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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「海一族と山一族」35

2018年02月20日 | T.B.1998年

灯りが見える。
つまり、誰かが居る。

「………」

考え込んで、アキラが言う。

「カオリを置いていく」
「大丈夫か?」
「この先に、連れて行くよりは」

木の影になるよう、
カオリを座らせる。

「ここに、紋章術をしていく」
「魔法を?」
「音やにおい、気配を隠す紋章術だ」
「そんなものが」
「複雑なものではないんだが」

そんな術があるのか、とトーマは感心する。
今回は、アキラの術に随分と助けられている。

この一件が片付いたら
魔法を習ってみるのも良い。

すべてが、片付いたら。

術が発動する。

「とりあえずは安心だな」

二人はカオリを残し、
先に進む。

洞窟の突き当たりには、
大きな石が鎮座している。

先程カオリが横たわっていた物と全く同じに見える。

その両脇の壁に
かすかな松明が燃えている。

洞窟の中はその灯りと
石の台を中心に巡らされている魔方陣の光で
仄かに照らされている。

「司祭様!?」

トーマはそこにいる人物に声を掛ける。

「知り合いか?」
「ああ」

トーマ自身も理解が追いつかないまま
答える。

「海一族の司祭様だ」

「トーマか、
 大変なことになったな」
「なぜ、ここに」
「騒ぎを聞いて駆けつけた。
 儀式を守るのが私の役目だ」

「そう、ですよね」

洞窟の中は、松明の灯りがあるとは言え
薄暗い。

トーマは目を凝らす。
おそらく、アキラも。

「表に居た裏一族は倒しました。
 でも、術が」
「あぁ、発動してしまっている」

暗い、そのなかに、
何かがある。

石の台座の上。

「それは」

何年、何十年という長い時間、ここにあったのだろう。
性別も、年齢も、それすら分からない。
恐らく、人であったもの。

司祭が手を伸ばす。

台座のさらに、その奥。

もう一つ、同じ様に台座がある。

そこにいるのは。



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