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「東一族と巧」1

2020年05月08日 | T.B.2000年

 西一族の村は、雪で覆われている。

 雪が降り、積もり
 晴れ、
 雪が溶ける前に、また、雪が降る。

 そんな時期。

 一族は、家や道の雪をかく。
 主に、家の中で出来る仕事をして、過ごす。

 西一族の暮らしの基本である狩りは、行わない。
 もちろん、狩り場である山も、雪が積もっている。
 獲物も痩せている。

 保存した肉や野菜で、この時期は乗り越える。

 空は晴れている。

 巧(たくみ)は、畑の雪をかく。

 ひとりで管理するには広すぎる、畑。

 雪が降る前は、この畑を耕し、作物を育てていた。
 日々、朝から晩まで
 ただ、それだけをやっているのだから、この広さでも何とかなる。

 獲れた多くの作物は、一族の村長に納め、
 残りは、自分用。
 ひとりなのだから、少しで足りる。
 雪が溶け、
 畑を耕し
 次の作物が獲れるまで、十分に保つ。

 雪の合間から、作物が見える。

 彼はそれを取り出す。

 根菜、ひとつ。
 葉もの、ひとつ。

 今日明日の食材。
 あとは、家にある保存食と。

 彼はそれを持ち、家へと戻る。

 雪道。

 村の人通りが多い場所は雪かきがされ、歩くのに問題はない。
 が
 ここは、彼だけが、通る道。

 雪が積もったまま。

 雪を踏みつけながら、歩く。

 家に着くと、彼は持っていたものを足下に置き、扉を開ける。
 そして、置いたものを持ち直し、家へと入る。
 また、ものを置き、扉を閉める。

 持ち帰った作物を、机の上に置く。

 いつもの場所に坐る。

 作業をはじめる。

 次期、畑に植える作物の苗、種子の手入れ。
 畑の道具を整備し、
 藁を束ね、新たな道具を作る。

 繰り返す。

 途中、立ち上がり、

 朝方に汲んだ水を飲む。
 作っておいた食事を取る。

 また、作業をはじめる。

 そして、日が傾く頃。

 彼は、窓から外を見る。

 外には誰もいない。
 そんな時間帯。
 そもそも、雪の時期は人出が少ない。

 彼は外に出て、薪を集める。

 誰にも、会わない。

 気温が下がり、雪が降り出す。
 薪が必要な時期は、しばらく続く。

 片手で持てるだけ、薪を抱える。

 歩き出す。

 先ほどと同じ。
 積もりきった雪を踏みしめ
 家へと戻る。

 旧ぼけた樹。
 その横にある、小さな一軒家。

 村外れに住み変えた、家。





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