伊勢本街道4からの続きです。
御杖村の中心、菅野に行けば食料品店があるだろう、と
期待して、痛い足を引きずりながら、和尚は歩くのでした。
足を痛めながらも前に進もうとする和尚は
さながら修行僧のようでありましたが、
土屋原のタバコ屋で食料を得てからは、
生鮮食料を求める乞食僧のようでありました。
菅野に着いたら食料店があるだろうとの期待が
すでに邪念に取り憑かれています。
しかし
街道の風景は当時の面影を残して続いています。
土屋原の集落を過ぎて、国道に合流してすぐに
桜峠への登りにかかります。
国道を通ればすぐに通過出来るのですが、
街道は杉林の中を上っています。
急に視界が開けたところが桜峠です。
目の前が御杖小学校、その先が菅野の集落です。
峠から小学校の敷地に下りるようにルートが続いています。
この小学校は教室が円形に配置され、
街道から丸見えです。
教室からも和尚が歩いているのが分かるのでしょう。
和尚が手を振ると、児童が応えて手を振り、
そして先生も振ってくれます。
言葉は交わしませんがほのぼのとした感じです。
学校の駐車場の縁石に坐って、
最後に残ったアンパン2個で昼飯とします。
足の痛みは一向になくなりません。
水を入れた風船を踏んで歩くような感触は続いています。
学校からは国道を歩き、すぐに街道に入ります。
やっと御杖村役場に着きました。
役場の窓口で食料店の場所を聞き(3店)ましたが、
ここ菅野にはありません。
先の牛峠を越えた神末集落にあります。
国道から分かれて街道を進みます。
この春、サクラの咲く頃に訪れた安能寺を左手に見て歩き始めます。
春の安能寺
このあたりも街道の雰囲気が残っています。
伊勢本街道と書いた提灯があるのは
保存会の会員でしょうか。
菅野川を1kmほど下り、右に折れて牛峠に向かいます。
1kmほどの登りですが国道に合流したところが牛峠です。
峠には新しい碑が建てられていました。
牛峠からは国道にそって神末に向かって下りて行きます。
すぐの距離ですが、足が痛いので時間がかかります。
雨が降ったり止んだりです。
やっとの思いで大矢部商店に着きました。
3店教えて頂いたのですが、
やはり最初のお店での買い物になります。
◯筍煮、牛蒡煮、焼き明太子、焼き鳥の缶詰、いかの缶詰
レトルトのサトウのごはん、野菜サラダ 計1770円
レトルトのサトウのごはんは賞味期限が切れていましたので、
無料で頂きました。
大矢部商店さんありがとうございました。
大矢部商店前の道標
午後2時頃なので今日のねぐらは秘かに決めていました。
円山公園です。
あと一時間の距離ですがもっとかかるやろなー。
今日最後の峠、佐田峠越えです。
峠というより切り通しみたいで、人家もあります。
光悦の道標も見えています。
この峠の杉林にこんなものが見えました。
クマガイソウです。
このあたりも街道の雰囲気が残っています。
伊勢本街道の提灯が見えます。
見えました、ありました、と書いていますが
足は限界にきています。
やっと着いたのです。円山公園に。
もっと雨が降ってもいいようにテントの位置を決めます。
風があるので張り綱もしています。
円山公園は車道の行き止まりです。
駐車場、トイレ、水道もあってテントを張るには最高です。
テントを張って、横になっていると雨が激しくなって来ました。
そのうちテントの下に水が入り込んできました。
フライシートにペグを打つのを忘れたのです。
ペグを忘れたどうなるか。
フライシートに集められた水が、
本体に伝いテントの下に集中します。
何とかことなきを得ましたが、
ここからすぐの距離にある国境(大和国と伊勢国)に向かう気力もなく、
食事をして、寝てしまいました。
夜中にトイレに起きましたが、相変わらず雨が降っていました。
明日は国境を越えるだけです。
余裕があります。
次の日
鶏の鳴き声で目が覚めたというのはウソで
4時になると自然に目が覚めます。
雨は降っています。
賞味期限が切れたご飯は乾燥しています。
普通なら熱湯に入れて、3分で食べられますが、
うまくいかなかった。
袋から出して水を加え(適当に)火にかける。
柔らかくなったと思ったら、湯を捨て蒸らします。
これでOK.
焼き明太子との相性はいいなー。
雨の小降り時にテントをたたみます。
出発はいつもより遅いです。
これも余裕。7時。
今日は姫石明神を越えて、
国境の向こう側で奈良県と書いた看板を撮って
姫石の湯に入って、帰るだけです。
沢の水はニゴリ、沢蟹がウロウロしていました。
写真を撮ったのですが、暗かったのでブレていました。
沢蟹は国道にまで出て遊んでいました。
伊勢の国に入りました。
伊勢の国から大和の国向けて撮っております。
姫石の湯(御杖の道の駅)に向かいます。
姫石の湯
いい温泉です。600円
こうしてこの旅は半ばにして終りました。
この続きは、そう、今から行きます。
機動力重点で行きます。
テントなし、飯盒炊爨なし。
飛脚便スタイルです。
雨の中、行ってきます。