ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

茨城味自慢:味はサザエ、食感はアワビ!それが茨城の「つぶ貝」

2023-07-31 07:14:19 | 日記

茨城県沖で漁獲され、主に豊洲市場へ送られているつぶ貝とは、灯台つぶ貝に属する

「シライトマキバイ」のことです。県内沿岸の一部地域では「ツブ」、「ツブ貝」、

「ベー貝」、北海道では「灯台つぶ」と呼んでいます。つぶ貝の魅力は、コリコリと

した食感、特に新鮮な活つぶのゴリゴリとした食感と弾力のある歯応えはつぶ好きの

方の舌を魅了します。つぶ貝はスーパーの店頭では剥き身の状態が多いので、ハマグ

リやサザエのような貝殻姿を想像することは難しいですよね。つぶ貝には最高品種の

「真つぶ貝」、その他に「磯つぶ貝」「灯台つぶ貝」などなど、個性的な姿をした貝

殻の種類があります。どれも個性があり、どれも美味しいのでフアンは多いです。

「つぶ貝」は、アワビやサザエの肉と比べて、ずっと柔らかいものの適度な歯応えが

あり、又、ほのかな旨みと甘みがあるけれど、やや淡白な味のものが多く、料理の幅

がとても広い食材です。具体的には、串焼きや付け焼き、塩茹でや和え物、刺身や寿

司などがあげられます。

つぶ貝は殻高が10cm~15㎝ほどになる大型の貝で、オホーツク海,北海道,日本海

北部,東北海域,常磐海域の砂泥底に生息し、茨城県沖では水深50mから450mの範囲

の海域、特に水深350m付近を分布の中心としています。漁獲量は常磐沖が最も多いで

す。漁期は底曳網漁業(9月~翌年6月)と、沖合かご漁業(7月1日~8月10日)によ

り、ほぼ通年で水揚げが行われています。つぶ貝は、生まれてから殻高10cmに育つま

でに約8年かかると考えられています。このため、県内の底曳網と沖合かごの漁業者は、

殻高7cm以下のものは再放流を行い、資源を持続的に利用していくための資源管理型漁

業に取り組んでいます。今回は茨城県沖のつぶ貝を紹介します。

 

<つぶ貝の種類>

「つぶ貝」と呼ばれる貝は10種類以上あります。大きく分けて「エゾボラ類」と「エゾ

バイ類」の二つに分けられていますが、「エゾボラ類」の中にはエゾボラ(通称:真つぶ)

やヒメエゾボラ(通称:青つぶ)が分類され、「エゾバイ類」の中にオオカラフトバイ

(通称:灯台つぶ)などが分類されます。大型の「真つぶ」は主に刺身で食べられ、市

場でも高値で取引される高価な貝です。小型の「灯台つぶ」と呼ばれる「シライトマキ

バイ」「オオカラフトバイ」は煮付けや焼き物で食べられる事が多いです。

 

●エゾボラ属のつぶ貝

 ①エゾボラ貝(市場名:真つぶ):主に北海道で水揚げされます。殻高20㎝も散見さ

   れるつぶ貝の中で最大の大きさ、そして最大の漁獲量を誇っています。十数年成

   長すると大人でも両手のひらで抱えるほどの大きさになります。つぶ貝の中では

   最高品種で、市場では一番の高値で取引されます。特に北海道・日高の「真つぶ」

   は漁獲量の中心地として全国に知られています。大サイズで1個700円ほどします。

 ②その他に「エゾボラモドキ」「アツエゾボラ」「ヒメエゾボラ」などなどの種類が

   あります。これらは価格が安くなります。北海道では各種のエゾボラ属のつぶ貝を

   使った「焼きツブ」が郷土料理です。

●エゾバイ属のつぶ貝

 ①シライトマキバイ貝:殻高10~15㎝の大型の貝。鹿島灘以北〜北海道の太平洋沿岸が

   生息域ですが、漁獲量が多いのは鹿島灘〜三陸です。灯台のような形から「灯台つぶ」

   と呼ばれる仲間の一つです。まとまった数が水揚げされるため、値段も安め、剥き身

   は地元のスーパーが中心ですが、冷凍の剥き身は県内のスーパーでは定番品です。県

   内では県内産を「つぶ貝」や「ベー貝」と呼称しています。そして、北海道産は「灯

   台つぶ」の名前で並んでいます。

 ②エゾバイ貝(磯つぶ):殻長5cm前後の小型の厚みのある巻き貝です。煮付けたものが

   居酒屋の突き出しなどで提供されているのをよく目にします。北海道・オホーツクに

   多く分布しています。

 ③その他に「オオカラフトバイ」「クビレバイ」など多くの種類があります。

 

