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「悟と諜報員」4

2015年11月24日 | T.B.2000年

「もう。考えすぎて
 何が真実か分からなくなってきた」

悟は自宅のソファでうなだれる。

透も広司も
怪しくないと見せかけて
本当は怪しいんじゃないか。

むしろ
『内部諜報員いるのかも?』
と言ってきた直子こそが
実は内部諜報員で
悟にカマをかけに来たのではないか。

最初に思ったが
考え始めると
泥沼にはまる。

「何なに?
 どうしたのよ?」

遊びに来ていた恋人の四ツ葉(ヨツバ)が
お茶を入れながら聞いてくる。

「…………」

「なに?」

「これがお前だったら
 もう俺は泣くぞ」

「だから、何が??」

「お前だけは信じてるから
 裏切らないでくれって事」
「ありがとう」

ふふふと四ツ葉は笑う。

頬に手を当てて笑う
恋人のいつものクセだ。

服の裾がめくれて
腕に付けている物がちらりと見える。

「って言うか。
 最近腕に付けているその飾り、何?」
「これ?
 北一族の村で買ったの。
 少しぶかぶかだけど面白いデザインでしょう」
「いや、それ」

東一族の装飾品。

西一族とは敵対する
湖のむこうの一族。

争っていた昔とは違い
今は冷戦状態。
東一族を見たことが無いという若者も多い。

そんな中、北一族の露店で
模造品が売られていて
知らずに買ったのだろうが。

「あんまり、付けない方が良いんじゃないか」

「何?ダメなの?」

それ、東の物だから、と言うと
なぜ悟がそれを知っているのかという事になってしまう。
諜報員だとは言えないので
何とも説明しづらい。

そんな悟の様子を見て
分かった、と四ツ葉が言う。

「その代わり、新しい腕飾りを頂戴
 今度、どこかに出かけたときのお土産で」

今は表向きの仕事と合わせて
諜報員での活動が多く
何かと遠出することが多い悟。

何も言わずに
ずっと付き合ってくれているが
きっと、待たせて居る。

「必ず、約束する」

潜入の調査が減って
少し落ち着く事が出来たら
きちんとこれからの話もしなくては。

想いを馳せる悟の隣で
まぁ、確かにまずいわよね、これ、と
四ツ葉が呟く。

「東の装飾品を付けてちゃ
 爺様連中がうるさいし」


「なんでそれ知ってるの!!???」



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