
ご近所に住む老人仲間の3人が永さんの庭でお茶を飲んでいます。最近の関心ごとはやはり健康の
こと。
永 : 前期高齢者の仲間入りをした途端、体の変調を感じ始めたんだけど、不思議だな。
美井: 何かあったのか?俺は大分前から糖尿病だ。昔からの習慣で、食事のときは最初にひと箸
分のご飯を口に入れて、よく噛んでから、飲み込んでいたんだ。でも今は、食後の血糖
値の上昇を緩やかにするために、先ず野菜を食べなさいと口やかましく言われるんだ。
ところが、これだと美味くないんだよ、メシ全体がね。今でも最初に食べる一口のご飯の
美味しさが忘れられないね。昔のやり方に戻りたいな~。
志位: 糖尿病の人はみんな同じことを言っているね。僕は高血圧の薬を飲んでいたんだ。過去形
で「いたんだ」と言ったのには理由があって、友人から冬場になると血圧が下がるから、
薬は必要ないと自分の実体験を話してくれてね。当然、個人差はあるだろうけど、僕も
今月から薬を止めてみることにしたんだよ。今のところ、血圧は正常で薬いらずの生活
をしている。これまで何年も毎日薬を飲み続けていたのは、一体何だったんだろうね。
ただし、温かくなったらまた飲まなきゃいけないんだろうけど、薬を飲むストレスがな
いのが嬉しいよ。
永 : その話は高血圧の人にとっては朗報だね。季節と血圧には直接的な関係があるんだね。
僕はこれまで病気知らずの健康体が自慢だったけど、ついに病院に行く羽目になったん
だ。理由は痛風だよ。発症した時は、本当に痛かったな。
美井: 糖尿病と痛風は食事制限があること、色々な合併症を引き起こす要因になるという点では
似ているよね。糖尿病で痛みを感じることは無いけど、痛風は痛いらしいな。どんな様子
だったんだい?
永 : 参考になるかもしれないから詳しく話すね。10日ほど前のことだ。午後になって右足の親
指の付け根に少し痛みを感じ始めたんだ。それから徐々に痛みが強くなって、夕食後には
痛みのある部位が腫れてきて、歩くことにも支障が出るようになった。そしてその夜、痛
みのため夜通し苦しむことになったんだよ。翌朝にはかなり赤く腫れていた。その時の足
の状態がこの写真だ。
永さんは痛む足を引きずりながら、病院の受付を済ませ、案内された整形外科で若い医師の診察を
受けました。指示通りに血液検査やレントゲン撮影をして、再び診察の順番を待ちます。しばらく
して医師に呼ばれました。
医師: 検査結果が出ました。骨には異常がありません。やはり尿酸値が高いですね。痛風ですよ。
処方した鎮痛薬で痛みを抑えて様子を見ましょう。今日からはプリン体を多く含む食材を
制限してください。この紙に詳しく記載してありますから、よく読んで実行してくださ
い。来週、もう一度来てください。再度血液検査をします。
永 : ということで、 処方された薬を飲むと直ぐに痛みは軽くなり、同時に腫れも引いてきたん
だ。そして、昨日のことだ。一週間後の検査の結果、尿酸値はまだ高いからプリン体の代
表格のビールは控えるように指示されただけで、通院は放免になった。
美井: その程度でよかったな。でも俺と同じ食事制限の仲間入りをしたってことか。
志位: 痛風って、どんな病気なんだい。詳しいことは知らないんだ。
永 : 一言で言うと血中に尿酸が貯まりすぎると尿酸がナトリウムと結合して結晶をつくり血液中
に出てくる。すると白血球がその結晶を異物と認識して攻撃するんだ。その結果、激痛を
伴う関節炎が生じる病気だ。写真では右足親指の付け根が腫れているだろう。足の関節に
症状が出る人が70%だそうだ。僕もその一人と言うわけだね。実は医師が触診もせずに一
別しただけで、検査に行かされたので、それでいいのかなと疑問に思ったけど、なるほど
とうなずけたよ。
美井: 尿酸とは細胞の新陳代謝に伴って出てくる老廃物だから、生きている間はつくられ続けるん
だったね。
永 : そうなんだ。人間はその尿酸を体内で分解処理できない。通常であれば、一日につくり出さ
れた尿酸量とほぼ同じ量の尿酸が尿、汗、便で排泄されるけど、このバランスが崩れると
尿酸が蓄積されるようになってしまう。尿酸値は100ml中70mgを超えると「高尿酸血症」
と診断されるんだ。
志位:「尿酸値が高いだけであれば、人体に特別悪いことはない」と聞いたことがあるぞ。
永 : 今は高尿酸血症が長く続くと、痛風、腎機能障害、尿路結石を誘発すること,それだけでは
なく高血圧・心血管障害・メタボリックシンドロームとも非常に関連が深いことが分かっ
てきたので、高尿酸血症は糖尿病と同じくアンチエイジングの大敵なのだそうだ。
痛風だけどね、高尿酸血症の人でも発症するのは1割ぐらいなんだって。痛風発作の激痛は
「尿酸が体に溜まっているよ、治療が必要だ」という神様の警告だと思いなさいと医者が
言ってたね。
美井: 痛風になったから高尿酸血症が見つかったんだな。ところで、プリン体が肝臓で分解されて
尿酸が作られるんだよね。では、そのプリン体が体内でつくられる仕組みは?
永 : 1つは細胞の新陳代謝により古い細胞が分解されたときに産出される。2つ目は体内の様々な
物質を原料に「ATP(アデノシン三リン酸)」のエネルギーを利用して新しいプリン体がつ
くられる。3つ目は一旦分解され尿酸になる前に、まだ利用可能と識別されたものがプリン
体として再利用されるんだ。プリン体は8割が体内でつくられ、2割が食べ物由来だそう
で、食事制限の効果はどれほどあるか疑問に思っているけど、食品リストを医師から渡さ
れたんじゃ、それに従うしかないね。ビールや魚の干物は禁物だって、これがつらいよ。
永さんへ、
痛みはなくなっても、高尿酸血症があれば知らないうちに腎臓や血管などへの尿酸沈着は進行して
います。ですから、必ず尿酸値を下げる治療と正しい生活習慣を続けなければいけません。治療は
一生必要なんですよ。放置していると、いずれまた、痛風の発作が起こります。そして、次の段階
へと進行していきますよ。永さんは最近運動不足ではありませんか?運動も尿酸値を下げるのにと
ても効果的です。昨年、縄跳びを購入したと言っていたけど、使っていないんじゃないですか?
飾っておかないで活用してください。
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