治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

なんで治るんだろ(「絶歌」を読んで)

2015-06-13 11:07:10 | 日記
おとといは原稿的に濃い一日でした。
朝暑苦しい原稿→プール→白焼き戻し→棒人間会議→暑苦しい原稿→「絶歌」を読む

で過ぎた一日。就寝は一時ごろかな。希望の書を読んで、晴れ晴れとした気分で寝ました。

ふと気がついたけどこれでも目が疲れませんねワタクシ。
商売上非常にありがたい特性であります。
どうして私の目はそれほど疲れないのか、ってまあ棒人間会議でも出たんですけどね。
栗本さん今目と身体や心とのつながりを鋭意研究中のようですよ。今月も方々でコンディショニング講座開かれるみたいですから、目がお疲れの皆さんは最新の知識を仕入れられると思いますよ。目の疲れは心にも影響しますからね。

さて、昨日は原稿的にではなく流通的に動いた日でした。
夜になってふっと時間ができて、愛甲さんに電話した。愛甲さん世情に疎いので、情報が入っていないおそれもある。

「あのね、サカキバラが本出したの知ってます?」

さすがに知ってたみたいだ。

「読んでください。治ってるから。私は治ってると思うから」

私はこの本を読むまで、どっちかというと少年犯罪厳罰寄りでした。でもこれだけ治るんだったらチャンスを与えてもいいんじゃないか、と思っているのがイマココ。

それくらい治ってる。

ある意味、当たり前かもしれない。
支援者は死んだふりしなかった。当たり前です。この子をありのままにしておくことは許されなかった。そして本人にルサンチマンはない。当たり前です。あれだけのことをして生かされたんだから。死んだふりもありのままもルサンチマンも支援者と本人にない場合、これだけ治っていくんだな。

そして出てきたあとの支援も素晴らしい。神奈川県内だったとか? いう未確認情報。本当だとしたら、私は地元として誇りに思いますね。素晴らしい地域支援。

そして本人の自己治療。これって愛甲さんがやってることじゃん。つまりこれを中で習ったんだな。中の人がよかったんだな。



この本の出版で、ご遺族がつらい思いをしたのはわかります。でも出なきゃいけない本だったと思います。少なくともプロの人たちは、出てしまった以上あれこれもったいつけてけちくさい読書の省エネしていないで、読んできちんと社会に還元すべきです。

救いだったのは(多少ネタバレ)
この子がやや立ち直りかけたとき、支援者側がきっちりと両ご遺族の慟哭の書を読ませたこと。

当然崩れます。悶えます。血を吐くような思いをします。でもそれを乗り越えなきゃいけなかったでしょ。その苦しみから彼を遠ざけてはいけない。その苦しみを一生背負っていきていかなきゃいけないだけのことをしたんだから。

ギョーカイにこれができるかな?

真綿にくるんで社会に理解を訴えるだけのアジテーションを支援と呼んでいるギョーカイと違って
人間扱いしているんですよね、彼を。支援者が。

彼はね、社会への恨みをただの一言も書いていません。
ルサンチマン系の当事者本の多さを思うとき、これは驚異的です。
だから地に這うような生活を今もして地域に生きられるのでしょう。
支援がここまで功を奏すのかとびっくりします。


問題は、あれだけのことしでかさないとこういう良質な支援に恵まれないという現状です。
被害者が出る前にやれよ、っていう。

折しも井出草平氏の「アスペルガー症候群の難題」が電子書籍化され、私は紙の本に続いてこっちも手に入れました。

電子書籍は便利です。たとえばGYK48のおひとり、畏れ多くも発達障害ギョーカイのセンターオブセンターに君臨する市川大先生のお名前を電子書籍で検索するとぱぱっとどういう話題で出てきたかわかります。

井出氏は市川先生の論文をたくさん参考にしている。
・自閉症者の触法率は優位に高かったのでした。
・再犯率も高かったのでした。
・医療的介入は再犯を防げませんでした。

っていう研究をGYKの大先生が国のお金で行いちゃんと発表している。私はこの本で知ったので検索してみましたが、自閉症協会のサイトの奥深くに穴掘って埋めてありますね。一生懸命掘ればみんな見られる場所に。トップから入るのは難しいようです。せっかくの研究成果、奥に置いとくとは文字通り奥ゆかしい。

先日名古屋でアスペルガーの人が暴走した事件、弁護側が治療的介入を主張し検察側が懲役を主張し結局懲役12年に落ち着いたようですが

センターオブセンターが「医療的介入じゃ治りません」という検証をしてしまっている以上、治療的介入に軍配が上がる日は遠そうです。

でも治す支援もある。
元少年Aの支援者もギョーカイも同じような職種の人で構成されてるはず。
なのに何がこれだけ違うんだろ。


ねえ。