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「山一族と海一族」53

2018年06月01日 | T.B.1998年

 彼は、石を並べる。

 さまざまな、大きさと色。

 周りには、彼のほかに、ふたり。
 この場所へは、限られた者しか入れない。

 彼らは、その、限られた
 力を持つ、者。

 彼は石を並べ続ける。

 それは、何かの法則に従っているのだろうか。

 ある程度、進むと、残りのふたりも、それぞれに石を取り出す。
 同じように、石を並べる。

「よろしいでしょうか」

 さまざまな石が、そこに並ぶ。

 彼は、ふたりを見る。

 けれども、明かりはわずか。
 表情を見ることは出来ない。

 代わりに、そのふたりは、手を合わせる。

 確認、の意。

 彼は頷く。

「では、」

 彼らは目を閉じる。
 手を合わせる。

「我が一族の未来のため」

 彼が云う。

「占術を行います」

 ことん

 小さな音とともに、ひとつの石が転がる。

 続けて

 並んでいた石が動き出す。
 何か音を奏でているように。

 石は、鳴り続ける。

 彼らはその様子を見る。

 やがて

 石は、規則的な模様を描き、動きを止める。

「……どうでしょうか」
「この結果は……」

 彼は、目を開く。
 石を、確認する。

「変わりませんな」
「先ほどと同じ」

 2度目の占術であることを示唆されて、彼は目を細める。

 ふたりは笑い出す。

「我が一族と」
「海一族の、」

 今後の関係。

 彼は首を振る。

「本当に、友好の兆しが?」

「占術がそう申しているのなら」
「そうなのでしょう」

 彼は息を吐く。

「今回の件での使者を立てろ」

「使者?」
「海への、ですか?」

「そうだ」

 ヒロノは頷く。

「この状況じゃ、フタミ様は動けない」
 云う。
「向こうは待っているんだろう」

 ふたりは立ち上がる。

「では、フタミ様に報告を」
「ヒロノ様は?」

 云われて、ヒロノは手を上げる。

「報告は頼む。ここで休んでから行く」

「判りました」
「そうですか」

「外に出たら、村の復興をやらなくちゃならん」

 山一族の村の損害は、膨大なものだった。
 多くの家が、火事で失われた。

 それでも今、新たな一歩を踏み出そうとしている。

「では、」
「まいりましょう」

「頼んだ」

 ヒロノは云う。

「力仕事は苦手だからな」



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