森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

マイズルソウ 群落

2012年06月30日 | 自然観察日記
亜高山地帯の表徴的な種、マイズルソウ。これが出現したら大体1500m以上で亜高山と決めてかかっています。もちろん地域によっては高度に差がありますが、間違いなくこの種が出現すると周りの雰囲気が変わって来るように思います。山地帯から亜高山帯へ生物層の入れ替わりがあるようです。その例が昨日のベニバナイチヤクソウでしょうか。気温や日照、水分条件がマイズルソウにはぴったりの環境なのでしょうね。これほどの群落が成立する環境ですから凄く居心地がいいのでしょう。

マイズルソウ花

2012年06月30日 | 自然観察日記
幅広の葉の脇から花茎を伸ばし十数個の花を咲かせます。秋には赤い実が数個付いています。全ての花が結実することはないのでしょうね。ユリ科の多年草で、花が一斉に咲く姿は地味ながらも捨てがたい光景です。

ベニバナイチヤクソウ 

2012年06月29日 | 自然観察日記
今回の目的はこのベニバナイチヤクソウ。越後ではほとんど見られない種ですが、内陸部の亜高山帯には生育しています。裏磐梯には大群落があるというわけではなさそうで、数箇所で小さな個体群に出会う程度でした。昔、信州(八ヶ岳)でみた深い森の中の大きな群落が今でも思い出されます。あのときの迫力はないししろ、花の美しさはここでも格別でした。

ベニバナイチヤクソウ 花

2012年06月29日 | 自然観察日記
上から見る花と下から見る花の感じはかなり異なります。長くL字状に曲がったものは雌しべでその付け根に数本の雄しべが塊になって付いています。これでは自花受粉は難しそうですすね。この構造を見て、どういうポリネーターがいるのか考えさせられます。昆虫類なのでしょうが、その形態と習性がこの花の受粉に関わっているとなると、それは何なのだろうと・・・。

ベニバナイチヤクソウ つぼみ

2012年06月29日 | 自然観察日記
ベニバナイチヤクソウの花は桃色が主ですが、かなり変化があり濃いものから白に近いものまで見られます。裏磐梯の種はどちらかというと白に近い桃色でした。つぼみのものが色がはっきりしていていい感じでした。夏が近づいてくると普段見られない花を求めて高山や高原を歩くのが楽しみになります。

露天風呂に浮かぶヤナギの種子 1

2012年06月28日 | 自然観察日記
裏磐梯、とある施設の露天風呂に入りました。昼日中ということもあって誰もいなくて貸しきり状態でした。外風呂は茶褐色の利きそうな泉質で一人いい心地。至福の一時を満喫しました。その水面に綿のようなものが沢山浮いていて、風に吹かれると右に行ったり左へ行ったりと動き回っています。上から風に乗ってふわふわと舞い落ちてくるのもあります。

露天風呂に浮かぶヤナギの種子 2

2012年06月28日 | 自然観察日記
正体はヤナギの種子でこの季節沢山空に待っている光景を目にすることがあります。種は特定できないまでも、ここに来るまでに何種類かのヤナギを目にしてきました。この絵の中に羽毛のようなものの中に僅かに黒い点が見えますが、これが種子でかなり小さなものです。ヤナギ属は種子に栄養を貯めるという戦略よりも、軽くして綿毛までつけて遠くに飛ばすことに腐心したようです。ヤナギは陽樹、荒れ地によく発芽します。荒れ地は自らの成育する足元にはないことが多いのです。子供には旅をさせて種を残そうとしているのですね。

サワグルミの双葉

2012年06月27日 | 自然観察日記
興味深い形をした実生はサワグルミです。双葉には4つの切れ込みがあって、掌を真ん中で合わせて広げたような形をしています。クルミといっても核果を作りませんから、オニグルミのような芽生えにはなりません。

テツカエデ 葉

2012年06月27日 | 自然観察日記
県内ではウリハダカエデという種は里山を含めいたるところに自生しています。これとよく似た種にテツカエデというのが魚沼津方など深山に自生しています。葉はウリハダカエデが基部で細まるのに対して、テツカエデは左右が張って5角形になっています。

