「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

滞在6ヶ月目に突入:この日はVelaguas県Mariato市の現場へ

2011-02-17 23:38:23 | 中米防災協力(プロジェクトBOSAI)
前日、ある程度は宿題を出しておかないと、思ってはいたのだが、
26時を過ぎたらさすがに体が持たなかった。

30分だけと思い、部屋の明かりもそのままにうとうとしたのは、やはり間違いだった。
気付けば6時の目覚ましが鳴っていた。それでも睡眠4時間では動き出せず、
何だかんだと7時過ぎ。5時間余の睡眠か。

8時にホテルを出発。
まずはSINAPROCのVeraguas事務所へ。所長のA氏に挨拶し、
BOSAIサイトであるMariato市内の2ヵ所について意見をうかがう。
が、何とも乗り気のない雰囲気。うーん……。

それでも、当初予定にはなかったが、
SINAPROCの若いスタッフをつけてくれ、
彼を含めて5名で現場へ。

前日のパン・アメリカン・ハイウェイとはことなり、
この日のサイト、Mariato市のBaradeloとCasucarillosoまでの道は、
田舎の舗装道路の感で、ところどころに穴はある。
それでも、現場直近までは舗装が続いているのだから、
パナマのインフラ投資は決して捨てたものではない、ということなのだろう。
(あるいは、アメリカの「植民地」時代の遺産がまだ生きているということか?)

8時50分に事務所を出て、Mariato市までは1時間半というところ。
市役所といっても市長を含めても職員は14人。もちろん防災担当はいない。
人口も約5千人というのだから日本の町の規模だが、
職員数は1/3以下、というところだろう。

市内は5つのブロックに分かれ、目指すサイトは、奥側の2ブロックの中。
まずは、Cacao地区のBaradelloコミュニティへ。
今は市議をやっている09年の日本研修生の自宅を訪問。
OBのお父様と防災委員会の副代表、2名に対して、
プロジェクトの内容を説明するも……。

話がかみ合わないこと、おびただしい。
思い付きをぶつけてくるものの、どれもこれもピンボケばかり。
怒る訳にはいかずに、辛抱強く説明するも、
結局のところ、何もせずに誰かがやってくれるのを待つタイプであった。

「あなたが政府に申請をする時、知らせてくれれば、
私からも一筆、推薦状を書きましょう。」

現実的な落とし所を示したつもりだが、その気はゼロ。
こういうサイトでの議論は、ものすごく消費する。

どう考えても、コスト・パフォーマンスに見合わない。
我慢して付き合えというならば付き合うが、
我々の人件費はこういうことのためにもらっているのだろうか……。

副代表に案内してもらい、洪水の原因というRio Baradero(バラデロ川)を見に行く。
一目見て愕然とする。こりゃ、小手先で何とかなるサイズではないな、と。
(お父さんの思いつきぶりには愕然とするばかり。桁が4ケタ違う!)

国家レベルの治山治水工事に本腰入れても、さて成果が出せるか、という巨大河川。
それが年に数回あふれ返り、数日から一週間程度は水が引かないとのこと。
プロジェクトの持つ参加型小規模土木工事でどうにかなるものではなかった。

せめて、しっかりと天気予報を聞いて、で、
早目の避難を考えてもらいたいが、
電気は通っておらず、インターネット環境もない。
わずかにソーラーパネル+自動車用バッテリーで無線機があるのみ。
さてさて……。

何だかんだと2時間近くをBaraderoで過ごす。
来た道を引き返して、もう一つのサイト、Casucajillosoへ。
Rio Baraderoほどではないにしても、それなりの川幅のあるRio Pavo(パボ川)
こちらも氾濫すれば、平地部分が水につかるのはあきらか。

コミュニティの中でただ1軒、かさ上げした家があったが、
(コンクリートブロックの外枠に中は土を詰めたもの)、
それも役に立たなかったという。
残念だけれど、そりゃそうだろうね、と言わざるをえない場所。

でも、近くに高い場所もあり、避難所も兼ねた学校もある。
学校には衛星経由でインターネット環境もあるという。
ということは、避難のタイミングさえしっかりと伝えられれば、
人命はもちろん、財産を失うこともない。そういう場所。

Casucajillosoであれば手の打ち様があるなぁ、と、
多少なりとも思えたのが救いであった。

わずか1時間半ほどの滞在で、すべてのことが分かるはずもないが、
少なくても、多少のイメージはつかめたことを良しとしたい。

帰路、16時近くだったがMariatoの町はずれで遅い昼食。
ホテルに戻ったのが18時過ぎだったろうか。
メールチェック等の後の20時、再度集合。

Mariato市長がVeraguasに出ているとのことで、
その彼と、Mariatoで市議を務める09年度の帰国研修員、
加えてその取り巻き数名を交えての夕食会となる。

市長の最初の一言も「避難所が欲しい」。
予算を越えていると言ったら「あなたと交渉したい」。
予想はしていたが、教科書通りの要望には悲しくなる。

プロジェクトの主旨、予算を説明すると、
市長自身は興味を失った感はあったが、
側近氏が逆に関心を示してくれた。

市の実情、例えば、
・風光明媚な場所ゆえ、外資が土地・建物を買いあさっている。
・人口5000人前後の市(町)に、新たに2000軒の!
 (主に外資向けの)家を建てようという計画がある。
・富む者はより富み、貧しい者はより貧しく、の図式がここでも展開されている、
・就労の機会があることは嬉しいが、地元の資産としては残らない。外に流れる。

等々、貴重な情報を提供してくれた。

つまるところ、市内の先生方を対象に、
BOSAI教育をすることから始めようではないか、
その辺りに落ち着く。

1時間余、車で戻らなくてはならない市長を見送り、
残った我々も22時くらいにお開きとする。

ホテルのバーで一杯だけロンのオンザロックをもらい、
その後、部屋に戻って仕事を続ける。
この日も26時くらいまで、という感じか。

丸5ヶ月が過ぎ、今日から6ヶ月目に入った訳だが、
感慨というほどの感慨はなく、ただただ、時間が経つのが早いの一言。
ともあれ、まずは目の前のこともこなさなくては、
中長期の仕込みなど、出来る訳もない。
まずは宿題を片付けて、か。



(2月18日アップ)