TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「東一族と裏一族」10

2018年08月24日 | T.B.1997年

「俺の、」

 舞い上がる砂に、佳院は目を細める。

「……俺の、何だ?」

「俺の、家族のようなもんだ」

「……何?」

「家族に会いに来て、何が悪い!」

「――――っっ!」
「放せ!」

 裏一族は、佳院を弾く。
 走る。

 佳院は、足を踏み張る。
 裏から放れたその手で、陣を張る。

 東一族式紋章術。

「行かせない!」
「魔法は苦手なんだよ!」

 裏一族は声を上げる。

「特に、東一族式はな!」

 裏一族の足下の砂が盛り上がる。
 だんだんと、その高さが高くなる。
 裏一族は、それを見上げる。

「壁?」
「砂でも強力だ」
「捕らえる気なんだろ!?」

 裏一族は走る。

「逃がさない」

 その言葉に、裏一族は笑う。

 紋章術で壁となった砂は、形を変え、裏を包もうとする。

 裏一族はそのまま、その壁に走り込む。
 手を差し出す。

「何を!」
「別に」

 目の前を塞ぐ、砂の高い壁。

 が

 突然

 力なく、崩れ落ちる。
 舞い上がる砂。

「紋章術が、」

 もはや、ただの、砂。

「無効化、だよ」

 崩れ落ちた砂が、大きく舞い上がっている。
 視界が奪われる。

「じゃあな」
「待て!」
「東の中に入れてもらおう」

 裏一族は、その姿を砂埃の中へ。

「…………!?」

 と、

 裏一族は、足下の違和感に気付く。

「何だ」
 そこに、
「何だ、これは!!」

 足に絡まる。無数の蛇。

「くっ!」

 振り返り、佳院を見る。

「東の飼い慣らしか」
「飼い慣らしじゃない」
「よく云うことを聞かせている」
「それ以上動くな」

「くそが」

 鼻で笑う。
 が、
 裏一族のその目は笑っていない。

「ここで東宗主の次男とは、外れだったな」
「…………」
「東を守るための道具みたいなもんだって」
「…………」
「そう、聞いたことがある」

 裏一族は、佳院の様子を窺っている。

「一族に相手にされずに」
 佳院は目を細める。
「さぞかし、ほかの東一族が羨ましかろう」
「…………」

「いや、……待て」

「何、」

 裏一族は手を広げてみせる。

「……ちょっと思い出した」
「…………?」

「昔、お前みたいに自分の一族に相手にされなかったやつ」

 お互い構えたまま。

 どちらが先に動くか。

「仕方ない、……出直しだ」
「何を云う」
「お前も動くな!」

 風が動く。

 ――――!!

「っっ!!?」

 佳院は驚く。

 その肩に、矢が刺さっている。

「よしよし。宗主直系でも攻略は出来るな」

 佳院は、立ったまま動かない。
 刺さった矢を見る。

「ほら、放れろ」

 裏一族は、蛇を振り払う。



NEXT

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。