すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

窓から歌を

2017-01-27 00:30:58 | 短歌
八時半のパンとパンとに挟まれて左のひとのほうが甘そう

「右袖にアオバハゴロモとまってます」言えないままで向日町駅

     乗車駅不明のアオバハゴロモは降りていった。

あたたかいものは入っていないのに膝にのせたらねむたい鞄

     きょうは直翅目をみるという意識で川沿いを歩く(と、見えてくる。)

葛の葉の窓から歌を(邯鄲の)夢のながさにふるえるうたを

近寄ってわたしの影でのみこんだ バッタとバッタの影をいっしょに

そこにいることはわかっているんだと葉裏のコバネイナゴに告げる

まちがえたわけではなくてほんとうに今日咲きたくて秋の菜の花


(「未来」769号 2016.2月)



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キマダラカメムシ

2017-01-27 00:29:42 | 短歌
親に似ていないキマダラカメムシのこどもはひんやりと苔を踏む

    キマダラカメムシの幼体は黄色を持っていない

ビロードのやわらかい脚さようなら石榴の粒を埋めた背中も

あっさりと親に似てゆく虫を見るワタシハソンナフウニナラナイ

Amazonの箱にかすかな波音を響かせて着くオーシャンドラム

海の切れ端をさがした 歌碑よりも子猫の多い歌碑公園で

秋に追いつけ マルバルコウソウの縷をおおきく書いて覚えなおして


(「未来」768号 2016.1月)


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蔓草の道

2017-01-27 00:29:02 | 短歌
駅前のオブジェは雲量計になるかようびすいようびもくようび

蔓草の蔓のはしっこさまよってこの筆跡はだれでしたっけ

ゆらゆらはさよならのことメヒシバは風にヒドラは九月の水に

アレチウリしなやかな蔓わたくしはいきものですがまきつきますか

じっとしていたらいつかは蔓草のどれかひとつが触れにくるから



(「未来」767号 2015.12月)

写真の草は次回登場するマルバルコウソウ。
このあたりではアレチウリ・クズと三つ巴のたたかいをくりひろげていました。





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ツバメのねぐら

2017-01-27 00:27:56 | 短歌
猛暑日の「社会実験バス」に乗り冷えきってみるという実験

葦原はまだみえなくて葛の波こえていったらツバメのねぐら

たくさんの声すれちがう八月のウグイスだけを聞きわけている

鉄塔はまるい夕陽をとじこめてほおずきになる ここにいなさい
   
ツバメツバメつぎつぎ降りてコウモリの影だけ踊りはじめたら夜


(「未来」766号 2015.11月)
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