米国には依然として原爆投下が戦争の終結を早め、多くの米兵の命を救ったとの考えが根強い。
1995年、スミソニアン博物館企画の原爆展が、退役軍人らの猛反対で中止に追い込まれた。
原爆展の趣旨が、原爆投下機エノラ・ゲイと被爆の惨状を示す資料を展示する予定だったからだ。
このような原爆肯定の世論が存在する米国の現職の大統領が、広島を訪問するなどありえないと筆者は考えていたのだ。
オバマ大統領の個人的心情はいざ知らず、彼は米国民の世論を背に受け当選した現職の大統領である限り広島訪問はあり得まい、と考えた。 ただ、大統領を辞めた後の広島訪問なら、可能性があるとも述べた。
予想は見事に外れ大統領在職中の広島訪問が実現するのだ。
7年前の「賭け」を友人が覚えていたら、ステーキでも奮発せざるを得ないだろう。(涙)
オバマ氏、27日に広島訪問 現職の米大統領で初(5/10朝日)
オバマ米大統領は10日、5月下旬の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)出席のため訪日した際、広島を訪問する方針を決めた。日米両国政府が発表した。71年前の原爆投下以降、現職の米大統領が広島を訪れるのは初めて。平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花し、2009年のプラハ演説で自らが提唱した「核なき世界」の理念を改めて訴える演説をすることも検討している。
オバマ氏は26日から27日にかけて開かれるサミット終了後の27日に、広島を訪れる予定だ。米ホワイトハウスは10日、「オバマ大統領が、安倍首相と一緒に歴史的な広島訪問をする」と明らかにした。安倍首相も10日夜、首相官邸で記者団に「オバマ大統領と共に広島を訪問することを決定した。訪問を心から歓迎する」と述べた。米国内への影響などの諸情勢を慎重に検討した結果、決定が訪日直前までずれ込んだ。
オバマ氏は09年に大統領として初訪日した際、記者会見で「広島、長崎を将来訪れることができれば非常に名誉なことだ」と明言。複数の米政府高官も今年に入り、取材に対し「大統領は訪問に強い関心を持っている」と語り、オバマ氏の意向に沿って訪問を検討してきた。
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>米ホワイトハウスは10日、「オバマ大統領が、安倍首相と一緒に歴史的な広島訪問をする」と明らかにした。安倍首相も10日夜、首相官邸で記者団に「オバマ大統領と共に広島を訪問することを決定した。訪問を心から歓迎する」と述べた。
唯一の被爆国と原爆投下国の首脳が揃って被爆地を訪れるだけで画期的な出来事であり、この際「謝罪せよ云々」は口にすべきではない。
強要された謝罪は無意味であり、自ら行うのが本当の意味の謝罪である。
ただ、唯一の戦争被爆国として、核兵器の廃絶を訴えるわが国も、現実には米国の「核の傘」に頼るという、安全保障上の矛盾を抱えている。
非核保有国であるわが国と韓国は米国の「核の傘」に頼り、米軍の東アジア展開を深刻な脅威と感じる北朝鮮は核開発を急いでいる現状。
これも安全保障上の大きな矛盾である。
謝罪を要求する前に、今回のオバマ大統領の広島訪問に対し、安倍首相の外交の成果と評価すべきであろうが、「反安倍」が政策目的になっている人たちは、相変わらず「謝罪せよ」などといちゃもんをつけるのだろう。
安倍首相への記者会見で「謝罪を求めるのか」と質問していた記者もいたが、首相は全くそういうことは考えていない模様。
広島の原爆死没者慰霊碑には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれている。
オバマ米大統領が米国の世論を背に受けながら「謝罪する」ための最良の方法は、主語のない「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」の碑文を復唱すればよい。
ちなみに同碑文について「主語がないので意味不明」などの疑問に対し、広島市はHPで次のように回答している。
「碑文の趣旨は、原爆の犠牲者は、単に一国・一民族の犠牲者ではなく、人類全体の平和のいしずえとなって祀られており、その原爆の犠牲者に対して反核の平和を誓うのは、全世界の人々でなくてはならないというものです。つまり、碑文の中の「過ち」とは一個人や一国の行為を指すものではなく、人類全体が犯した戦争や核兵器使用などを指しています。」
【おまけ】
オバマ米大統領ノーベル平和賞受賞演説の冒頭部分を改めてネットで拾ってみた。
なるほどね。
* * * *
I face the world as it is, and cannot stand idle in the face of threats to the American people. For make no mistake: Evil does exist in the world. A non-violent movement could not have halted Hitler's armies. Negotiations cannot convince al Qaeda's leaders to lay down their arms. To say that force may sometimes be necessary is not a call to cynicism -- it is a recognition of history; the imperfections of man and the limits of reason.
