DREAM/ING 111

私の中の「ま、いいか」なブラック&ホワイトホール

魍魎の匣★猟奇7割減/マッド・サイエンスな娯楽作品

2008-01-15 | ドラマ・映画・演劇・アート
魍魎の匣 予告


魍魎の匣

実相寺監督が手がけた『姑獲鳥の夏』が、個人的に(あくまで個人的に)
いろんな意味でアウトだっただけに、
期待以上に不安で、めっちゃドキドキしながら観に行きました。
以下、原作含めてネタバレ含みます。



京極夏彦&京極堂シリーズの代表作にして、
一般的評価も極めて高い、&なる@的にも書籍ベスト10入りの『魍魎の匣』。

江戸川乱歩の「押し絵と旅する男」への強いオマージュ、
異性愛の準備としての同性愛に似た少女イズム、少女愛好、閉所愛好、
潔癖主義、完璧主義、近親相姦、マッド・サイエンティスト、
過剰なファン心理、独占欲、新興宗教、捕物、憑き物落し・・・・・・、

いくつもの匣がみっしりと重なって、魍魎を集め、どろどろとまき散らしながら
最後に1つの匣にみっしりと集約していく、恐ろしいほどの構成力は、
村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が水面の表裏だとすると、作りかけのどろりとした蜂の巣のようです。

こゆ、濃くて美味しい要素だらけで、
映画にすると簡単に三部作くらいになりかねない
長編を、2時間の映画作品にするには、どこをどう切り落として、
上手に匣に編集するのか?
それがある意味、1番の関心でした。

で、さっさと結論。
後半の博士と京極堂の対峙にフォーカスしつつ、
カストリ風味な大掛かりな演出含めた構成は、
成功してるのではないかな、と思いました。
なにより、原作を読んでないダンナが面白がってましたから。w
・・・まぁ別もの、といえば、別ものなんですけど。(;
それはそれでいいじゃないか、と思える出来ではあったかな、と。
「押し絵と旅する男」ではなく「芋虫」へのオマージュ(??)になってましたが(;;

個人的には「みっしり感」がかなり足りなかったかなー。
猟奇な部分が7-8割り減・・・匣的にはある種致命傷かもしれません<オイ
やっぱ、匣といえば「みっしり」でしょう?
セリフでは何度もでていたけど、映像で魅せてほしかったなぁー。
ただ、すると全然別のどろどろの猟奇・スプラッタ映画になって、
後半のマッドSFなクライマックスがあそこまで描けなかったかも。
(久保の最期はみっしりしていてよかったです)
だから本作品は本作品で、1つの「映画的・解」なのだと納得。

バランス的に、映画内映画が案外長かったり、研究所の探索が長かったり
「え?ここをこれだけ?」という部分は、もう必然的に多々ありましたが、
これはもう言ってもどうしようもない部分なので、
1つの娯楽作品としてのまとまりはあったと思います。

例えば、久保のトラウマの発生を、美馬坂の研究所のみにおいた
スタート地点の改変は、映画としてはわかりやすいし、筋道通しやすい。
あのゾクゾクする「あぁ、生きている」がないのは極めて残念だけど・・・。

映画内映画は、小説内小説の仕組みに似て、監督の匣へのリスペクトとして
評価ポイントかと思います。木場の入れ込みもラストへの伏線になったかな、と。
(ちょっとクドかったけど;;)
人海戦術な撮影所風景や古い街並みの再現はそれだけでオモシロイ(キャスト見てると、ほとんど中国人だったんすねー)。

見どころの1つ、御箱様退治は、さすが堤氏(姑獲鳥でも思ったけれど、
あのセリフ量をこなせる役者ってそうそういないんでは)迫力ありました。
(が、やっぱ京極堂の人をくったおどろおどろな胡散臭さはかけらもないのね;堤さんは大好きなので、ま、いいか)

魍魎の匣記者会見

役者さんが楽しそう♪
(前回は緊張感が全面に出てどよよんと暗いイメージだったような)。
今回は、ストーリーを役者に語らせる感じで、キャラがそれぞれ際立ってたかなと。
関口はしゃべりすぎ&明るすぎだけど映画のキャラとしてはこれでいいかなぁ、
アドリブ多かったらしいですが、現場の雰囲気の良さが作品にでてると思います。
主要登場人物のバランスもよかった(榎木がちょっと出過ぎかな?)。
あのややこしい人間関係と、個々の性格を
いくつかのシーンとセリフ回しで表現できてたのには拍手です。
(原作知らない方の意見を聞きたいところですが)

とまぁ、個人的には匣そのもの、というより、
匣解釈映画、として合格点でありました。

DVDになったら、もう1度観たい作品です。

さて、第3作はあるのかなぁ?順序だと『狂骨の夢』だけど、
あれはどうも暑苦しいので(オイ)、
1番映画にしやすそうな『陰摩羅鬼の瑕』か
女学生だらけで華やかな『絡新婦の理』なんてどうでしょうか?ね??

で、「鵺の碑(ぬえのいしぶみ)」はいつ発売されるだろう???

魍魎の匣(wiki)
■ 監督:原田眞人
■キャスト
・京極堂(中禅寺秋彦) - 堤真一
・関口巽 - 椎名桔平(永瀬正敏が腎尿路結石のため)
・榎木津礼二郎 - 阿部寛
・木場修太郎 - 宮迫博之
・安和寅吉(和寅) - 荒川良々
・青木文蔵 - 堀部圭亮
・鳥口守彦 - マギー
・中禅寺敦子 - 田中麗奈
・中禅寺千鶴子 - 清水美砂
・関口雪絵 - 篠原涼子
・柚木陽子 - 黒木瞳
・今出川欣一 - 笹野高史
・寺田兵衛 - 大森博史
・増岡則之 - 大沢樹生
・雨宮典匡 - 右近健一
・柚木加菜子 - 寺島咲
・楠本頼子 - 谷村美月
・久保竣公 - 宮藤官九郎/少年時代 - 下山葵
・美馬坂幸四郎 - 柄本明


関連:
京極夏彦★映画版第2弾/『魍魎の匣』製作発表・2007年公開!
京極夏彦・邪魅の雫★自分にできること・やるべきこと
京極夏彦・邪魅の雫 2★社会と世間と個人における善悪
2005年9月18日朝8時のごめんなさい
好きな本たち・1『姑獲鳥の夏』他

コメント (2)
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