米軍普天間飛行場の代替施設としてオスプレイの拠点となる辺野古新基地建設の工事が約10カ月ぶりに再開された。翁長雄志知事は、建設阻止に向け決意を新たに。一方で、佐喜真淳宜野湾市長が普天間飛行場の危険性除去のため、政府の辺野古移設に理解を示すなど、沖縄サイドの足並みがそろっていない点が露呈した。(東京報道部・上地一姫、政経部・大野亨恭、中部報道部・前田高敬)

米軍普天間飛行場移設に向けた工事が再開され、名護市辺野古沿岸部では海上保安庁のゴムボートなどを係留する浮桟橋の設置に向けた作業が行われた=27日午後4時43分(共同通信社ヘリから)

 「沖縄は無法地帯ではない」。県幹部は、沖縄が求める協議を無視する形で工事を強行した政府の姿勢に強い不快感を示した。

 知事の埋め立て承認取り消し処分取り消しにより、埋め立て承認が復活した27日は、くしくも仲井真弘多前知事が3年前に承認したのと同じ12月27日だった。

 幹部の一人は「沖縄にとって苦渋の日だ」と表情をゆがめる。ただ、今回は新基地建設を止めるために「前を向く日でもある」とも語る。

 知事は27日の菅義偉官房長官との会談で、工事再開前の事前協議を求めた。3年前の承認時に付した留意事項に定められたものだ。

 国はその要望を聞き入れず「あうんの呼吸」(政府関係者)で工事を再開したが、県関係者は「国が県との約束を無視して工事を進めた事例の一つだ」と指摘。国の不履行の“実績”の積み重ねが、国の強権的な姿勢をあぶり出し、最終的には「撤回」の要件にもなり得るとみる。

 県は、年明けにも政府に新たな協議の場を求める考えだ。「3年前の留意事項が今になって工事を止める有効な手段となっている。法治国家なら、法に基づく約束は守るはずだ」と国をけん制した。

佐喜真市長は、菅官房長官との面談後、記者団に「わらをもつかむ思い」と9回も繰り返した。新基地建設を阻止するという翁長知事に対し、辺野古以外の対案のなさにも疑問を呈した。

 「最近の県のやり方はおかしい」とある宜野湾市幹部は憤って見せた。前日急きょ決まった佐喜真市長の行動は、直接的には軍転協の要請文に辺野古容認の含みを忍ばせる「あらゆる手段」との文言が入らなかったことが原因。だが、背景には知事に対する佐喜真市長のいら立ちがあるとみる市幹部は少なくない。

 「県のやり方」として指摘される一例は、西普天間住宅地区の跡地利用。琉球大学用地の事前買収では当初、予算も人員も豊富な県土地開発公社も関わる方向だったがうやむやになり、普天間高校移転も事実上白紙に。「西普天間は『県民益』なのに市の足を引っ張る意味が分からない」といぶかる市幹部もいる中、独自行動でいわば意趣返しをした格好だ。

 両者の分裂にほくそ笑むのは政府だ。司法からの「お墨付き」(政府関係者)を受けたが、オスプレイの墜落事故で「風向きが変わった」。だが、そのオスプレイに関する要請の場で内在していた乱れがあらわになった。

 関係者は「翁長知事が沖縄の全てを体現している訳ではないということ」と評価。普天間の危険性の除去を錦の御旗に工事を進める。