オレンジ色の目立つ花をつけてクルマユリが咲いていました。尾根筋の草付きにポツンポツンと花が見られました。ユリ属の中で高山で見られる種はクルマユリとヒメサユリです。いずれも低山から高山まで分布している垂直分布の広い種ですが群生していることはありません。
栄養状態にもよるのでしょうが、里山などで見かける個体は花数が多く高山帯で見るものはほぼ1輪しかついていません。生育環境が影響していると考えるのが妥当なのでしょうが、ひょっとして高山帯に見られるグループと里山で見られるグループはタイプが異なり遺伝子レベルでも差があるのではと考えています。
名前の通り葉が車状に輪生しています。しかしすべての葉がそうなるわけでもなく大株で2ケ所普通は1ケ所で葉が数枚輪生していてそのほかは単生しています。この個体のようにかなり上の葉が輪生していてそれも3枚というケースはあまり見ないケースです。
蛇紋岩という特殊な岩場に生えるミヤマダイモンジソウです。この種も中部以北の高山帯に見られるのですが土質はあまり影響がないようです。ダイモンジソウは晩秋の花ですがミヤマダイモンジソウはすごく早く咲く花という印象を持ちます。各地に様々な変異が見られるようで人によってはダイモンジソウもミヤマダイモンジソウも区別せず一つのタイプくらいに考えているようです。
ハクサンチドリも定番の高山植物です。鮮やかな色彩を身につけていますからよく目立ちます。出会うとやはり感謝したくなる種の一つです。とはいえこの花が沢山群生しているような場所に遭遇したことがありません。パラパラと存在しているような草付きばかりで群れる迫力を見たことがありません。そういう性質の種なのでしょうか、至仏山も同じで出会えた個体は多くありませんでした。
花がありませんでしたのでしっかりした記録をしてこなくて失敗だったのですが、ハクサンコザクラの自生していた証拠ととして葉の様子を載せておきます。ハクサンという名が付く種が多い中、ハクサンコザクラはあまり出会えていない種です。新潟県内でも高山帯には自生しているのですが、花の時期に出歩かないためでしょうか自生している山に登っていないせいでしょうかもう何年も花を見ていません。栂池自然園の最奥の雪渓周辺で見た群落が懐かしい思い出です。至仏山にも自生はあるようですが歩いた範囲では多くはないような気がします。
至仏山の湿地にはホソバノキソチドリが見られました。コバノトンボソウかと思っていたのですが、しっかり調べてみるとホソバノキソチドリに辿り着きました。ツレサギソウ属の種は実にややこしいグループです。まだ考え方が定まっていな部分もあるのでしょうか。研究者によって整理の仕方が異なっているのでしょうか。少なくとも平凡社の日本の野生植物の改訂新版には旧版に記載されていたキソチドリの記載がありません。新潟県付近で見られていたキソチドリはオオキソチドリとするのがよさそうですが、コバノトンボソウを含めてしっかりした識別が難しいようです。地域的にかなりの変異があって線引きがうまくいかない場合がありそうです。
距がとても長く感じたのでトンボソウと思ってしまいましたが、よく見ると距は上に跳ね上がっていなく下向きです。この特徴はホソバノキソチドリの一つの形質で葉の大きさと合わせて判断しました。もっとも、尾瀬地域にはコバノトンボソウがよく見られるという前知識があって思い込みで考えていたようです。
距の長くない種もみられました。この種は湿地環境でなく樹林帯で見たものです。オオキソチドリとして扱っていたものと考えました。キソチドリは太平洋側の高山にオオキソチドリは日本海側の高山に見られ東北・北海道まで分布している種と考えていました。新潟県内では必ずしも高山帯ではなく山地帯でも自生していることがあります。