ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

カワセミのつぶやき

2018-01-29 07:39:35 | 日記


地元の公園内にある池は長年、冬季の間、水枯れをさせていましたが、ここ数年、
水張りが行われていました。なぜ水張りをするようになったのかわかりませんで
したが、先日この池に錦鯉が泳いでいる姿を見て納得しました。錦鯉が泳ぐ池に
するために水張りで池の養生をしていたようです。
実はこの水張り養生の期間に、池の中の環境が大きく変わりました。池には冬季
でも餌となる魚やカエルなどが活動するようになり、今年になってこの池を縄張り
とするカワセミのカップルが住み着くようになったのです。
暖かなある日、老夫婦が池にやってきました。すでに池の周りでは数人のカメラマ
ンが立派な三脚をセットしてシャッターを切っています。池を見ると今日はカワセミ
のカップルと大きなアオサギがいました。暖かな日差しの池面に飛び込むカワセミ
たちの仕草を見ていると癒されます。そんな時、池に張り出した木の枝に並んでと
まっていたカワセミを見ていたら、彼らの会話が聞こえてきました。

オス:おいおい、見てくれよ。

メス:なに?

オス:あの海老、生きているかな?生きているように見えるけど、さっきから全く動
   かないんだ。死んだ海老はお腹をこわすからな。ちょっと、確認したいんだ。

メス:どこ?あれね。

オス:あの海老、生きてるよな?

メス:あれは生きてないわね。

オス:生きてるだろう。

メス:生きてないわよ。全く動かないでしょう。死んだ海老よ。生きてるわけがない
   わよ。

オス:いや、やっぱり生きてるよ。見てごらんよ。ひげを、こう、ぴーんとはねて・・・
   たしかに生きてるよ。

メス:あれは死んでいるわ。間違いない。

オス:生きているって。俺が先に見つけたんだから横取りするなよ。

メス:やめておきなさいって。

そこへアオサギがやってきました。

サギ:おいおい、お待ち、お待ち、お前たちは、なんだって喧嘩してるんだ。

オス:おや、アオサギさん。いまね、こいつが、あそこにいる海老を死んでいると言
   うんだ。髭がピーンと張っているから生きていますよね。アオサギさんから見
   て、どう見えます。生きているでしょう?

サギ:ありゃ~、生きちゃいないなあ。

メス:そうですよね。やっぱり、私の見立て通りだったでしょう。生きてるわけがな
   いのよ。ねえ、アオサギさん、死んでますよね?

サギ:いや、死んでもいないな。

オス:え~、生きてなくて、死んでもいないというと、どうなっているんです?

サギ:ありゃ、患ってるな。

オス:患ってる?

サギ:ああ、よくごらんよ。あれは池床で病になって寝ついているんだな。病は伝染
   するから、私が他の魚たちに病が広がらないように取り除いてあげよう。

そう言うと、長い首を水に突っ込み、海老をくちばしでつまむと、のどの奥にのみ込
んでしまいました。

池の周りは今日も平和です。水ぬむる春を待つ冬の一日の出来事でした。
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