すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

題詠100首

2006-10-12 12:58:31 | 題詠100首
完走しましたので、一覧をアップします。
001:風     てのひらは風にとびこみポケットで育てた蝶をしずかに放す
002:指     ぴこぴこん方向指示器まねしてる人とこのあと南へ曲がる
003:手紙     手紙には蝙蝠マーク今すぐに雨のふらないところに隠せ
004:キッチン  はかるものはかられるものはかってはいけないものが囲むキッチン
005:並     向き合ってたった二人で七並べやってるような会話じゃないか
006:自転車   のら犬のクロ・自転車に乗れるきみ・乗れないぼくの順に夕日へ
007:揺     閉めきったアルミサッシの外側にはりつく奇跡揺れる優曇華(うどんげ)
008:親     からからのふうせんかずらの実のなかでとっくに親をはなれてる種
009:椅子    「車載用座位保持装置」キャロットはかわいい赤い椅子なんだけど
010:桜     坂道でわたしを追いこしていった桜前線 歩くはやさで
011:からっぽ  からっぽのビオトープにも雨が満ちヤゴが生まれてきたよさよなら
012:噛     いくつかは苦い願いも噛んだのち獅子のあたまは君に抱かれる
013:クリーム  「君だってころんだじゃない」無事だったソフトクリームとおくまで雪
014:刻     使い分けできないひとがほそい線ばかりで刻む版画のウサギ
015:秘密    ひとんちの庭にうずめたロウネンドひとつ秘密の場所がほしくて
016:せせらぎ  せせらぎの位置を示した地図ひろげ(カワセミはどこ?)見つめつづける
017:医     老医師とナースにひとつずつあげる今朝はピンクのだまし舟です
018:スカート  全円のフレアスカートくるっくる来ない待ってるてるてるぼうず
019:雨     あの雨に透明な傘さしてればあと3センチ顔上げてれば
020:信号    ふりむかないで走れたよ信号のカッコーカッコーもうきこえない
021:美     抜け道は美術室からつづいてるキャップはずしたみどりの奥へ
022:レントゲン レントゲン室のひかりにさらされるこども鉛のエプロンで待つ
023:結     山木蓮うたい出せその手をうえに結んだら春ひらいたら風
024:牛乳    牛乳にはちみつ入れるあたためるあまえたくないのに哺乳類
025:とんぼ   天指せばとんぼひとさしゆびに来るあの川でなら待っててもいい
026:垂     あのひとのいない深みで想ってる海には海の垂直分布
027:嘘     エイプリルフール最後の一瞬に嘘にもみえるメール送るね
028:おたく   とおくまでいってきてほしいひきしおたくした文字は消してみちしお
029:草     雪を呼びそうな口笛吹いて呼ぶ日向枯草色の子犬を
030:政治    物語透ケル箇所アリ5時間メ政治経済資料集ニハ
031:寂     寂しがり屋さんで買ったクリップがさみしがっててくれるからいい
032:上海    これ以上海月の呼吸見ていてはだめだひみつもほどけてしまう
033:鍵     月夜にはふらっと開けてみる扉白い鍵ではなく黒い鍵
034:シャンプー あわだつととうめいじゃなくなっていくラムネのびんのいろのシャンプー
035:株     稲株の列はしずんでゆくところペンペン草とレンゲの波に
036:組     キャラメルの煉瓦でおうち組み上げてオオカミ用のスープを煮よう
037:花びら   はりつめた赤紫が壁を押す細胞で花びらは重たい
038:灯     まるい灯をまたひとつ竹に浮かべて二月の銀河つくりつづける
039:乙女    おでこから風につっこむ自転車は乙女座うさぎ年のおとうと
040:道     とんちんかんのとんは道頓堀のとん かなしい朝にラジオは告げる
041:こだま   行ったきりになどなれない場所へゆくこだまの窓にもたれたままで
042:豆     しびびびと歌えなかったさやだけが正体あかす烏野豌豆
043:曲線    先生の声(曲線をかくときは息しちゃだめだ)おぼえています
044:飛     屋上の熱を背中にうけとめて向き合え空を飛ぶものたちと
045:コピー   「出発は窓から」コピーロボットは鼻先白くすりきれた熊
046:凍     凍らせた麦茶のなかにもっている ゆがんで溶ける水平線を
047:辞書    意味なんて書かれていない逆引きの辞書にしずかな海をみつけて
048:アイドル  脚本に合うアイドルが足りなくて登山部員を借りにゆく秋
049:戦争    「勝」の字を名に付けられた。山羊の乳じかに飲んでた。叔父の戦争
050:萌     うらにわの日はいつまでも明るくて萌える崩れるたんぽぽのくに
051:しずく   空中でしずくを止める実験は次の雨の日二時間めにね
052:舞     空き缶にスーパーボールほうりこみてんてこ舞のうたをはじめる
053:ブログ   ドクダミは不屈のハーブログハウス回って森になってゆく道
054:虫     あたまむし(頭の高さに飛ぶ羽虫)うわわわうわう集団下校
055:頬     お醤油が入っているの?右頬と目をまんまるくしてカンロ飴
056:とおせんぼ 蜘蛛の糸切って二秒後とおせんぼされてたことに思い当たった
057:鏡     手鏡をかたむけながら順番に照らす日陰のオオバコの列
058:抵抗    梅雨明けの空気抵抗無視してもよければきみに手紙はとどく
059:くちびる  「そのリップクリーム貸して」と言うくせに「はいどうぞ」なら困るくちびる 
060:韓     すきまから光こぼれてすきとおるみどり韓国海苔の木もれ陽    
061:注射    空白の原稿用紙ひとマスは注射のあとにはりつけたまま
062:竹     光らない一本の竹ひんやりとだきしめている きみのちかくで
063:オペラ   山猫のひろげたオペラ台本にあつまってくる黄金(きん)のどんぐり
064:百合    百合鷗冬の視界を埋めつくせ この橋の名を知らないひとの
065:鳴     鳴き声を比べられる日カナリアで満室となる駅前ホテル
066:ふたり   ふたご座と射手座みたいに向き合ってふたりしずかはほんとはひとり
067:事務    不機嫌に半音下がりFAXはあなたのいないとおい事務所へ
068:報     「おはよう」を10時の通学路で言う 暴風警報解かれたばかり
069:カフェ   窓越しに地層の見えるカフェに来てあのバンダナは化石になった
070:章     「印章の店」に犇めく夕焼けにたったひとつのなまえをさがす
071:老人    庭園をあるくふたりの老人はかわりばんこに梅の名を呼ぶ
072:箱     サイコロキャラメルの箱をころがすよ「5が出る」または「きみが来る」まで
073:トランプ  うらがえすトランプみんな蔦のなか種もしかけもねむる小鳥も
074:水晶    水晶の砂ひとすくいこぼれてた十一才の夏の宿題
075:打     何にぶつかったのきみはまっしろな脚に打ち身の星雲を飼う
076:あくび   動物園じゅうのあくびをゆらゆらとあつめて雲にうまれたつばさ
077:針     九時二分ゆびさす針を袖口にアップリケして見送りにゆく
078:予想    罫線でぱきぱき囲む指導案 ぼくらもかつて予想されてた
079:芽     きみの手とぼくの手に同時に触れたこのドングリはきっと芽を出す
080:響     困るよね 花火の響きだけきいて書いた手紙だ、って言われても
081:硝子    海水と無数の傷に包まれたまるい硝子のとなりにいるよ
082:整     うしろ足がしびれた、などと言うひとが毛布整えている前足
083:拝     一度しか来ないからDMの中「山ねこ拝」をみのがさないで
084:世紀    「二十一世紀」と名乗りそこなって新種の果実ひっそり熟れる
085:富     富士山の赤いかけらがしずむ場所のぞきこんでるきみとカワセミ 
086:メイド   さみしくて模様をつけたとおい日のハンドメイドの土器のおもてに
087:朗読    月光はまだ肺のなか 朗読のマイクの向こうもう暗くなる
088:銀     林から銀竜草のひとむれを連れ出したので五月の嵐
089:無理    無理数に無理数を足すそれぞれがそのままでいるそういう答
090:匂     本棚のなかで植物図鑑だけ(ラフレシア・雨)ちがう匂いだ
091:砂糖    お砂糖はかきまぜないでシュリーレンシュリーレンって陽炎を呼ぶ
092:滑     滑空はできないぼくがあとずさりしながら降りるムササビタワー
093:落     かるがると落っこちながら見た空にセミのこどもはまた会えるから
094:流行    公園にべつの名まえをつけるのが流行りはじめてそのあと春が
095:誤     キーボード小鳥のあしおとで鳴らし誤答例たちばかり産み出す 
096:器     分度器をふたつに折ったピックだけ残していつのまにか少女は
097:告白    ほら「子供踊印」のオブラート これは告白なんかじゃないよ
098:テレビ   4時5分山沿いは風テレビからざざざと飛んだ「受信相談」
099:刺     刺繍糸かぼそい場所にくぐらせてひかりをふくむことばをつづる
100:題     題名をつけてほしがる真夜中の野菜スープもへんてこな詩も


