TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「武樹と父親」7

2020年08月25日 | T.B.2017年
「ええっと、哉樹
 驚かせてごめんね」

未央子は哉樹を覗き込む。

「まさか。
 あんたがそんな恐がりだとは」
「俺、コワガリジャナイヨ」
「………まだ恐怖を引きずっているぞ、こいつ」

「そもそも、未央子。
 こんな時間にどうしたの?」

沙樹が問いかける。

「実はお茶会の帰り道なの。
 男の子達ばかり集まって楽しそうだから、
 女子も何かやりたいねって」

「へえ」

「みんなでお菓子作って、お茶入れて、
 お喋りしていたらこんな時間で」

「女子会だ」
「いや、でも
 女子っていつも集ってない?」
「ばかやろう。
 いつもの集いと特別な集い。
 例え同じ事をしていても、全く別物なんだよ」
「辰樹兄さんはどうしたの?」

未央子は村はずれの家の子を
送って行った帰り、らしい。

「今の時期は日が長いからって
 油断してたわ」
「そうだね。
 一人は危ないよ、未央子」

「不用心過ぎるんじゃないか」

ぽつり、と武樹は呟く。

皆が振り返り、
武樹が一人、会話に加わっていなかった事に気がつく。

「ええ、そうね」

ごめんなさい、と未央子が謝る。

「俺に謝られても困るんだけど」

「………うん」

はいはい、と辰樹が手を上げる。

「そう言う事なら、未央子姉さん。
 俺が送っていってやろう」

お前もな、と哉樹も巻き込まれる。

「おおお、おう」
「たすかるわ。
 “姉さん”は余計だけれど」

未央子と辰樹は同い年でいとこ。
ついでに、哉樹もいとこ。

「でも、未央子の方が
 お姉さんっぽいだろう」
「………そうだね、辰樹兄さん」

落ち着きという意味合いでは。

「いとこズ大集合だね。
 ―――あ、でも、むっくん」
「?」

なに?と
顔を向けた武樹に沙樹が言う。

「むっくんと未央子って
 何だか似ているよね」

「   」

「口元のホクロとか」
「ホクロだけ、かい」
「黒髪、黒目、とか」
「それ、みんなだから」
「つまりは広い意味では
 俺達みんな縁者だよね」
「広いな~」

同じ集落の同じ名字の人は
元を辿ればだいたい親戚。みたいな。

「そりゃ、似てるだろうよ」

沙樹と辰樹のやりとりを
相手をしていられない、と
武樹は先に一人で歩いて行く。

「ああ、むっくん、待って待って」

そこから先は分かれ道。
未央子を送っていく辰樹達と
武樹・沙樹の二手に分かれる。

「それじゃあ、みんな」

またね、と手を振る沙樹に
辰樹はこう返す。

「お前も意地が悪いな沙樹」

うーん、と沙樹は悪びれずに答える。

「まあ、さっきのは
 むっくんが悪いからね」

お隣に住んでいる兄貴分としては、
指導をしなくては。

はー、と
感心したのか呆れているのか
辰樹は息を吐く。

「んじゃあ、俺達も帰るか」

と、既に暗くなっている道を
いとこズは歩く。

「あのさ、未央子姉さん」

哉樹が言いにくそうに問いかける。

「むつ兄と何かあったの?」
「え?」
「だって、むつ兄、
 姉さんには当たり強いよな」
「んん、そう、かな」

未央子は苦笑する。

「いいのよ。
 放っておいてあげて」
「姉さん大人の対応だな」
「そんなんじゃないわよ」

「いや、待て」

俺分かった、と辰樹が言う。

「あれは、
 ツンなんとか、というやつでは?」

いや、と
未央子と哉樹は声をあげる。

「「それは違うんじゃないかな!!」」


NEXT


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。