<つぶ貝の東京都中央卸売市場の取り扱い量(令和3年)>

つぶ貝は年間を通して流通しています。比較的多く出回るのは6月頃です。取り扱い量は年

間約702トン。出荷量が最も多いのは北海道(約632トン)で全体の約90%を占めています。

続いて東京都(約36.2トン:約5%)、茨城県(約19.2トン:約3%)となっています。

 

<つぶ貝の豆知識>

1.最大の特徴は刺身でも火を通しても美味である

   新鮮なシライトマキバイは、柔らかさとこりこりとした食感、貝本来のほのかな甘み

   が味わえて刺身に適しています。また、火を通しても身が固くなりにくいため、バタ

   ー焼きや甘辛い煮つけ、塩茹でなどでも柔らかい食感や美味しさを味わえます。

2.栄養価と効能

   つぶ貝には、たんぱく質・脂質・カリウム・亜鉛・ビタミンB12などが含まれています。

   その他にはタウリン・ベタインなどが含まれています。タウリンは、貝類に多く含まれ

   る物質で、コレステロールや血圧を抑える作用があります。肝臓の働きも助け、疲労回

   復にも役立ちます。ベタインは、肝機能の働きを良くして、脂質をエネルギーとして代

   謝を活発にしてコレステロールの低下を促します。タウリンが豊富に含まれている食材

   なので、お酒のおつまみなどに最適です。カルシウムや鉄分など、日本人に不足しがち

   なミネラルを多く含んでいるのも特徴です。

3.シライトマキバイ貝は唾液腺の毒量が極めて少ない

   真つぶを代表とするエゾボラ属には、唾液腺に神経性の自然毒(テトラミン)を含むもの

   が多く、唾液腺をしっかりと除かないまま食べると、時として食中毒を引き起こします。

   一方、エゾバイ属は唾液腺の毒量が極めて少ないものが多いので、茹でた貝から抜き出し

   た身は、内臓も丸ごと食べることができます。確かにバイ貝の調理方法は醤油と砂糖で貝

   殻丸ごと煮たものが多く、つまようじなどでくるっと回しながら取り出すと内臓まで取れ

   ます。尚、茨城県のシライトマキバイ貝も唾液腺の毒量が極めて少ないので除く必要があ

   りません。

4.日高は「つぶ漁」の生産地

   つぶ貝全体の漁獲量は北海道が断トツで1位です。その北海道全体では9000トンですが、

   そのうちの約3割(3000トン)を日高が占めています。また、漁獲金額では、北海道全体

   では30億円ですが、そのうちの約4割(12億円)を日高が占めています。真つぶが貢献し

   ています。このように、日高は北海道で漁獲量・漁獲金額ともつぶ漁の第1位を占める生

   産地です。真つぶはその大きさが特徴で、大きいものだと1kgを超えるものもあるといい

   ます。しかし、大きくなるまでには長い年月がかかるそうで、200gに成長するためには、

   8年もかかるといわれていますから、1kgになるには何年かかるのでしょう。

   日高に行ったらご賞味を!

5.つぶ貝のさばき方のコツ

   つぶ貝は加熱するとフタの隙間に鉄串や竹串を入れて引っかけ、クルクル回しながら身を

   取り出す事ができます。ただし、つぶを刺身で食べたり、バター焼きやフライにするには

   生のまま身を巻貝から取り出さなければいけません。まず殻口を上に向け、1段目当たり

   の螺層(らそう)部分にキリなどで穴を開けるか、ハンマーで軽く叩いて殻を割ります。

   中身が取り出せたら「内臓のう」と「身」の部分を切り離し、唾液腺を取り除いてから調

   理します。毒が含まれる唾液腺は乳白色で食道の両脇に1対あります。調理の際に内臓のう

   を切り離した後、唾液腺に切れ目を入れて指や先の細いもので取り除きましょう。つぶは

   ワタと呼ばれる内臓部分もほとんど食べる事ができますが、内臓部分は加熱して食べましょう。

6.選び方

   活けは蓋があまり奥まで入っていないもの。触ると奥に引っ込むような反応のあるものがいい。

   剥き身は粘液が出ていないもの。張りのある、黒い斑点はくっきりしているものがよいです。

7.保存方法

   冷蔵庫で保存します。むき身の場合、ラップですき間なく包み冷凍保存できます。殻付きで

   あれば、つぶ貝を袋に入れて水を張り、そのまま冷凍させます。

 

<シライトマキバイ貝について>

市場ではこの名前では呼ばれません。呼称の一つに「ベー貝」がありますが、Bクラスのつぶ貝

の意味だと思いますので残念です。シライトマキバイ貝の特徴は安価でありながら、刺身や塩ゆ

でにして美味しいことです。新鮮なシライトマキバイは、刺身でも貝本来のほのかな甘みが味わ

えるし、火を通したバター焼きや甘辛い煮つけ、などでも柔らかい食感や美味しさを味わえます。

それなのに評判は今一つで、価格も安価に設定されています。なぜ思ったほどに売れないかとい

うと身に黒い斑点があり、刺身の見栄えが良くない、そして、煮るには大きすぎる、すなわち使

い勝手が悪いらしく、好んで使う料理人がいないようです。更に、「真つぶ」ほどにはコリコリ

していないのもあるのかな。それにしても、このようなうまい貝、もっと高値がついてもいいは

ずです。シライトマキバイが不憫ですし、漁師さんに同情してしまいます。

 

