すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

「水中メガネ」(30首連作)

2007-08-22 18:32:24 | 短歌
短歌研究新人賞佳作(やすたけまり名義で9月号に5首掲載していただいてます。)「水中メガネ」の全貌です。

佳作ということは、システム上、6人の選者の先生のうちどなたかお一人に見ていただいた、ということで……それがどなたかはわからないので、どっち向いてお辞儀したものかわからないのですが(笑)とりあえずあらゆる偶然と必然といつも応援してくださる皆様に感謝です。(ふかぶかと礼)
また、全員に見ていただけるところを目指して(目指すのか?)がんばりますっ。みなさんもごいっしょに~☆




     水中メガネ

カメノテがやんわりひらく潮だまり波はこのつぎここまでとどく

満月の光をつめたうきぶくろ波打ちぎわに着いた花束

はじめての海の記憶につながってこの桟橋はかすかにきしむ

毒のあるさかなを素手でつかまえてしらないひとにしかられました

毒のあるさかなは夜しか見えませんここにいたけど今はいません

毒のあるさかなは毒があることを知らないわたしを刺さなかったよ

水中で目をひらいたら底にある白いものだけまるくにじんだ

飛ぶような姿勢でおよぐ真下ではだれかがそっと手を振っている

人魚姫の姉さんたちのまねをしてボートについてゆくわたしたち

枯れ枝をさぐるつまさき 母蝉は卵をのこす場所をえらんで

地図にない松の林で幾万の蝉の卵は樹のうえにある

雨あがりしずかに外に出たあとで地面に降ってくるこどもたち
 
「まだ乗れる」ボートから呼ばれるけれどちいさなふねはゆれるからいや

「海ボウズだらけだ」ふねにしがみつくおおきななみはゆれるからすき

ボートから腕を伸ばして先輩が水中メガネでくみあげる海

海面に吸われていったたからものまきちらされたひかりにまぎれ

あきらめる表情を見てしまわないうちにさかさのトビウオになる

ゆびさきがガラスに触れた 来るはずじゃなかったここは金色の砂

水を蹴る 体育館の天井の白いあかりをめざすみたいに

水面があんなにとおいわたしまだ100%水のなかです

今どこを見ているでしょう先輩は100%水のそとです

名を呼んでみればよかったくるしくて胸の空気を出しきるときに

素潜りの名人だねとわらわれて夏合宿はまもなくおわる

うまれでた日にもつかのま見た空の記憶をなぞり落ちてゆく蝉

ジイジイとあばれる影をすくいとる 飛び立つ  落ちる とびたつおちる

あたたかい浅瀬に立って鳴く影と鳴かない影にかこまれていた

この影はぜんぶ生きてる とおくからゆがんでとどくひかりのなかで

生きているものみんな影 とおくからゆがんでとどくひかりのなかで

干したTシャツをはずせばくるくるとねむりにおちるせんたくばさみ

「二学期になったらここで詩のノートみせてください」風の桟橋

コメント (8)
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50首ポイント

2007-08-15 17:38:12 | すぎな日記
生きてるよ~(ああ、祭囃子がまだとおい……)。

けむけむはガラス越しに海鼠さんと語り合いました。

やっと後半です。
つぎは……

051:宙
052:あこがれ
053:爪
054:電車
055:労
056:タオル
057:空気
058:鐘
059:ひらがな
060:キス
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050:仮面(おとくにすぎな)

2007-08-15 17:35:25 | 題詠100首2007
きみが忘れてる黄金仮面なら学級文庫でわらっていたよ
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049:約(おとくにすぎな)

2007-08-15 17:34:15 | 題詠100首2007
告白は25gぴったりで要約するとなにもなくなる
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048:毛糸(おとくにすぎな)

2007-08-15 17:32:55 | 題詠100首2007
手にとった毛糸は黒の「ジェームスディーン」名づけられないものを編みます
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047:没(おとくにすぎな)

2007-08-15 17:31:34 | 題詠100首2007
海だった場所をかかとで蹴ってから「水没しちゃった村だってある」
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046:階段(おとくにすぎな)

2007-08-15 17:30:25 | 題詠100首2007
階段のまんなかへんで読み終えたとたんに消えた小人のなまえ
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045:トマト(おとくにすぎな)

2007-08-15 17:29:17 | 題詠100首2007
特訓中「うさぎのダンス」は句跨りトマト/トマトト/マトトマ/トトマ
コメント (2)
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044:寺(おとくにすぎな)

2007-08-15 17:27:38 | 題詠100首2007
じいちゃんのあくびまじりのシンデレラ お寺の鐘が十二回鳴る
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043:ためいき(おとくにすぎな)

2007-08-15 17:26:13 | 題詠100首2007
ためいきでどこかへいなくなるくらいちいさな蜘蛛と住んでいる部屋
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