【朝日新聞訳】
私はあるがままの世界に立ち向かっている。米国民への脅威に対して、手をこまねいてることはできない。間違ってはいけない。世界に邪悪は存在する。非暴力の運動では、ヒトラーの軍隊をとめることはできなかっただろう。交渉では、アルカイダの指導者たちに武器を置かせることはできない。武力行使がときに必要だと言うことは、冷笑的な態度をとることではない。それは人間の不完全さと、理性の限界という歴史を認めることだ。
【共同訳】
私は現実の世界に対峙(たいじ)し、米国民に向けられた脅威の前で手をこまねくわけにはいかない。誤解のないようにいえば、世界に悪は存在する。非暴力運動はヒトラーの軍隊を止められなかった。交渉では、アルカイダの指導者たちに武器を放棄させられない。時に武力が必要であるということは、皮肉ではない。人間の欠陥や理性の限界という歴史を認識することだ。
遺品に付けられた説明は、英語だけでなく10か国語以上だった気がする。
世界のリーダー達に、一度見学してもらって、それでも「核を保有しますか? 核が無いと世界平和を守れませんか?」と聞いてみたいと思った。
見学しても「なお核しか無い」と思うならそれはそれで仕方がないと思うが、少なくともケリー国務長官を動かしたような「核一辺倒」とは違った核への気持が芽生える気がする。
【参考】
「「2人のK」、オバマ大統領動かす…広島訪問 2016年05月12日 06時00分」
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160511-OYT1T50267.html?from=ytop_main4
>10日に正式発表されたオバマ米大統領の広島訪問の実現には、ケネディ駐日米大使とケリー国務長官の「2人のK」(外務省幹部)が大きな役割を果たした。
>岸田外相、そして斎木昭隆外務次官は、ケネディ氏とそれぞれ向き合い、こう語りかけた。
>広島訪問で「謝罪」は求めない――。
>4月11日、広島の平和記念公園で献花したケリー氏は、その場で岸田氏に「原爆ドームを見たい」と提案。
>記者団には「断腸の思いだった」と感想を語り、オバマ氏に訪問を促すことを約束した。
>日本側の想定以上に踏み込んだ対応だった。
原爆投下は、こういうことになるから、どう考えておくべきか。
核を持っている国には、どんな責任があるか。
更には、日本がアメリカの核の傘に入っていることは、どういうことか。
当然、話題になってくると思う。
トランプ氏もああ言っているので、日本の防衛とはの根本を考える時に来た。
集団的自衛権とは? 憲法違反?