<調理方法>

1.煮貝 :唾液腺を除く必要はない。水洗いして、しょうゆ味で煮る。煮ても硬く締まらず、

     身に甘みがあり、内臓に苦みや渋みがない。値段が安いのも魅力だ。

2.エスカルゴバター焼き: 剥き身を使う。剥き身は軽く塩もみして水洗いするときれいに

     上がる。室温で軟らかくしたバターに、にんにく、刻んだパセリを練り込む。エス

     カルゴ用の皿に剥き身を入れて、エスカルゴバターをのせてオーブンでこんがりと

     焼き上げる。

3.刺身: 剥き身にして足に切れ目を入れて割り、ぬめりをもみ出す。仕上げに塩でもみ、水

     洗いする。できるだけ薄く切り、わさびじょうゆなどで食べる。観音開きにして寿

     司にしてもいいだろう。

4.加工品・名産品:

  • むきつぶ:水揚げされたものを浜で剥き身にしたもの。北海道・東北太平洋側などで盛ん
         に作られて出荷されている。国産だけではなく、ロシア産などもある。これを
         煮たり、焼いたりするのだがとても便利です。
  • ボイルつぶ貝:福島県などでむきつぶを塩ゆでにしたもの。冷凍流通している。このまま
         酢みそにしたり、バターでソテーができて便利なもの。

 

<茨城の夏のつぶ貝漁は沖合かご漁>

7月某日、夕方4時頃、5名で操業する漁船がひたちなか市の那珂湊漁港を出港しました。普段は

底曳網漁業でアンコウやヒラメ、タイ、イカ等を漁獲していますが、7月~8月上旬の約1カ月間は、

沖合かご漁業でつぶ貝を漁獲します。茨城の沖合かご漁業は、約3,600メートルの縄に100個ほどの

「かご」を取りつけた漁具をいくつかのポイントに分けて海底に沈めて行います。それぞれの

「かご」の中には餌として,軽くつぶしたサンマやイワシが入っており、餌におびき寄せられて

「かご」の中に入ったつぶ貝を漁獲します。

船上に引き上げた「かご」を開けて、大きな金属製の選別機でふるいにかけます。茨城県では、

殻長7センチメートル未満のつぶ貝については放流することにしています。

このように、「かご」の引き上げ、漁獲物の選別、次の漁のための新しい餌との入れ替えといっ

た一連の作業を、波でうねる船上で5人が息を合わせて進めていきますが、100個の「かご」を引

き上げるだけでも2時間近くかかります。全ての「かご」からつぶ貝を取り出し終わると、「か

ご」を再び海底に沈め、船を次のポイントへ移動させます。この日、漁を終えて那珂湊漁港へ戻

ったのは翌朝の5時頃でした。この日は今季いちばんの大漁で、船上の5名の表情はうれしそうで

した。なお,茨城県において沖合 カゴ漁業が本格的に行われたのは1992年以降です。

 

<鮮度へのこだわり>

漁獲したシライトマキバイ貝は、直ちに低温となっている船倉へ運び、かごの上に湿った毛布を

掛けて鮮度を保ちます。つぶ貝の黒い斑点模様は、鮮度が落ちると、消えていくそうです。早朝

6時、漁船が帰港すると、直ちにトラックに次々と積み込まれます。船が戻ってから、およそ15分

でトラックは取引先へと出発していきました。鮮度を保つスピード感がここでも垣間見られました。

 

<つぶ貝が買えるお店・食べられるお店>

那珂湊漁協加工直売所 魚食楽(さくら)
 水揚げされたつぶ貝は、岸壁からわずか数メートル先の「魚食楽(さくら)」の加工場で活貝のま

 ま加工されます。よく水洗いをしたつぶ貝を沸いた湯に入れ、再び沸騰するころには加工場につ

 ぶ貝のいい香りが漂います。茹で上がったつぶ貝の身を殻から取り出すお母さんたちの手つきは

 職人のよう。この身を醤油などで煮付けた「つぶ貝味付」は「魚食楽(さくら)」の定番商品にな

 っています。また、地元のイベントでは他にも「つぶ串」や「つぶ貝ごはん」など様々な商品を

 販売しており、こちらもかなりの売れ行きだそうです。

 

店頭で茨城の「つぶ貝」を見つけたら是非ご賞味あれ! 

 

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