AKB48 チームBのファンより

鈴木紫帆里さんを中心にAKB48 チームB について語るサイトです。

山本彩ソロアルバム『Rainbow』を聴く。(ときめき研究家)

2016-11-11 22:11:49 | ときめき研究家
ミュージシャン志向の山本にとっては、回り道だったかもしれないが、ようやくたどり着いた夢への第一歩だ。
NMB48というアイドルグループに加入し、その中心として強力なリーダーシップで牽引。露出度の高いグラビア仕事も数多くこなし、「NMB48の山本彩」のファンを多数獲得した。歌唱力には定評があり、しばしばソロ歌唱の機会を与えられてきたが、満を持してのソロデビュー、それもアルバムデビューだ。長年の努力が報われた。喜ばしいことだ。彼女ですら報われなければ、それを見ている後続メンバーのモチベーションは著しく下がるだろう。
しかし、「NMB48の山本彩」のファンが、このアルバムを購入するのか心配だ。これまでの例で言うと、楽曲を聴くためではなく、握手をするためにCDを買うような人達は、握手券がつかないCDは買わない、主演映画も見に行かない、バラエティ番組は見るが歌番組は見ない、という薄情な傾向があるように思われる。
一方で「シンガー山本彩」に期待してこのアルバムを購入する人がどの程度いるのか、それもまた未知数だ。でも、そういう人達に評価されてこそ、彼女の未来は開けるのだろう。

AKBグループの卒業生には活躍してほしい。
前田敦子や大島優子は、女優としてまずまずの活躍はできている。指原莉乃は、卒業後も器用なタレントとして活躍できるだろう。山本彩にはシンガーとして活躍してほしい。(渡辺麻友にも。)
様々な形で卒業生が活躍することは、現役メンバーの励みになるし、グループが20年、30年と続いていくためにも重要なことだ。
そういう期待も込めて、特に山本のファンという訳でもないのだが、私も、配信ではなく、現物のアルバムを1枚購入した。

ソロ歌手のアルバムを通して聴くという体験は、そういえば最近あまりなかった。
ソロで13曲聴くのは飽きるのではないかとちょっと心配した。これもAKBグループばかり聴いている副作用かもしれない。1時間近く山本1人の歌声をずっと聴き続けたが、曲調もさまざまで、心配したほど飽きはしなかった。もちろん好みの曲とそうでない曲はあるので、常にハイテンションで聴き続けられる訳ではないが、それはソロアルバムだろうが、グループのアルバムだろうが同じだ。

収録された13曲が全て新曲。これまでAKBグループの中で与えられたソロ曲などは含まれていない。『365日の紙飛行機』(ソロバージョン)を収録した方が、もしかしたら売れ行きは良いかもしれないが、それをしなかったのは潔い。「NMB48の山本彩」を断ち切った、1人の女性シンガーとして勝負している。
13曲のうち半分ぐらいは山本自身の作詞・作曲だ。秋元康作詞は1曲のみ。他のミュージシャンたちも参加している。編曲は亀田誠治が全曲担当し、アルバムとしての統一感を出している。

最終曲の『メロディ』が一番気に入った。スガシカオ作詞、作曲で、秋元康作品にはなかったような語彙や言い回しが使われていて新鮮だ。メロディーラインも目新しい。
それでも山本への当て書きになっている。「少女にも女にもなれない中ぶらりん」だけど、「もう会えない人、未来に会う人、今ここにいる人」に向けてメロディを届けたいという思いを歌う。アイドルでもアーティストでもない、現在の山本彩という存在を踏まえたような歌詞だ。「前ばかり見続けて逆に何も見えない」とは、『前しか向かねえ』や『Don’t look back』という曲があるのを知ってか知らずか。
歌唱もクールな感じが似合っている。1点だけ、2コーラス後の間奏が間延びしているのが少し残念。

冒頭の2曲、『レインボーローズ』『雪恋』もいい。いずれも山本の作詞、作曲だ。
『レインボーローズ』は、「明日世界が終わっても後悔しないよう君と精一杯生きていく」という決意を歌った曲。アルバムの冒頭を飾るにふさわしい、前向きでカッコいい楽曲だ。また、これまで山本が与えられてきたソロ曲よりも難易度が高いように思われる。
11月5日放送のNHK『AKB48 SHOW』で、生バンドをバックに山本がこの曲を歌っていた。正直に言えば、あまり上手ではなかった。CDで聴くのとは全く違ったパフォーマンスだった。
音程も安定しないし、声を張り上げていて余裕がなかった。いつもの山本の歌唱は750ccのバイクで時速80キロを出すようなゆとりを感じるのだが、今回は原付バイクで時速60キロという感じだった。
もちろんレコーディングスタジオでカラオケをバックに歌うのと、バンド生演奏で自分もギターを弾きながら歌うのでは難易度が違う。しかも収録までの練習時間もあまりなかったと推察される。でもアイドルではなく、シンガーとして勝負するのであれば、ライブでこそ聴かせる歌唱ができなければならない。このアルバム収録曲でツアーでもやるのだとしたら、バンドメンバーともっと練習が必要だろう。
アイドルなら、多少歌唱が下手でも、それを補って余りある存在そのものの魅力があれば良いが、山本が勝負したい土俵はそこではないのだろうから、敢えて辛口批評とした。

『雪恋』は失恋を歌ったバラード。落ち着いた歌い出しから、サビ部分は力が入った歌唱を聴かせる。
失恋の理由は明確ではない。もしかしたら死別かもしれない。いずれにしても、恋人を失った深い悲しみを歌っている。「胸に矢が刺さったまま」というレトリックは、榊原郁恵『いとしのロビンフッッドさま』を思い出す。作詞した山本彩は、その歌を知っていたのだろうか。知っていたとすれば嬉しい。

秋元康作詞、山本彩作曲の『疑問符』も力が入っている楽曲だ。曲調はドラマチックで、サビは朗々と歌い上げる。歌詞は少し観念的だが、別れ際に無表情だったのはなぜかという「疑問」に、涙を我慢していたからだという答を見出すという内容だと解釈した。「じたばた」「リグレット」というおなじみの秋元語録を使いつつ、新境地を見せようとしている。

アルバムタイトル「Rainbow」はAKBグループのキーワードでもある。『君と虹と太陽と』『虹の作り方』『選んでレインボウ』など、要所要所で使われているモチーフだ。AKBグループの一員という顔も持ちつつ、ミュージシャンを目指すという山本は、七色の顔を使い分けた新しい活躍の形を目指すという含意か。「無限の可能性」を応援したい。

コメント (3)
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