺たちは裏一族に、裏一族のために利用されていたんだ」

 そうは云っても、

 これまで伝統のように続いていた儀式。

 犠牲者が必要とは云え、

 これできっぱりと終わる、と云うことに結論付けるまで
 まだ少し、時間がかかりそうだ。

「まあ、でも」

 トーマは息を吐く。
 アキラも頷く。

 次、この儀式は、早くても10年後。
 時間はまだある。

 それまでにいい方向で、まとまるだろう。

「また改めて、正式な場を取り持つとしよう」
「では、フタミ様にそう伝えます」

 メグミが頷く。

 海一族の長が手を上げる。
 引き返すと云うことなのだろう。

「もちろんトーマもだ」
「え、でも、長」

「早く戻って、手当てをせねば」

「ほら、山一族も皆戻るわよ」
「姉様!」

 カオリはメグミを引き止め、そして、トーマを見る。

「まだ、お礼をしてない……」

「きっとフタミ様から、令状が行くはずよ」
「でも、」

 アキラもメグミを見る。

 すべてのことが終わったのだ。
 だから、山一族の村へ帰るのは、当たり前のこと。

 だが、

 ここで、

「突然にお別れも、」
「淋しいよな」

 アキラの言葉を、トーマが継ぐ。

「お別れ?」

 海一族の長が振り返る。

「お別れ、とは?」
「敵対する一族だけど、それなりに協力をした仲だから」

 トーマは苦笑いをする。

「トーマよ、そんなことを云うようになったか」
「すいません」

 海一族の長は息を吐く。

 アキラはその様子を見る。

「山一族よ」

 アキラと海一族の長の目が合う。

「これからも、トーマのことをよろしく頼む」
「…………?」

「では、」

「はい」

「しかるべき通知を出せば、海一族のへの入村を許可しよう」



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