

妻:新年になって、もう10日以上が過ぎちゃったね。
夫:年々、時がどんどん速く過ぎ去っていくように感じるよ。老化現象かな?
妻:アラッ!去年も同じ会話をしたような気がする。ア~ァ、いかにも老夫婦の会話
だわ。
夫:実際、老夫婦なんだから仕方ないだろ。
妻:話題を変えましょうよ。今年は初日の出を拝むことができなかったけど、年末に行
った伊勢では素晴らしい太陽を拝めたわね。
夫:そうだ。まだ暗いうちに外宮に到着して、内宮・猿田彦神社・佐瑠女神社・月読宮、
さらに二見ヶ浦まで、随分と欲張ってお参りしたな。
なかでも、内宮の宇治橋手前で鳥居の間から差し込む朝日を拝んだ時は感動した
ね。ありがたさに思わず手を合わせたよ。
妻:日の出には間に合わなかったけど、あとで、あの日が冬至だったって気付いたのよ
ね。
夫:2007年にお参りした時は外宮で「第二次お木曳」の行事に偶然出会って、ご縁に
感謝したものだ。
今回は10月に式年遷宮を終えたばかりだから、人出も多かったね。
妻:鳥居越しの朝日も素晴らしかったけど、私の印象に残っているのはもうひとつの
体験。新しい御正殿を参拝したあと、「こちらから古殿をまわっていかれるといい
ですよ。」という衛士さんの案内に導かれて、3月には解体されるという古殿の千木
や鰹木を塀越しに拝見しながら人の流れに従って進んだのよね。
そして、旧社殿の裏を過ぎ、新社殿の真裏に着いた時、突然、太陽の光が強く射し
て来て、思わず「うわ~、あったか~い!」って声に出しちゃったこと。覚えてる?
夫:ウン、少し先へ進んでいた僕は、君の声で引き返したよ。不思議な温かさだったね。
妻:でしょ。私はいつも庭に出て朝日を拝んでいるけど、あの時の光は特別な光だと感じ
たわ。身体全体がフワ~ッと温かいものに包まれて、心地よさというか、安堵感に
心が満たされるのを実感して、しばらく動けなかった。いや、動きたくなかった。
そのあとは感謝の念がフツフツと湧き上がって、「ありがとうございます!」と
申し上げたの。
夫:かなり長い間、君はあそこに立ち止まっていたけど、そんな体験をしてたのか。
妻:伊勢から帰って、大晦日にカレンダーを新しいものと取り替えた時に、「1月1日の
初日の出を拝む人はたくさんいますが、12月31日の夕日に手を合わせる人はいません。
感謝することより、要求する祈りばかりです。」という文章が目にとまったの。
そこで、今年は「太陽と祈り」について勉強するつもりよ。
夫:ちょっと難しそうだな。え~と、僕はね・・・ナイショ。
妻:なんちゃって、まだ何も考えてないでしょ。
夫:へへへ、バレたか。
妻:「バレる」って、なんだか変な日本語よね。
夫:そうだ!今年の僕のテーマは「変な日本語探求」にしよう。
妻:面白そうね。お互いにもっと読書量を増やして、頭脳の老化防止に努めましょうよ。
夫:そうだね。結局、老化の話に戻ったよ。
妻:あら、嫌だ。でも今年一年、無畏に過ごさないで済みそうじゃないの。学ぶのに年齢
は関係ないからね。でも夢中になって本を読んでたら、ますます時が経つのを速く
感じちゃったりして・・・
夫:おいおい、会話が堂々巡りだ。やめて、本でも読むか。