「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

「カエルキャラバン」とKさんとの話で考えたこと(その1)

2010-10-27 22:59:13 | 国際防災協力
いつものような朝。

言われてみれば当たり前のことなのだが、
出張報告書は、日本語版のみならず、
スペイン語版も必要とのこと。
そりゃそうだ!
何せ、カウンターパートの母国語はスペイン語なのだから。

残念ながら、
「旅の坊主」にスペイン語は書けない。
というので、まずは英語での出張報告を書き始めるが、
恥ずかしながらこれがなかなか文章にならない。
たかだか2ページのレポートに大苦戦であった。

同僚Kさんと、少しまじめな議論をする。

当地でも、BOSAIを考える上で、
「事前」「最中」「事後」という区分はある。

「予防に勝るBOSAIナシ」との観点からすれば、
事前対策を考えていることは歓迎すべき、と、言いたいのだが、
実のところ、当地で言う「事前」は、
「予防」とは似て非なるものであった。

当地で言う「事前」は、
ほとんどの場合「準備」を意味する。
つまりは、避難や救出救助のための準備であり、
「旅の坊主」が好んで使う言葉で言えば、
「仕込み」にあたる。

なるほど、「仕込み」は重要であるが、
そもそも論を言うならば、
被害に遭うか遭わずに済むかは、
一義的には「立地」と「(建物などの)構造」、
「旅の坊主」流に言えば「構え」で決まる。

立地を選ぶ(あるいは人工物で立地条件を良くする)ことと、
構造を選ぶ(あるいは強化する)こと。
この両者が、被害抑止の基本コンセプトである。
ただ、そのことは、
BOSAIというと救援、と思い込んでいる人びとには、
なかなか理解してもらえない。

事前準備の重要性を否定することなく、
だが、「予防」=「構え」の重要性をどう理解してもらうか。
これは、なかなかに難しい課題である。

さらに。

災害から守るべき「価値」としては、

「生命」「身体」「財産」
「自分」「家族」「コミュニティ」

という明確な優先順位がある。

だが、奇妙なことに、
往々にして、財産を守るために生命を失うことがあり、
また、
「(生命は守れたことを棚上げして)財産を失ってしまったではないか!」と、
憤ることもままある話。

この奇妙な逆転現象を、
「そういう解釈が一般的なのだ」と認識しつつ、
生命(身体)も財産も、を、どうやって形にするか。
そのための方法論が問われている。

さらにさらに。

知識を伝える時の怖さもある。

例えば、
当方としては「前兆現象があれば逃げよ」と
言ったつもりでも、
先方には「前兆現象がなければ逃げなくてもいい」と、
逆(裏)の解釈をされる可能性(危険性)もある。

前兆現象があろうとなかろうと、
ヤバいと思ったら逃げる習慣をつけさせること。
さらに、
逃げたが何も起きなくても、
「何もなくてよかったね!」と思える(言える)、
そんな住民を育てて行くにはどうすればよいか。

Kさんとは、そんな話をした。
なかなかハードだが、充実した議論であった。

(長くなりそうなので、
後半?は次の機会に。)

                       (10月29日アップ)


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