チェロ物語FINAL

虹の橋で、
そろそろ、
のんびり、

過ごします。

せりふ

2022年08月25日 | 犬の戯言


伝馬船を上手に漕ぐことは、

極めて難度の高い技であります。

さらにその伝馬船で運んで来た、

たぷたぷと溢れんばかりの液体を、

天秤棒で担いで歩くこと、

ましてや狭い段々畑の凹凸のある坂道を、

登ったりすることは、

命懸けの技と力の職人芸です。

たとえ元気で若かったとしても、

到底できることではないし、

私には不可能であります。

カミュさんや、

コミュさんのことなんかも、

疾うに忘れてしまっておりますし、

そう言われてみれば、

「向上心」とかいうような心も、

さすがに食べ物と間違いはしなくても、

いや食べ物だと思っているのであれば、

まだ逆に救われる、

かもしれないのであります。







ただあの雨の日、

歯ブラシを取りに戻っただけよ、

というセリフだけを憶えている、

ひたすら前しか見ないで歩いていた、

あのときのあの傘の中には、

恐らくは安物であろう、

甘い香水と一緒に、

もしかしたら安い「向上心」は、

瑞々しく大量にあったのかもしれません。

どちらかと言えば、

それは縁がなくもなかったような、

そんな気もしたりするのですが、

そろそろ朧になっているのです。
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