「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

北陸電力・志賀原発を巡る議論に一言:一流企業としての「矜持」を取り戻してほしい!

2015-05-16 22:25:59 | 危機管理
数日前に書きかけだったことだが、そのまま「お蔵入り」させるには不本意ゆえ、
いささか気が抜けた感もない訳ではないが、アップさせてもらうことにした。

防災・危機管理に携わる者として、去る5月13日の報道には幾つもの気になることがらがあった。
(ついでに言えば、翌5月14日分の報道にも、一言言いたくなる事が幾つもあったのだが……)、
その中から一つ、石川県の志賀原発の施設内にある「もの」が断層か否かの議論について、
一流企業としての「格」「徳」「誇り」「矜持」といった観点から少し考えてみたい。

メディアに流れたものを見る限りだが、今回の専門家グループと北陸電力側との議論を聞いていて、
理学を専門としない「旅の坊主」には、その「もの」が何物なのかを判断する力はないが、
「予防に勝る防災なし」「問われるべきは立地と構造」の世界に生きている者として、
北陸電力の偉いさんの発言に、一流会社として「情けない」「みっともない」という印象を
受けざるを得なかった。

つまりは、「もの」が何なのか、の検討よりも低いレベルで、
「勘弁してくれ」(そのスタンスは一流企業としてないでしょ?)ということ。

一流企業には「格」「徳」「誇り」「矜持」と言った言葉で表現されるようなものがある。
(多少の願望なり希望も入ってのことではあるが、それくらいの期待に応えてナンボでもあろう。)
企業たるもの、利益を上げなくてはならないことを否定するつもりはもちろんない。
しかし、横綱が横綱相撲をせず、ひたすら勝ちにこだわるような相撲をしては、世間は納得すまい。
志賀原発の敷地内にある「もの」が何なのかについての「主張が受け入れられず云々」のコメントには、
横綱相撲にも似た、一流企業に求められる風格の片鱗も見ることが出来なかった。
さみしい限り。

防災・危機管理を語る上で、まず問われるべきは立地と構造、を伝えている身。
構造についても言わなくてはならないことは幾つもあるが、まずは立地について。
普段であれば、「医療機関」「社会福祉施設」「学校」「行政の拠点」の4つを列挙しているが、
もちろん、原発のような施設についても、否、原発のような超重要施設についてはなおさら、
本気で立地を考えなくてはならないはず。

何せ、何かあった場合の社会的影響の甚大さ、
有り体に言えば、原発事故発生時の被害の及ぶ範囲&時間的長さは半端ではない。

であればこそ、施設内の「もの」が断層か否かは、立地検討の段階で議論すべきのもの。
かつ、「君子危うきに近づかず」ではないが、今回のような評価が分かれるような場所はそもそも避けるべき。
超重要施設ゆえの、「そもそも疑わしきは避ける」が、防災・危機管理の観点からしても、
大原則ではないか、と思う。

建ててしまってから「断層だ」と言われ、それに対して、
「否、断層ではない」と反論することを「みっともない」と言っているのではない。

「どうのこうの」言われるような場所に建てたこと自体、一流企業としてそもそも「みっともない」、
そういうレベルではないのか、ということ。

少なくても、「安全性を十分考慮しています」となんぞ、恥ずかしくて言えないレベル、であろう。
そう思わざるを得なかった。

もちろん、
「そんな『甘っちょろいもの』で原発の立地なんぞ決まっていないぞ」
「そんなことも知らんのか、このボケ!」
等々の声が聞こえてくるだろうことは百も覚悟の上。

歴史(現実)に倫理性を求めてはならない。
その程度のことは理解しているつもり。

(それにしても、日本の歴史を美化したがる者がなんでこんなに多くなってしまったのだろう……。
それだけ、自信がなくなってしまったのか、歴史・現実と倫理の区別すらつかないくらい、
知的な劣化がひどくなってしまったのか……。)

三流以下の企業・組織体であれば、人間社会の醜い部分が表に出てきて、
そしてそれで物事が決まることもままある話、とは思っている。
(かくいう本学でも、過去には、とてもじゃないが外には伝えられないような、
デタラメ極まりない話が幾つもあった。)

しかし、一流企業であれば、否、一流企業であればこそ、美醜を考えた振る舞いをしてくれ、
と言いたい。

カツカツの企業に「立ち居振る舞いの美しさ」を求めている(期待している)のではない。
北陸地域をリードしていくべき、押しも押されもせぬ大企業が、「筋論」に反することを恥ずかしげもなく主張する姿、
「旅の坊主」にとって、これは醜悪であった。

問われるべきは「立地」と「構造」。
そして、「君子危うきに近づかず」「李下に冠を正さず」。
あり得ないことを望んでいる訳ではないと思うのだが……。

(それとも、そもそも一流企業であろうと、その種のものを求めるのは間違いなのか?)


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