卯の花の匂う垣根に
時鳥早も来鳴きて
忍び音もらす夏は来ぬ
作曲 小山 作之助
作詞 佐々木 信綱
この詩、私なんかが素直に読んじゃうと一つ問題ありです。
卯の花は匂わない。
でもこれは、匂うに花の咲きほころびる様を当てているのですね。
いすみ市ではホトトギスは春一番から鳴いているような気がします。
夜中にも眠そうな声で、「東京特許許可局」ってね。
でも、物の本には、東南アジアで越冬し、夏に日本に来るってことになっています。
昔の詩にもホトトギスが来て夏になるというのはたくさんある。
はて、私の聞いているのは空耳か、それとも別な種類の鳥なのかな~
それにしても「忍び音」ですか。
どうして、昔からホトトギスはしのび鳴くのでしょうね、、、
なく声をえやは忍ばぬほととぎす初卯の花の影にかくれて
新古今集
柿本人麿
ここでは、ホトトギスは素っ頓狂な大声で鳴き喚いておりますけどね~
なんてことは別にして、卯の花、、、空木の花ですね。
万葉集にもたくさん出てきます。
非常にポピュラーな花。
空木というのは枝の中が空洞になっているから、そう呼ばれているのですが、なぜ空木の花が卯の花か、そこにはおからが関係するのか、、、、この三角関係には大きな秘密が隠されていたりして、、、、
卯の花の垣根。
昔はよくあったといいます。
一つにはもちろん花の美しさ。
純白の花が枝一面に咲いているのはとても見事ですからね。
千葉は早稲の産地ですので、田植えが終わってしばらくしたころに卯の花が咲き出しますが、ほかはどうなのでしょうか、田植えの後すぐに咲き出すのかな。
そして、卯の花が咲き出すと、梅雨が始まります。
下に引用した万葉の歌の卯の花ぐたし(今では卯の花くたし、でしょうか)は梅雨、もしくは梅雨のさきがけの長雨のこと。卯の花を散らす雨ですね)
それに、育てやすさ。
強い植物です。
簡単に育ってくれる。
そして、もう一つ、実はこの木は非常に固くって、木の釘になったのです。ありますよね、細工物で木の釘を使ったもの。あれがこの木で作ったものなのですね。
春されば卯の花ぐたしわが越えし妹が垣間は荒れにけるかも
詠み人知らず
万葉集 10-1899
素直に読める詩ですけど、一つだけ、春去ればは、春が過ぎればの意味ではなくって、春になればの意味。
春さればまづ咲くやどの梅の花独り見つつや春日暮らさむ
春が来れば、、、の意味ですね。
去るは、行ってしまうの他に、時間が経っていることをあらわしています。(冬から春になってきて、、、、)
と、説明されていますけど、上の卯の花の詩では、春が行ってしまっての方が分かりやすいですよね、、、、
これまた、調べなきゃ。
ところで卯の花。この花は憂いとも関連付けられています。音からの連想なのでしょうね。
ほととぎす我とはなしに卯の花のうき世の中になきわたるらむ
でも、卯の花を詠んだ詩の一番素敵なものは、
夕月夜ほのめく影も卯の花のさけるわたりはさやけかりけり
千載集
藤原実房
この時期のぼんやりとした月明かりの中でも、卯の花は真っ白に、爽やかに咲いております。