「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

「予防が大切」は「防災の物語」になるのだろうか?

2014-11-09 22:57:16 | 地域防災
明日(11月10日)、宮崎県日向市の豊島高校で、4コマ4時間弱の防災ワークショップを頼まれている。
羽田・宮崎経由で彼の地に向かうJRの車中で、モノを考える。

1ヶ月ほど前、中越沖地震から10周年を迎えようとしている長岡・小千谷周辺を旅して、
FBにこのような書き込みをした。

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某月某日、某所で発した「旅の坊主」の一言。

生き延びた者にとっては「絆」であったのだろうが、
不幸にしてお亡くなりになった方が言いたかったことは
「絆」ではないと思うのだが。

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金曜、土曜と静岡県地震防災センターで行われた地域安全学会に参加されたMさんと、
静岡ではなく宮崎でお会いして議論させていただく。

テーマは、ファシリテーター養成講座のあるべき姿。

「パッケージ化されたプログラムを教えてくれれば、出来るようにしてくれればそれでよい、
という人を育てればよいのか」、

あるいは

「共に考えてくれる仲間を育てたい」なのか。

パッケージ化されたプログラムを名乗るからには、もちろん間違ったことを教える訳にはいかない。
ただ、世の中には、間違った防災の常識は山ほどある。
その「間違った防災の常識」を打破するようなプログラムが出来ればそれでよい、
ということ、ではあろうが……。

「避難所に行かないことが防災!」と、この直前に書いた。
それが自助のあるべき姿であろう。

絆という言葉はきれいな言葉だが、
どれほどの絆があっても「安全な場所」「安全な建物」に住んでいなければ、
災害でお亡くなりになってしまうかもしれない。

毎度のことながら「予防に勝る防災なし」

では、パッケージ化されたプログラムの最後に、
「皆さん、予防が大切ですよ!」ということは、
「防災の物語」になるのだろうか。

否、「防災の物語」に値するものなのだろうか

防災の常識・非常識(その3):避難所に行かないことが防災!

2014-11-09 18:28:55 | シリーズ「防災の常識・非常識」
祖母が存命中のことだから10年以上前の話ですが……。

祖母の介護にあたっていた母から、「何かあったら避難所に行かなくてはならないの?」と
問われたことがありました。その質問の背景には、災害時には避難所に行くよう言われているが、
避難所の環境は知ればしるほど劣悪で、その中でまともな介護が出来るとは思えないのだが、
という現実的な判断があったから、と思っています。

「旅の坊主」の答えは明確で、もちろん即答しました。
「行く必要はありません。行かないのが防災です。」と。

何も好き好んで劣悪な環境に行って命を危険にさらす必要はないのです。
幸いにも実家は地盤も良く、建物も旭化成のへーベルハウスゆえ、震度7の揺れを受けても全半壊するリスクはゼロ。
「安心して自宅で生活を続けて下さい。」と自信を持って言えた訳ですが……。

日本の防災はどこで間違えてしまったのでしょう。

避難所に行くことを訓練するに、どのような意味があるというのでしょう。
静岡県下では、12月の第一日曜日が県民防災の日であり、今年も県内各地で、
様々に工夫された防災訓練が展開される予定になっています。
ではありますが、その少なからぬものが、「隊列を組んで避難所に行く」ことを訓練メニューとしているであろうことを考えると、
「他にやることがあるはず。」「もっと優先順位の高い訓練メニューはある!」
「避難所に行って何とかなると本気で思っているの?」と言わざるを得ない、
というのが偽らざるところです。

我が身を振り返るならば……。
防災・危機管理のプロを自認する者として、他の訓練メニューを提示しているつもりですが、
それが普及していない現状に、己の力不足を痛感する以外にありません。

今のための防災と将来のための防災。

昨土曜日の四日市市でのワークショップでも改めて感じたことですが、
私達は、今のための防災と20年後のための防災、この二兎を追うことを求められています。

「家が潰れてしまっては生活が出来ない」ので避難所に行く、というのは、もちろん、
わからないではありませんが、ちょっと待って下さい。
震度6強の揺れに耐えられない家に住んでいるということは、いざという時には、
避難所ではなく病院に担ぎ込まれている、あるいは遺体安置所にいるかもしれません。

その可能性が相当高いということは頭の外に追いやった上で、またそのことに手を打たずに、
「隊列を組んで避難所に行く」というのは、申し訳ないですが、「訓練ごっこ」だなぁ、と、
言わざるを得ないと思っています。

20年という時間があれば、「安全な場所に住もう」「安全な土地に住もう」という目標も、
少なくても原理的には十二分に可能です。
何せ人口が減っている&800万棟近い空家のある日本なのですから。

これらをスクラップ&ビルドすれば場所の確保は出来るし、現行基準で建て替えれば
震度7でも実質無傷の家屋耐震性は確保できます。
ということは避難する必要はありません。

避難しなくても済む社会を作ろう、という大目標を掲げることが、
防災・危機管理の世界には求められているはず、なのですが……。

拙ブログの読者のみなさまへ。
相変わらず、皆さんがお住まいの自治体で、避難所に行くことを防災訓練のメニューに掲げているとすれば、
残念ながらあなたの自治体の防災担当者は不勉強です。
でも安心して下さい。
不勉強な防災担当者に「しっかりしろ!」「これくらいのことはやってもらわなくては困る!」と言える制度が
この春から動き出しています。ただし、みなさん地震が知恵を絞ってモデルを作る必要がありますが……。

というのでぜひ、「避難所に行かないことが防災」という地域防災のモデル、
一緒に作っていきませんか?