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「東一族と裏一族」9

2018年08月17日 | T.B.1997年


 砂漠地帯。

 あたりは暗闇。
 急激に気温が下がりだす。

 佳院は耳を澄ます。

 風。

 そして

 何かが近付いてくる、音。

 誰か、人。

「んんん?」

 その誰かが声を出す。

「こんなところに人か?」

「……北の商人」

「ああ、そうだ」

 月明かりの中、その姿が現れる。
 云う通り、北の商人、の格好。

「東一族が砂漠に?」
「この先は東一族の村だ」
「判っているよ」
 北の商人は薄く笑う。
「東一族の村に、商品を売りに来たのだから」

「本当は?」

 佳院が云う。

「東に何をしに?」

「おいおい」

 北の商人は手を上げる。

「商品を売りに来たと云っただろう。それが北一族だ」
「売りに来たと云うか」

 佳院は首を傾げる。

「飾りを配っているんだろう」
「…………」
「そして、……探しているな」
「…………はは、」
「誰を、探している?」

「ぜーんぶ、ばれているんだな」

 その言葉に、佳院は目を細める。

「お前は誰だ?」
「北の商人だよ」
「いや、」
「お前こそ誰だ?」

 北の商人は、一歩前に出る。

「あー……、宗主の直系か」

「…………」

「長男、ではなさそうだな」

「…………」

「なら、」
「動くな、裏一族」

 佳院は云う。

「これ以上は駄目だ」
「何が?」
 裏一族と呼ばれた北の商人が笑う。
「何が駄目なんだ?」
「東一族を連れて行くことは許さない」

「ばかなことを」

 裏一族は、さらに佳院に近付く。

「さあ」

 裏一族は手を差し出す。

「渡してもらおうか」

「…………っっ!!」

 発光。

 衝撃。

 大量の砂。

 何も、

 見えない。

「裏一族っ!!」
「面倒くさいな、東一族は!!」

 裏一族が動く。

 が

 佳院は、その腕を掴む。

「何がいけない!」
「動くな、裏!!」

「あいつは俺の、」



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