悪党どもの軍団に追われて、
五重の塔から飛び出したら、
どういうわけかそこは、
地上数十メートルくらい、
つるつる滑る車のボンネットの、
上だったのです。
私の足は人間より滑る構造です。
どんどん滑ってしまって、
もうすぐ地上に落ちてしまいます。
まさに「なんだこりゃ」
の世界に突如突入であります。
でも私は人間なんかよりも、
ずっと遥かに潔いのであります。
賢くもあるかもしれません。
黒い巨大なボンネットの端目掛けて、
一気に駆け出したのです。
「ぎゃおー」と声を上げた瞬間、
みごとにブラックアウトしたのです。
「ぷつん」してくれたのであります。
愛ってなんだ犬(人)生ってなんだ、
そんなのどうでもいい、
痛いのだけは勘弁してくれ。
そんな心でありました。