「俺の、」
舞い上がる砂に、佳院は目を細める。
「……俺の、何だ?」
「俺の、家族のようなもんだ」
「……何?」
「家族に会いに来て、何が悪い!」
「――――っっ!」
「放せ!」
裏一族は、佳院を弾く。
走る。
佳院は、足を踏み張る。
裏から放れたその手で、陣を張る。
東一族式紋章術。
「行かせない!」
「魔法は苦手なんだよ!」
裏一族は声を上げる。
「特に、東一族式はな!」
裏一族の足下の砂が盛り上がる。
だんだんと、その高さが高くなる。
裏一族は、それを見上げる。
「壁?」
「砂でも強力だ」
「捕らえる気なんだろ!?」
裏一族は走る。
「逃がさない」
その言葉に、裏一族は笑う。
紋章術で壁となった砂は、形を変え、裏を包もうとする。
裏一族はそのまま、その壁に走り込む。
手を差し出す。
「何を!」
「別に」
目の前を塞ぐ、砂の高い壁。
が
突然
力なく、崩れ落ちる。
舞い上がる砂。
「紋章術が、」
もはや、ただの、砂。
「無効化、だよ」
崩れ落ちた砂が、大きく舞い上がっている。
視界が奪われる。
「じゃあな」
「待て!」
「東の中に入れてもらおう」
裏一族は、その姿を砂埃の中へ。
「…………!?」
と、
裏一族は、足下の違和感に気付く。
「何だ」
そこに、
「何だ、これは!!」
足に絡まる。無数の蛇。
「くっ!」
振り返り、佳院を見る。
「東の飼い慣らしか」
「飼い慣らしじゃない」
「よく云うことを聞かせている」
「それ以上動くな」
「くそが」
鼻で笑う。
が、
裏一族のその目は笑っていない。
「ここで東宗主の次男とは、外れだったな」
「…………」
「東を守るための道具みたいなもんだって」
「…………」
「そう、聞いたことがある」
裏一族は、佳院の様子を窺っている。
「一族に相手にされずに」
佳院は目を細める。
「さぞかし、ほかの東一族が羨ましかろう」
「…………」
「いや、……待て」
「何、」
裏一族は手を広げてみせる。
「……ちょっと思い出した」
「…………?」
「昔、お前みたいに自分の一族に相手にされなかったやつ」
お互い構えたまま。
どちらが先に動くか。
「仕方ない、……出直しだ」
「何を云う」
「お前も動くな!」
風が動く。
――――!!
「っっ!!?」
佳院は驚く。
その肩に、矢が刺さっている。
「よしよし。宗主直系でも攻略は出来るな」
佳院は、立ったまま動かない。
刺さった矢を見る。
「ほら、放れろ」
裏一族は、蛇を振り払う。
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