そういうことが、枝葉末節に見えてくる。
オピニオン面に一般投稿6本(児童生徒限定の「ぼくも私も」除く)。
「『辺野古大学』 内容濃く共感」の愛知県名古屋市・松本八重子さん(67)は、今年初掲載。
「親元離れ自炊 高校の思い出」の伊江村・知念正行さん(77)は、1月1、29日に続き今年3回目の掲載。
「飼い主の意識 もっと高めて」の豊見城市・渡真利善朋さん(47)は、1月16、28日、2月11、24日、3月8、22、31日、4月12、20、29日に続き今年11回目の掲載。
「会話で変わる 車内の雰囲気」の沖縄市・仲宗根栄一さん(83)は、4月5日に続き今年2回目の掲載。
「安心社会へ強い使命感」の新城ヒロ子さん(74)は、2014年5月9日以来の掲載。
「イミ(夢)見シーン」の宜野湾市・伊良波幸政さん(75)は、3月6日、4月21日、5月2日に続き今年4回目の掲載。
カギカッコは投稿欄における見出し。
那覇市民生委員児童委員連合会会長の新城さんは、2年前の掲載時は77歳になっているので、年齢表記の誤植かサバを読んでいるかのいずれかと思われる。
アメリカ保守系メディアFOX5月10日付に載った、ジェイムズ・グラスマン氏の論評
http://www.foxnews.com/opinion/2016/05/10/japan-vs-us-no-japan-is-not-killing-us-were-killing-japan-our-staunchest-asian-ally.html
「オバマ大統領はアメリカの原爆投下の決断を謝罪しそうにはない(するべきでもない)が、ドナルド・トランプの異常な発言の数々で落胆や不安を感じている日本人との関係を修復するはず」
と見立てを述べ、トランプが「日本は我々の金で成功した!日本が我々を殺す!」と言っているが、殺すどころか日本は我々経済に対し重要な投資をしているといって、実例や数字を挙げている。
またアメリカの、貿易取引でのゴリ押しや支那の攻撃的行動に対する軽すぎる態度を、また支那の南シナ海での挑発をどうするのかに大統領選候補者も政府も答えないままTPP政策を危機にさらしていることを批判している。
面白いのは、論評の後半を割いて、「アメリカが日本と連帯できるもう一つの分野」として「慰安婦問題」について述べているところ。
・1965年の合意のもと、日本は既に韓国への植民支配の償いとして8億ドルの助成金や軟借款を出し、韓国はこれ以上の償い要求はもうしないことに同意した
・韓国は日本からの資金を、犠牲者への支払いよりも経済発展に遣った
・昨年12月、日韓は慰安婦問題解決の合意に達したが、慰安婦問題は消えず韓国人はまだ満足していない
・慰安婦の話は日本の敵国によってしばしば歪められ、政治利用されてきた。研究書で慰安婦虐待についての常識とされることに疑義を呈したパク・ユハ氏はぞっとするような言論弾圧の攻撃を受けた。裁判所は氏の本の検閲命令を出し、氏は名誉毀損で訴えられ、世宗大学教授職を追い出す動きもある
・ニューヨークタイムズによれば、パク氏の本では、慰安婦は強欲な韓国人協力者や日本の民間業者によって連れてこられ、そのことに日本政府が関わった証拠は無いことが強調されている
・他の歴史家も似た結論を導き出している
・戦争と売春は昔はつきもので、実際、韓国人慰安婦が、60、70年代に政府がポン引きと一緒に彼女たちをアメリカ兵相手の性商売で働かせたと、自国政府を訴えている
・そしてヴェトナムには、ヴェトナム戦争中に韓国軍兵士がヴェトナム女性を暴行した結果生まれた5千人から3万人のライ・ダイ・ハンと呼ばれる越韓混血の人々がおり、ヴェトナム社会の辺縁に暮らしている
という事実が列挙されている。
「ともかくも、めまぐるしい政治的敵意にもかかわらずこの問題を終わらせようと安倍首相は決断した」と評し、日韓の諍いは経済にも安全保障にもいいことが無い例を挙げつつ、在日本の北朝鮮団体があの合意を「屈辱的だ」と批判して韓国の対日憎悪を煽ったように、北朝鮮が日韓離反を利用しようとしているので、アメリカは合意が守られるための重要な役割をより強固に果たす必要がある、と述べ、経済と国家安全保障の利害は、歴史をめぐるバトルを続けるにはあまりに高いものなのだ、そのことが我々を殺す、と結んでいる。
(グラスマン氏の経歴に興味ある方は「ジェイムズ・グラスマン」でWikipediaをご参照ください)
個人的読後感としては、戦時のことで誰かに謝罪を求めたいことを挙げれば誰にとってもキリが無い、という本音はあれど、「たちの悪い諍い」(←グラスマン氏の文中の言葉)に振り回されているうちに大きな危機に陥るという氏の認識は、極めて実用的だと。
原爆投下はトルーマンの「ダメ押し」
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2016-05-12