「まだ間に合う」
南一族の村。
そこで、その男は言う。
「やり直すべきだ。
全て話して、なにもかも」
いや、
いいや、と成院は首を振る。
「許されるわけがない」
「それでも、だ」
「分かってくれというのか?
今までの十数年は
全部、欺いた物だったと
皆にそう言えというのか?」
そうだ、とその男は頷く。
待ってくれ、と成院は答える。
「無理だ」
今さらどの面を下げて、と
懇願する。
罰を受けるだろう。
その覚悟はある。
いつかは、と思っている。
でも、それは
今ではない。
「放っておいてくれ。
いいじゃないか、このままで」
「駄目だ。
それは許されない」
成院の苦しみなど知るわけもなく。
その男は言う。
「罰を受けたとしても、
お前は全てを明らかにして
帰らないといけない」
あまりにも横暴だ、と
成院は首を振る。
「お前に俺の何が分かると言うんだ」
「わかるさ」
男は答える。
「俺はお前だからな」
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