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仕口ダンパーと耐震リング
仕口ダンパーと耐震リングについてネットで検索してこのブログにたどり着く方が何人かいる。
建築関係者とそうではない方では説明の仕方も変わるし、検索した目的も異なるのでブログでこれら製品について自分の考えを書くことについては躊躇していたところもある。
だが、そろそろ私の考えをこの場できちんと示した方がよいと思うようになった。
ちなみに耐震リングは仕口ダンパーの後に開発されたものである。
開発にかかわった方は同じと考えてよい。
私は最初に仕口ダンパーを知ったのは10年以上前だったと思う。
仕口ダンパー15cmタイプ1個当たりの壁量を25cmということで、静岡県も耐震事業がスタートした頃はよく推薦していたと記憶している。
ただ、それから診断法も変わり、県も日本建築防災協会にべったりで協会が認定した耐震製品しか認めないというスタンスになったので県と仕口ダンパーの蜜月も短いものだったと思う。
仕口ダンパーについて私の初期の印象は、よくわからない、というものだった。
よくわからないゆえに値段も1個あたりなんとなく高いなぁ根拠なく思ったので、これを使うことはないと思った。
それこそ筋かいを入れた方がよほど安くて耐力も大きい、と思ったからだ。
とはいえ、どうも伝統構法というものに使えば効果があるらしいということだけは宣伝チラシに書いてあるので、そういう特殊な時に使うものだと思うことにした。
当時も今も私の周囲には、こんな金物(ダンパー)を伝統構法に取り付けてどうするんだと非難する方がいる。
大抵は根拠が伴わない非難というか食べ物でいえば食わず嫌いに近い気がしてならない。
ただし、私も最初のころは伝統構法はあまり金物を使わないものと思っていたので、そんな批判を素直に受け止めて、賛同した時期があった。
若さゆえの過ちというにはあまりに恥ずかしい記憶である。
そして、その記憶があるからこそ常に勉強する姿勢は必要だと思える。
仕口ダンパーに本格的に触れるきっかけとなったのは、旧大井川町(地元)で昭和17年に建てられた古い木造住宅を補強する機会を得たときだった。
そこで真剣に伝統構法への補強を自分で調べたり、人に聞いたりして設計検討したわけだが、仕口ダンパーも開発元に問い合わせていろいろ教えてもらった。
思えば仕口ダンパーへの考え方もこの仕事で変わったと思う。
ダンパーへの考えが完全に変わったというか、霧が晴れたようにはっきりしたのは、昨年あたりからである。
JSCA関西の木造分科会に参加し、そこで限界耐力計算とダンパーについての扱い方をいろいろ学ぶことで、ダンパーの使い方や特性を知ることができた。
(余談だが、あまりにJSCA関西の取り組みが私にとって衝撃的だったため、すぐにJSCA中部に入会を希望し、無理を言って静岡在中のくせに関西の木構造分科会にも入会させて頂いた。)
厳密にいえば取り扱いの注意点といってもよい。
このダンパーは取り付ければよいというわけではなく、間違ったところに取り付けると効果は発揮しない。
耐震リングは、仕口ダンパーの改良型というとちょっと誤解があるかもしれないが、後発だけあっていろいろな工夫が施されている。
正直、耐震リングの方を私は使いたいが、耐震リングが登場したせいなのか、仕口ダンパーの価格が安くなったのでコストを考えると悩む。
リングにしてもダンパーにしてもその特性を理解していないと扱うのは難しいし、説明するのも難しい。
詳しく知りたい方は、震災復考―安全な住まいは可能か 樫原 健一 で仕口ダンパのことが書いてあるので、読むことをお勧めする。
あともう一つ、JSCA関西の講習を受講するという方法もある。ネット上で得られる情報などたかが知れているので、こういった講習に参加して詳しい方に質問するなどして知識を積み上げるしかない。
ただ、これで今回のブログを終えてしまうとろくに私自身が説明しないままとなる。
そのため、少しダンパーのことを書くことにする。
ダンパーにしてもリングにしても伝統的な軸組構法とよばれる建物への補強としては大変よく考えられ練り上げられた製品だと私は思っている。
そもそも伝統的な軸組構法は、変形重視型であるため、変形することを過度妨げる補強方法との相性は悪い。
木材のめり込みによって地震に抵抗する変形重視型を補助するという点でダンパーやリングは効果的であり、価格に見合った性能は有している。
ただ、その性能を生かすも殺すも設計者と施工者次第。
ダンパーやリングの価格が高いか安いかということも大事だが、もっと大事なのはその性能を最大限活かすための知識と工夫ではないかと思う。
私もダンパーの設置計画については、ひとりで決めないで詳しい方に相談をして決めているが、いくつか指摘されることもある。
うっかりすると間違った扱いをしてしまうことがある。
一方で、やはりいくら必要だからと言っていたずらに意匠性を損なう部分にダンパーやリングを取り付けるのもいかがなものかと思う。
歴史的な建築物に使用することが多い製品ゆえにここに取り付けた場合、見た目がどうなるのかということやどうしても取り付ける必要がある場合はどう工夫して目立たなくさせるのかといった配慮というかひと手間も必要だ。
お客様のために安く仕入れることは大事だし、そのために適正価格かを調べることも大事だと思うが、問題はきちんとそれら製品を扱えるだけの力や助言者がいるかどうか鍵となる。
今回は、少しきつめの表現で文章を書かせていただいたが、それだけ多くの方にダンパーやリングのことを知ってもらいたいという熱意ゆえとご理解を頂けばと思う。
