高山の湿原などで見られる小型のラン科植物です。トンボの形に似ていることから名前ができていると思いますが、このグループの識別もなかなか難しいものです。花は小さく薄い黄色みがかったもので周囲に紛れて目立ちません。しかし、こういう種を見つけことが高い山に登る時の楽しみで、発見した時の喜びは何物にも代えがたいものなのです。そういう喜びを知っている仲間が周りに少しいますが、そういう人ともっと山登りをしたいものだと考えています。
花の大きさは2㎝弱、小さなイトトンボのようです。これが数個並んで花茎についています。花の向きは結構バラバラで特に一定の方向を向いているようには思えません。しみじみ観察すると味わいのある花で小さいながらもいろいろと工夫されているように感じます。
東北の高山に多いヒナザクラです。どこかに花がないかと探しましたが残念ながら見つかりません。8月に入るとさすがに無理なようです。登山道わきのむき出しののり面にへばりつくように生えていました。高山のサクラソウの仲間は雪田植物の傾向が強いとされています。雪渓の周辺に生育し雪が解けると次々に芽を出し成長しますからリング状に生育過程がみられることもあります。ヒナザクラがたくさん咲く光景をぜひ見たいと思いつつこれもいまだ果たせずにいます。
高山帯に生育するもう一つのツツジ科の低木、コケモモ。ひところはコメバツガザクラとよく混同していた記憶があり、果実を見てようやく違いを悟ったようなこともありました。コケモモも個体数の多い少ないはありますが高山帯に行けばほぼ必ず見られる種です。話によると北半球の寒冷帯には広く普通に生育する種とのこと。栗駒山にも少し湿地傾向のある日当たりの良い場所に見られます。花もない季節、まだ果実が熟していませんからあまり存在に気づきませんが普通にある種です。
八月は花が終わった直後でようやく太り始めた段階でまだ果実は青い状態です。赤く丸い果実になるにはもう一月くらいは必要です。美味しい果実ということになっていて、観光地には外国産のコケモモを使ったのでしょうジャムなどに加工されたものがお土産として売られています。個人的にはコケモモの赤い実に出会うより少し早く熟すツルコケモモに出会う機会が多くあまり口にすることがない果実です。
コメツツジやガンコウランと同じような場所に生えるミネズオウです。この種もあまり花を観たことがなく花の写真を持っていません。6月の花ですから高所に行く機会が少ない時期のため生の見事な花景観を見たことがないのです。栗駒山のミネズオウはどうなのでしょうか?個体はところどころ見ていますがまとまり具合に記憶がなく景観として見ごたえがあるのかどうかわかりません。
登山道わきにある岩場のにはコメツツジも見られます。かなり低いところにもみられる種ですが栗駒山の山頂直下でも生育していました。しかし、いずれもほかの種が生育できそうにないごつごつした岩場。それも日当たりが良く吹きさらしにあいそうな場所。過酷な条件に適応した種です。もっとも冬季は積雪で覆われるのでそれほど低温になることはないのかもしれません。
コメツツジは花弁が5枚。いわゆる5数性の種です。弁が4枚のオオコメツツジは確認していませんが、この花はおしべが4本と5数性ではありません。こういう花もあるのだと実物を見て考えさせられます。5数性のコメツツジと4数性のオオコメツツジの差はあまりないのだというのをこんなところで気づきます。形質が安定していないということは種が分かれてまだ新しいということと理解します。
地にマット状に広がって生えているのはコメバツガザクラ。コケモモによく似ていて葉だけでは区別しにくいものですが、コケモモはじめっとした処に生えるのに対してコメバツガザクラは乾燥気味のところに見られます。花を見れば分かりますが、果実のほうがもっと簡単で液果はコケモモ、蒴果(さくか)がコメバツガザクラです。
同じような環境にツツジ科の低木がいくつか適応していますが、ツガザクラは葉が極端に細く密生していて茎は立ち上がる形状にたいして、コメバツガザクラは平たい葉で地に伏して広がる傾向があります。名前はツガザクラで同じでもそれぞれの進化の方向が違っているようで属は別扱いです。花の形も釣鐘形とつぼ型でかなり異なりますが、果実はいづれも蒴果を作ります。
近年ガンコウランの花の頃に山登りをしていないようで自分が撮った花の写真がありません。毎年どこかでガンコウランとは出会っていますが、花を見たのはいつのことだったか・・。写真でしか見ていないという状態です。花の季節は5~6月。この季節にはあまり高所には行っていないということになります。花を追いかけていると比較的低い山を散策することが多いためで、高山にはふつう7月が多いのです。来年こそはガンコウランの花を撮りたいと考えています。
最近まで日本では1属1科のガンコウラン科として扱われていましたが、APG分類ではツツジ科にまとめられたそうです。高山植物で乾燥気味の日当たりの良い場所に生息する低木です。名前の由来ははっきりしませんが「岩高蘭」という文字があてがわれていますからなんとなく生息する環境に由来しているようです。しかし、「蘭」については花を見ても納得でき兼ねます。それはそうと、果実はなかなか美味しいものですから出会うとあいさつ代わりに一粒いただくのが習慣で高山に来たということを実感するときでもあります。