アズマシロカネソウ

2012年06月26日 | 自然観察日記
湿り気の強い日陰に咲くキンポウゲ科の植物です。少し遅めのはなを咲かせている個体に出会いました。ほとんどは実を作っていてこの固体だけが遅い目覚めのようです。こういう植物ににも個性があるのでしょうね。遅い花早い花、環境ばかりでなく自らの遺伝子でも差が出てきます。

アズマシロカネソウ 実

2012年06月26日 | 自然観察日記
アズマシロカネソウの実はプロペラのような形をしています。キンポウゲ科の種はその果実に特徴があります。種子を包む鞘は先端が鋭く跳ね上がっていて、この先から割れて中の種子をはじき出します。

マムシグサ

2012年06月25日 | 自然観察日記
実はかなり分からない種で似たものはみんな「マムシグサ」にしておいていいグループです。とにかく変異が大きく各地でいろいろなタイプがあるようです。県内の種に関して仲間内ではマムシグサとは言わずにコウライテンナンショウという言いかたで説明する向きもあって、ますます混乱しています。色の違いから葉の様子から本当にいろいろなタイプがあります。この清津峡沿いの散策道にも何種類ものタイプがありました。このタイプは葉に斑のような紋様があるものです。
調べていると、テンナンショウ属の種は日本で進化したとする記述があってなるほどと思いました。種の変異が多いというのはそこで進化した証拠と考えられるからです。

キヌタソウ

2012年06月24日 | 自然観察日記
つぼみ状態のキヌタソウ。私だけが興奮してはしゃいでいます。このキヌタソウにはちよっとした思い出が付いていいます。福島との県境に未丈ケ岳という1500mくらいの山があるのですが、この山域の植生調査を若かりし頃に手がけたことがあります。当時はまだ登山道もいい加減で、かすかな踏み痕を捜しながら山を登ります。その途中、道が途絶えているところがあって、どうしたものか思案しながら踏み痕を探していると、傾斜地に根曲がりをしている灌木があってその上が樹皮がむけていますから「ここが道か!」とようやく発見。「山道」は地面にあるものとばかり思っていたのに、ここは道は木の上にあることを知ったのです。それも10m以上はあったと思いますが、枝につかまりながらの登坂はスリル満点で一汗も二汗もかいたものです。それを越して未丈ケ岳に付いたときの爽快さは今でも思い出されます。山頂のすぐ下に広がる雪田草原の縁にこのキヌタソウが生育していて、貴重な調査記録になったのでした。

オククルマムグラ

2012年06月23日 | 自然観察日記
アカネ科の草本、それも深山性の花がいくつか出ました。どれも決して派手なものではありません。小さな花で見落としそうなものばかりです。
オククルマムグラ、里の藪にあるヤエムグラの仲間ですがこの林で見ると、とても同じ仲間とは感じられないのはどうしてでしょうか。花も小さいながらなかなか素敵です。花は4数性。

鹿の食痕?

2012年06月22日 | 自然観察日記
時間が来てしまいましたから、大して展望がいい訳ではなかったのですが昼食にしました。その周辺にあるブナの大木がこのような傷跡が数箇所sるのです。地上1mから2mほどの位置です。クマ?とも考えましたが、クマなら爪の引っかく跡が残りますから線状痕があるはずです。もちろんこの地域はクマの生息地真っ只中ですから、クマの痕跡もあるとは思います。しかし、この傷は歯で削いだような痕です。そうすると、カモシカかニホンジカとなりますが、カモシカは群れでは行動しませんからこのように狭い範囲で多数の傷跡は出来ません。消去法でニホンジカの食み痕と考えて見ました。魚沼辺りにはニホンジカはいないとされていた時期がありましたが、太平洋側の個体が増えて三国山脈を越えて入ってきているという話を聞きます。残雪期エサの乏しい頃の仕業なのでしょう。このままシカが増殖すると、この林は消えることになります。大きな問題が起こっているような気がします。