建築関係者とそうではない方では説明の仕方も変わるし、検索した目的も異なるのでブログでこれら製品について自分の考えを書くことについては躊躇していたところもある。
だが、そろそろ私の考えをこの場できちんと示した方がよいと思うようになった。
ちなみに耐震リングは仕口ダンパーの後に開発されたものである。
開発にかかわった方は同じと考えてよい。
私は最初に仕口ダンパーを知ったのは10年以上前だったと思う。
仕口ダンパー15cmタイプ1個当たりの壁量を25cmということで、静岡県も耐震事業がスタートした頃はよく推薦していたと記憶している。
ただ、それから診断法も変わり、県も日本建築防災協会にべったりで協会が認定した耐震製品しか認めないというスタンスになったので県と仕口ダンパーの蜜月も短いものだったと思う。
仕口ダンパーについて私の初期の印象は、よくわからない、というものだった。
よくわからないゆえに値段も1個あたりなんとなく高いなぁ根拠なく思ったので、これを使うことはないと思った。
それこそ筋かいを入れた方がよほど安くて耐力も大きい、と思ったからだ。
とはいえ、どうも伝統構法というものに使えば効果があるらしいということだけは宣伝チラシに書いてあるので、そういう特殊な時に使うものだと思うことにした。
当時も今も私の周囲には、こんな金物(ダンパー)を伝統構法に取り付けてどうするんだと非難する方がいる。
大抵は根拠が伴わない非難というか食べ物でいえば食わず嫌いに近い気がしてならない。
ただし、私も最初のころは伝統構法はあまり金物を使わないものと思っていたので、そんな批判を素直に受け止めて、賛同した時期があった。
若さゆえの過ちというにはあまりに恥ずかしい記憶である。
そして、その記憶があるからこそ常に勉強する姿勢は必要だと思える。
仕口ダンパーに本格的に触れるきっかけとなったのは、旧大井川町(地元)で昭和17年に建てられた古い木造住宅を補強する機会を得たときだった。
そこで真剣に伝統構法への補強を自分で調べたり、人に聞いたりして設計検討したわけだが、仕口ダンパーも開発元に問い合わせていろいろ教えてもらった。
思えば仕口ダンパーへの考え方もこの仕事で変わったと思う。
ダンパーへの考えが完全に変わったというか、霧が晴れたようにはっきりしたのは、昨年あたりからである。
JSCA関西の木造分科会に参加し、そこで限界耐力計算とダンパーについての扱い方をいろいろ学ぶことで、ダンパーの使い方や特性を知ることができた。
(余談だが、あまりにJSCA関西の取り組みが私にとって衝撃的だったため、すぐにJSCA中部に入会を希望し、無理を言って静岡在中のくせに関西の木構造分科会にも入会させて頂いた。)
厳密にいえば取り扱いの注意点といってもよい。
このダンパーは取り付ければよいというわけではなく、間違ったところに取り付けると効果は発揮しない。
耐震リングは、仕口ダンパーの改良型というとちょっと誤解があるかもしれないが、後発だけあっていろいろな工夫が施されている。
正直、耐震リングの方を私は使いたいが、耐震リングが登場したせいなのか、仕口ダンパーの価格が安くなったのでコストを考えると悩む。
リングにしてもダンパーにしてもその特性を理解していないと扱うのは難しいし、説明するのも難しい。
詳しく知りたい方は、震災復考―安全な住まいは可能か 樫原 健一 で仕口ダンパのことが書いてあるので、読むことをお勧めする。
あともう一つ、JSCA関西の講習を受講するという方法もある。ネット上で得られる情報などたかが知れているので、こういった講習に参加して詳しい方に質問するなどして知識を積み上げるしかない。
ただ、これで今回のブログを終えてしまうとろくに私自身が説明しないままとなる。
そのため、少しダンパーのことを書くことにする。
ダンパーにしてもリングにしても伝統的な軸組構法とよばれる建物への補強としては大変よく考えられ練り上げられた製品だと私は思っている。
そもそも伝統的な軸組構法は、変形重視型であるため、変形することを過度妨げる補強方法との相性は悪い。
木材のめり込みによって地震に抵抗する変形重視型を補助するという点でダンパーやリングは効果的であり、価格に見合った性能は有している。
ただ、その性能を生かすも殺すも設計者と施工者次第。
ダンパーやリングの価格が高いか安いかということも大事だが、もっと大事なのはその性能を最大限活かすための知識と工夫ではないかと思う。
私もダンパーの設置計画については、ひとりで決めないで詳しい方に相談をして決めているが、いくつか指摘されることもある。
うっかりすると間違った扱いをしてしまうことがある。
一方で、やはりいくら必要だからと言っていたずらに意匠性を損なう部分にダンパーやリングを取り付けるのもいかがなものかと思う。
歴史的な建築物に使用することが多い製品ゆえにここに取り付けた場合、見た目がどうなるのかということやどうしても取り付ける必要がある場合はどう工夫して目立たなくさせるのかといった配慮というかひと手間も必要だ。
お客様のために安く仕入れることは大事だし、そのために適正価格かを調べることも大事だと思うが、問題はきちんとそれら製品を扱えるだけの力や助言者がいるかどうか鍵となる。
今回は、少しきつめの表現で文章を書かせていただいたが、それだけ多くの方にダンパーやリングのことを知ってもらいたいという熱意ゆえとご理解を頂けばと思う。
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