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ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

大岩の悩み

2012-05-24 22:17:19 | 日記
標高300mほどの山の一角に突き出た大岩には悩みがありました。

大岩:周りの岩山たちには木が生えているのに、どうして僕のところ
   には木が生えてくれないのかな? 
   雨が降ったら傘になり、雪が降っても屋根になってくれる木が
   欲しいな。

そこへ裾野に広がる樹林から風が駆け上がってきました。

風: 大岩君、こんにちは! あれ、元気がないね、どうしたの?

大岩:周りの皆と同じようにふさふさとした木が欲しいんだよ。

風: 僕はふさふさした木は嫌いだよ。だって走り抜けるのにじゃま
   なんだ。
   だから木の無い君のところを走るのが一番好きだよ。

大岩:僕は君が嫌いさ。君は僕が少しずつ貯めていた土を、吹き飛ば
   してしまうじゃないか。
   だから僕には木が生えないんだよ。僕は怒っているんだぞ!

風: そんなに怒らないでおくれ。僕以外にも君のことを大好きな人
   間が一杯いるんだよ。
   ほら!誰かやってきた。彼らの声を聞いてごらん。

一組の家族が大岩によじ登り、楽しそうに話し始めました。

家族:今年もこの大岩にやってくることができたね。いつ来てもここ
   からの眺めは最高だ。
   足元には樹林が広がり、向かいの山の頂上にはお城が見える。
   それに大きな川も見えるし、振り返ると広々とした平野が一望だ。
   何より木々を渡ってくる風がさわやかで、気持ちが良くて元気が
   湧いてくるね。

その家族はそれぞれのポーズで写真を撮って帰って行きました。

風: どうだい、聞いたかい? 君は多くの人を幸せにしているんだよ。

大岩:そう言えば、僕の頭に座る人たちは皆、同じことを言っていたね。
   さえぎるものがないから、右も左も、前も後ろも、それに足元も空
   も見えるんだね。

風: そうだよ。この山で360度見渡せる場所は君の上だけなんだよ。

大岩:なるほど!役に立っているんだね。もう悩まない。
   僕は君が好きになったよ。
   又、来てね。

風: もちろん来るさ。僕もわかってもらえて嬉しかったよ。それじゃ、
   バイバイ!

大岩:バイバイ!君のお蔭で悩みが無くなったよ。今のままの僕でいいんだね。
   ありがとう。