いろいろ出かける機会があって、白馬五竜高山植物園にも足を運びました。ゴンドラとリフトを乗り継げば約1700m~1600m程度のスキー場で、ここに高山植物園が作られていて、足腰の弱い方でも高山植物を十分楽しめるエリアになっています。訪れたときは雷雲の発生が予想される日で、天候が悪化するまでの限られた時間内に駆け足で散策しました。それでも3時間ほどの時間をかけての園内一周です。すでに、峰沿いにはガスがかかって雄大なアルプスの眺望はなく残念な状態。技かにこの園内で最上部にあるアルプス平自然遊歩道のオベリスク(地蔵の頭)が望めるだけでした。経験上労せずしてこんな高山にくるというのもどことなく後ろめたさを感ずるほうなのですが、高齢者の今はむしろ感謝のほうも芽生えてきましたね。
ゴンドラを降りて直ぐに目につくのがカライトソウの群落です。自然に出来たものではなく植栽されたものですが赤紫色に染まる原は見ごたえがあります。自然に見かけたものはもっと薄い桃色の花でしたが、ここでは赤紫色が濃く選抜されたものでしょうか。リフトがある区間は植栽されたエリアで湿性乾性などさまざまな環境によって展示してあります。一角には外国種のエリアもあります。リフトを降りたエリアが自然のままの植生を観察できるエリアで緩い散策路が整備されています。
丘陵公園にも自生しているので里の植物と考えがちですが、好きな場所は高原のようです。2000m以上の高山にも沢山ありますから、低山に生えているのはむしろ珍しい部類に属します。少し暑くなると葉を茶褐色に枯らしてしまい、暑さはかなり苦手な種ですね。株立ちになって、群生する場合も多い種ですから素敵な景観になっていることがあります。花穂は尾状で小さな青紫の管状をした花が下から順に咲いていきます。こういう形式の花序を無限花序ともいいます。
葉は輪生し、これが9段ほどあるので「九階草」といわれます。
里山フィールドミュージアムの種を増殖させようという試みをしていますが、熟した種子が上手く取れずに苦心しています。それでも、小さな種子ですが発芽した個体の生育は早く2年で小さいながらも花をつけています。概して野生の種は種子が小さくとも生育は早く開花するのにあまり時間がかからない気がしています。キキョウなどは1年で花をつける個体も出ました。
里山フィールドミュージアムの種を増殖させようという試みをしていますが、熟した種子が上手く取れずに苦心しています。それでも、小さな種子ですが発芽した個体の生育は早く2年で小さいながらも花をつけています。概して野生の種は種子が小さくとも生育は早く開花するのにあまり時間がかからない気がしています。キキョウなどは1年で花をつける個体も出ました。
夏の山野に綺麗なボール状の花を咲かせているのはイケマというガガイモ科の花です。花火のような形で花をつける様は興味深い習性です。こういう形で花をつける種は他にもいくつかありますが、比較的地味な色具合で目立たないほうの部類です。集まってくる昆虫にはどういう特徴があるのでしょうか?少し山手に行くと日当たりのいい林の縁にごく普通に見られます。良く見るとがくが花弁より目立ちやがて反り返っていきます。つる性の植物で有毒植物とされます(荷に毒がある)。しかし、新芽を山菜として利用されるようです。あまり食べないほうが無難ですね。
マルバアサガオみたいな蛾で対生します。アサギマダラという蝶の食草として有名です。この葉を食っているイモムシがいたらアサギマダラと考えてもいいのだそうです。有毒植物扱いですから、これを食べるアサギマダラにも毒成分が蓄積するわけですから、これで鳥などに食べられるのを防いでいるという考えがありますね。
菅平の草原の一角にキリンソウの群落がありました。黄色の絨毯のような光景は蒼い空との対比でも素敵なものでした。キリンソウはあちこちにありさほど珍しいものでもないのですが、まとまって生えているのに気をとられました。岩場に近い環境で見かけることが多いので、草地というのも面白い生態です。
キリンソウはベンケイソウの仲間で乾燥地には優れた適応能力を持っています。5数性の花です。キリンソウの名前の由来が気になって調べると、黄色の花が輪になって沢山つくことから「黄輪草」となったとか、ベンケイソウ科の植物は薬草が多いのですが、キリンソウも薬草として扱われますから「傷草」がなまってキリンソウになったという説が見つかりました。「麒麟」にまつわる説があるのかないのか不明です。
テングタケの黄色がかった種です。見る穂は初めてで色具合以外はテングタケと同じようです。やや乾き気味な霧と押しの土の上に発生していました。夏のキノコなのでしょうね。キノコの仲間は名前もついていないものが非常に多く採集しても結局同定できないものが沢山出てきます。それにもめげずこつこつとデータを集めていくとそのうちに世界が見えてくるのもなので、投げ出さず好奇心を持って接していきたいと思っています。
イチヤクソウ科の植物がもう一種。ウメガサソウといいます。ギンリョウソウもイチヤクソウ科ですから合計5種類この狭い範囲で観察できました。僅か100m範囲内で菅平はイチヤクソウ科を見るにはいい場所のようですね。
ウメガサソウ、名前のとおり梅の花のような姿でしべもイチヤクソウとは感じがまるで違います。葉は茎葉となり立ち上がります。うつむき加減ですが、気温の上昇と共に上向きになってくるのではないでしょうか。
ウメガサソウ、名前のとおり梅の花のような姿でしべもイチヤクソウとは感じがまるで違います。葉は茎葉となり立ち上がります。うつむき加減ですが、気温の上昇と共に上向きになってくるのではないでしょうか。
見つけた個体は、咲き始めたばかりなのかあるいは早朝というのでしっかり開ききっていないのかもしれません。十分に開花すれば梅の花のような均整の取れた花姿になるはずです。ただし、雌しべは団子鼻のようなごろとしていますから梅の花とはかなり感じが違うかも知れません。
大昔、学生時代の頃に南アルプスの信用樹林帯で見た大群落を思い起こすような立派な大群落がありました。イチヤクソウの仲間ではこの種が群落を作る性質があり亜高山の針葉樹林帯に行くと時々出会います。そうはいっても規模は小さく立派なものはそう多くないでしょう。あいにく花の時期は過ぎていて想像するだけですが、この規模なら悪漢の景観ができるのではないでしょうか。花の季節に再び訪れたいところですね。
山地性のイチヤクソウで個体数は多くない種です。里山にはイチヤクソウが点在していますが、これより花は大きく色白で豪華です。私はここ菅平で見るのが初めてでちょっと感激です。これよりもっと高所ではコバノイチヤクソウがあるのですが、これは過去に観察したことがあります。それにしても花の構造が面白い花です。でも下向きに咲いているので見にくいのが難点です。