沖縄県の安慶田光男副知事が教員採用試験や幹部人事などを巡り、県教育委員会に介入した疑いで、翁長雄志知事は20日、安慶田氏を擁護して沈静化を図る姿勢を鮮明にした。進退が注目されていた安慶田氏は、続投への意欲を表明。知事も支持する姿勢をにじませており、幕引きを急ぐ構えだ。

                                ★

県教委が「(口利きの)働き掛けはなかった」として内部調査を打ち切ったことに対し、沖縄タイムスは「公正な調査」とは言い難く、元幹部から「発表内容は正確でない」との疑義が出ている、と報じている。

18日に疑惑が報じられてから調査打ち切りまで僅か3日。

これでは誰が考えても「拙速な幕引き」との印象は否めず、不信感は増殖させられている。

22日付沖縄タイムスは、次のように不信感を募らせている。

副知事「口利き」疑惑

拙速調査 高まる不信

識者「透明性に欠ける」

県教委が電話での聞き取りをしたのは18・19の両日。 当時の教育長や統括官・参事が対象になった。 しかし元幹部の数はわずか5人。 もし疑惑を証言すればピンポイントで特定される恐れがある上、報道機関に告発したのが自分だと疑われかねない。 

元幹部は「やり方に不安がある。議会による捜査などしかるべき場なら、事実をすべて証言する」と打ち明ける。 教育長によると調査では自分が副知事から呼び出されたい、メモを渡されたりしたことがあるかという「直接体験」に関してのみ聞き取りしたという。「依頼があったとの報告を受けた」「依頼された職員から祖横断された」といった、幹部なら十分考えられる間接的な情報や体験が有ったとしても、調査結果には反映されないやり方だ。

さらに県教委は、現在の職員から聴取したことを報道機関に説明する一方、幹部へ聞き取りしていることについては20日まで伏せていた。もし疑惑を裏付ける証言が出て来たら困るからでは、と疑われかねない。

疑惑をめぐっては沖縄タイムスだけでなく、他の報道機関も独自に裏付を取って報じている。相当程度の信憑性があるにもかかわらず、簡易な調査で幕引きを計ろうとする姿勢には不自然さが漂う。沖縄国際大学の照屋寛之教授(行政学)は「身内の調査では客観性や透明性に欠ける。疑惑の重大さを考えれば、外部の第三者調査委員会などが必要だ」と指摘する。(社会部 鈴木実

              ☆

元幹部は「やり方に不安がある。議会による捜査などしかるべき場なら、事実をすべて証言する」と打ち明ける

この元幹部を県議会に証人喚問すればよいうし、照屋教授の指摘する」第三者調査委員会での証言だって可能である。

>惑をめぐっては沖縄タイムスだけでなく、他の報道機関も独自に裏付を取って報じている。

沖縄タイムスに一日出遅れた琉球新報は、当初副知事擁護の立場かと思われたが、遅ればせながら昨日の社説で疑惑糾弾の矢を放っている。

翁長ー安慶田ラインは、沖縄2紙に見放されたことになる。(涙)

<社説>副知事口利き疑惑 第三者委員会で解明せよ

 疑惑が完全に払拭(ふっしょく)されたとは言いがたい。

 安慶田光男副知事が、2015年の教員採用試験で特定の受験生を採用するよう口利きしたとの疑いが持たれている。県教育庁の幹部人事でも複数の人物の名前を挙げて登用を依頼していた疑いもある。登用依頼は副知事の権限を越える行為だ。
 安慶田副知事は20日「口利きの事実はない」とあらためて否定した上で「進退の問題にならない」として副知事職を続行する考えを示した。
 翁長雄志知事も定例記者会見で「副知事から確認したところ働き掛けの事実はないと聞いている」と述べ、疑惑の事実はないとの判断を示した。
 平敷昭人県教育長は「前教育長と前の統括監2人、前の参事2人の計5人に電話で確認したところ、働き掛けの事実はないとの返事をもらった」と述べ、教育庁の幹部人事への要請もなかったとの調査結果を明らかにした。その上で県教育庁として疑惑はないと判断し、今後は調査しない考えを示した。
 翁長知事、安慶田副知事らの一連の説明では県民は納得しないだろう。これで幕引きとすれば県政への信頼を揺るがし、翁長知事の任命責任も問われよう。疑惑を解明するために、客観的に判断できる第三者委員会を開くべきだ。
 不正を通報・告発した人が勤務先から解雇や降格といった不利益な扱いを受けないようにする公益通報者保護制度の活用も検討してもらいたい。
 副知事職は地方公務員法が定める「特別職」に当たる。このため、違反すると懲戒処分などの対象となる県職員の倫理規定や、一部を除く地方公務員法の規定からは除外されている。地方自治法で知事を「補佐し、その命を受け政策および企画をつかさどり、その補助機関である職員の担任する事務を監督し、別に定めるところにより、知事の職務を代理する」と定めている。
 このように強い権限が与えられているからこそ、高い倫理観、責任感、判断力、そして説明責任が求められる。
 県内の教員採用試験は、毎年全国でも高い倍率だ。特定の受験者の合格働き掛けの疑いが解明されないままでは、採用試験への信頼性を失ってしまう。開かれた県政を目指す翁長県政の真価が問われている。