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ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

蜘蛛の子を散らしてみました!

2020-06-01 07:34:09 | 日記


大勢の人があっという間に四方八方に散って逃げる様子を表現する慣用句の比喩、「蜘蛛
の子を散らす」は言葉としてはご存知でしょうが、本物の蜘蛛の子は本当に言葉のイメー
ジ通りに四方八方に逃げるのか?それとも特徴のある一定の法則性が見られるのか?
実際の現場を見た人は少ないと思うのです。私は体感しましたよ。答えですが私の実感と
しては、これほど慣用句のイメージと実態の現象がピッタリと一致するものはないという
ものでした。

この時期になると田んぼの若い稲はかなり成長していて、しっかりと根付いており、多少
の雨風ではびくともしない逞しさがあります。そんな田んぼの新緑を見ながら歩いていて、
ふと側帯の草むらに目をやると小さな黒い塊が見えました。何と、それが何の支えもなし
に浮かんでいるように見えたのです。

「この黒い物体は何だろう!空間に浮いているように見えるぞ!」
「老眼鏡か、拡大鏡が欲しいが、散歩には持ってこなかったな。でもこれは何だろう。」
「黒い塊の形としては、熟し過ぎて黒くなった野イチゴの実のように見えるけど、かなり
 大きいな。でもどうやって、こんなに大きいものが浮いているのかな?」
「熟した野イチゴの実なら重さや、硬さを感じるものだが、それが感じられない。
 何なのだろう。」

私には見えないけれど蜘蛛の糸にでも引っかかって、浮いているのだろうとはすぐに想像
しましたが、目を皿のようにして見つめ直しても、老眼の目では蜘蛛の糸は全く見えませ
んでした。背景の緑の葉が邪魔をしているのかもしれません。宙に浮いた黒い塊に興味を
持った私は、軽く人差し指の腹でその塊を突っついてみることにしました。浮いている理
由が分かると思ったのです。この時はまさかの現象が目の前で展開されるとは想像もして
いませんでした。

「軽く触ってみよう!ほい!」
「わ~!軽く触れただけなのに、塊が一挙に崩れて、粒粒の実が一つ一つバラバラになっ
 て、それが四方八方に散らばって動いているぞ!それにしても綺麗な広がり方だな。
 おっ!一斉に動きが停まった。」
「塊の正体は蜘蛛の子だ!蜘蛛の子たちは袋の中に入っていて、袋を破いて外に出てくる
 ことは知っていた。指先が触れたから袋が破れたのだろうけど、きれいに波紋が広がる
 ように四方八方へ散って逃げるとは感動だ。まさに「散らす」という慣用句に使われて
 いる言葉のイメージどおりだ。魚の誕生のように卵から時間差で一匹ずつ飛び出してく
 るのとは違うのだな。」
「どうやら私は指先で強制的に蜘蛛の巣の袋を破ってしまったようだな。」
「分かってしまうと何のことはないが、よくぞ四方八方へ、一定の速度できれいに広がる
 ものだ。それも一斉に同時に止まるところも面白い。まるで小学生の組体操で中央に集
 まった子供たちがホイッスルの合図で、一斉に四方八方に広がって自分のポジションま
 で走っていって、そこでしゃがみこんで止まる光景が連想されるな。」
「それにしても子供たちは動きをすぐに止めてしまったな。まあ、動いてくれたおかげで
 蜘蛛の糸が分かるようになった。これで浮いている理由が分ったよ。宙に浮いてるよう
 に見えたのは新鮮な蜘蛛の糸で、その糸の透明度が非常に高かったからなのだろうな」

蜘蛛の子たちは指先の刺激で四方八方に分散して逃げましたが、10㎝にも満たない移動
距離で動かなくなりました。私はもう一度再現したくなって、蜘蛛の子が塊となっていた
中央部分の蜘蛛の糸をもう一度軽く指先で触れてみました。

「子供たちがビックリして又動いた。この広がりだよ、この広がりだ。きれいな紋様だ
 な!一匹、一匹動く距離が違うのだろうな。波紋のようなリンク状の塊にはならない
 んだね。」
「おっ!又、全員が同時に止まったぞ。」
「そうか!この動きは魚を捕る投網を投げた形に近いかな。」
「驚かせてごめんよ!もう触ることは止めるからね。」
「黒い塊は君たちだったのだね。正体が分かってよかった。」

私は蜘蛛の子供たちが袋の中で固まって、外へ出るチャンスを待っている姿を初めて見
ました。子供たちが入っている蜘蛛の巣だったとは全く思いも至らなかったので、つい
手を出して彼らの袋を破ってしまったようですが、逃げ出した子供たちは十分に成熟し
ているように見えましたので、袋に戻れなくてもしっかりと成長してくれるでしょう。
でも、ごめんなさいね!

私は散歩道で「蜘蛛の子を散らす」現場に偶然出会い、何十年振りかで、この慣用句が
脳裏に浮かび、蜘蛛の子たちとの出会いを楽しみました。

今回の発見と体感は長くなったコロナ自粛生活の中に、ひと時の潤いを与えてくれた。


※帰宅後に調べて見ましたら、蜘蛛の卵のうが破けた後も、子供たちはしばらくの間、
 全員が集まって塊になっていることがあるそうです。現場では指先で袋を破いてしま
 ったと思い込んでいましたが、実は卵のうを破ったのではなくて、卵のうから出てき
 た子供たちが一時的に寄り添っていた集団の塊を触ったのかもしれません。今となっ
 てはどちらだったのか分かりません。

※写真撮影はピンボケで大失敗、そこで画像はネットから借用しました。
(蜘蛛が苦手な人がいたら、ごめんなさい!)