シンガポール取引所(SGX) 拡充しているデリバティブ(金融派生商品)で1~3月期に鉄鉱石先物の取引が前年同期の約3倍、ゴム先物も6割増えた。平均手数料は市場間競争で低下し収益への寄与は限られている。
SGXが20日に発表した1~3月期の純利益は前年同期比微増の8920万シンガポールドル(約72億7000万円)だった。
売上高は3.3%増の2億580万シンガポールドル。証券取引と決済事業の売上高は取引が比較的活発で4%増の5480万シンガポールドルとなった。これらの事業は前年と同じく売上高全体の27%を占めている。
デリバティブ(金融派生商品)の売上高は3%増の8220万シンガポールドルで、全体の売上高の40%を占めた。日経225や中国A50指数先物などを含む指数ベースの先物が堅調だった。
SGXのロー・ブンチャイ最高経営責任者(CEO)は記者会見で「新規株式公開(IPO)市場は引き続き低調だ」と述べた。SGXの事業セグメントの内、債券・株式の発行サービスを除くすべてで、売上高が前年より増加した。
【シドニー】鉄鉱石の価格はかつて、世界最大級の鉱山会社と鉄鋼メーカーの間の秘密協議で決められていた。いまや鉄鉱石の価格で決定力を持つのは、中国北東部にあるほとんど知られていない商品取引所だ。それは、鉄鋼から銅に至るまであらゆるモノの価格決定力が中国にシフトしている顕著な例である。
このシフトの原動力になっているのが中国の投資家だ。彼らは大連商品取引所(交易所)で取引されている鉄鉱石先物に何十億ドルもの資金を投入してきた。その勢いは昨年の中国株式の狂乱相場を思い起こさせる。米金融大手シティグループのデータによれば、大連の鉄鉱石先物はドル換算でニューヨーク金先物と同程度の売買高になっている。こうした投資の結果、かつて秘密クラブのように排他的だった鉄鉱石市場に決して存在していなかったものが生まれた。目に見えるリアルタイムの相場だ。
その相場が急騰している。16年に鉄鉱石が供給過剰になるとの見通しにもかかわらず、大連の鉄鉱石先物相場は年初来46%上昇した。それとともに鉄鉱石現物も52%上昇し、4月21日にはトン当たり68.70ドルと15カ月ぶりの高値をつけた。週末(4月29日)には現物は同65.20ドルで取引された。一方、大連商品取引所で取引が最も活発な先物は同462人民元(70.36ドル)で終了した。
相場急騰を受けて、中国の規制当局も鉄鉱石生産業者も懸念を強めている。投機的な熱狂がバブルとボラティリティー(価格変動)を生んでおり、ヘッジが困難になるという。だが、この先物市場の巨大さを無視するのは難しくなっている。
大連商品取引所は翌28日、投資家13人についてポジションを建てるのを一時的に禁止し、200人以上の顧客に取引ルール違反だと警告したと発表した。
鉄鉱石市場は長年、投資家にとって砂漠のように不毛の地だった。BHPビリトンやリオ・ティントなど一握りの生産業者に支配されていた。こうした生産業者は2010年まで、鉄鋼会社に鉄鉱石を1年契約で直接販売していた。その価格は年に一度の交渉で秘密裏に打ち出され、その他の市場の指標となった。
中国の需要が急拡大し、世界の最大手の鉄鉱石生産業者が提供する以上の鉄鉱石を同国の鉄鋼メーカーが必要とするようになるにつれて、こうした一握りの生産業者による価格システムは崩壊した。そこで業者らは世界中で取引されている現物カーゴの調査に基づいてスポット価格を算出し始めた。最終的には鉄鉱石先物市場が続いた(訳注:大連商品取引所の鉄鉱石先物取引開始は2013年10月)。