ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本ミニマム級王座決定戦 小熊坂諭vs三澤照夫

2006年08月12日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
高山勝成に敗れ王座を失った小熊坂だが、世界挑戦の決まった高山が
ベルトを返上したため、またすぐに返り咲きのチャンスが巡ってきた。
イーグル京和に完敗した世界戦を含め、小熊坂は今回で実に11度
連続のタイトルマッチ出場となった。

これは再戦である。前回は05年3月。小熊坂の持つ日本タイトルに
三澤が挑戦し、優位に試合を進めたものの9ラウンドにダウンを喫し、
僅差の判定を落としている。小熊坂は再浮上を賭け、三澤はリベンジを
期している。両者ともに、どうしても負けられない一戦だ。


小柄な体にみっちりと筋肉が詰め込まれている三澤が、初回から
やる気満々で出てくる。スピードもある。しかし、力みがあるためか
ややモーションが大きい。一方の小熊坂はさすがベテラン、いつもの
ように悠然と構えている。現在のランクは、三澤がWBA4位で小熊坂は
8位。しかし、小熊坂の方が立場は未だ上のように見える。

小熊坂は引いて構える「待ち」のタイプ。スピードがあり、スムーズな
ジャブや突然の大振りで牽制する。ただ、相変わらず手数が少ない。
常に前進する三澤の方も、クリーンヒットはあまり多くない。お互いに
相手のパンチに対する反応が速いせいもあるだろう。序盤はジャッジ
泣かせのラウンドが続く。

第3ラウンド、小熊坂が3度もローブローで注意を受ける。故意では
ないだろうが、こう再三注意されればボディは打ちにくくなるだろう。
三澤はただでさえ小柄な上に、がっちりガードを固めているため、
小熊坂はなかなか打てる場所を見つけられないでいるようにも見える。
採点上、なるべく優劣を付けなければならないとすれば、積極性に
勝る三澤のラウンドが多かったかもしれない。

5ラウンド、試合が動いた。三澤がジャブを省略しいきなりの右
ストレートを連発すれば、小熊坂も左フックをカウンターで当てて応戦。
6ラウンドは、小熊坂も積極的に前へ出る意思を見せる。ここまで
見せていなかった右アッパーがクリーンヒット。小熊坂が前に出てきた
ことで、三澤は少し距離が合わなくなったようだ。出鼻にカウンターを
合わされる場面が目立った。

7ラウンド、序盤から飛ばしてきた三澤には若干の疲れが見られるが、
それでも果敢に突進し続ける。ただ、クリーンヒットは少ない。
小熊坂の方もまた手数が減り、お互いに目立ったヒットは2~3発程度。
8ラウンドは空回りする三澤に対し、冷静にパンチを当てる小熊坂と
いう印象。そして9ラウンド、前回に続いてまたも小熊坂がダウンを
奪う。ガードの上から当たったパンチにも見えたが、それだけ強烈だった
ということだろう。待ちのスタイルを捨て、一気に襲い掛かる小熊坂。

最終ラウンド、小熊坂はKOを狙っているのか、ジリジリと前に出る。
三澤も負けじと前進。結局この前進は最後まで止まらなかった。


個人的には序盤の劣勢を跳ね返した小熊坂の勝ちと見たが、判定は
三者三様のドロー、王座は空位のままとなった。積極性はあったが
決定打に欠けた三澤、巧さは見せたが積極性では劣った小熊坂。確かに
評価が分かれてもおかしくない。あと少しの「何か」があれば勝てていた。
両者にとって、惜しい星を落としたといえる。


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なお、この日のセミファイナルも見応えがあった。

強打の日本ランカー真鍋圭太と、ノーランカー鈴木拓也がダウン応酬の
激闘を繰り広げ、最終10ラウンドに真鍋が2度目のダウンを奪い、
そのままKO勝ちを収めた。ただ、その直前にレフェリーストップ寸前に
まで追い込まれていたのは真鍋の方であり、ダウンから立ち上がってきた時の
鈴木の余力や、残り時間の少なさも考えれば、ストップは少し早いような
印象もあった。

しかし、相手は強打の真鍋である。もし試合が再開され、あと2~3発
鈴木がパンチを受けていれば、最悪の事態が起こったかもしれない。
そう考えると、レフェリーの判断にも妥当性はある。難しいところだ。