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完走報告(おとくにすぎな)

2006-10-12 12:56:52 | 題詠100首
題詠100首、完走しました☆

これは100首までのプロフィール画像です。

お題は魚つりゲームの磁石のようで、自分の中の思いがけないものにもくっついてひっぱりだしてくれました。
題があってもなくても、けっきょくは自分の中にあるものしか出てこないのですが、お題のパワーに助けられてそれをみつけるのは、とてもたのしかった!

平凡な感想だけど、ひとりだったらたぶんつづいてなかったと思います。
いっしょに走っていた(まだ走っている人もファイト~☆)みなさん、
見ていてくれたみなさん、
コメントくださったり、鑑賞サイトに取り上げてくださったり、寄り道で遊んでくれたりしたみなさん、
そしてすてきな場をつくってくださった五十嵐さん、
ありがとうございました☆

せっかく作った野原なので、まだまだここで遊びたいと思っています。
またみなさんとこにも行きます! よろしくね




コメント (18)
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100:題(おとくにすぎな)

2006-10-12 12:54:42 | 題詠100首
題名をつけてほしがる真夜中の野菜スープもへんてこな詩も
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099:刺(おとくにすぎな)

2006-10-12 12:49:48 | 題詠100首
刺繍糸かぼそい場所にくぐらせてひかりをふくむことばをつづる
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098:テレビ(おとくにすぎな)

2006-10-11 08:26:19 | 題詠100首
4時5分山沿いは風テレビからざざざと飛んだ「受信相談」
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097:告白(おとくにすぎな)

2006-10-11 08:24:51 | 題詠100首
ほら「子供踊印」のオブラート これは告白なんかじゃないよ
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096:器(おとくにすぎな)

2006-10-11 08:23:33 | 題詠100首
分度器をふたつに折ったピックだけ残していつのまにか少女は
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095:誤(おとくにすぎな)

2006-10-08 13:25:38 | 題詠100首
キーボード小鳥のあしおとで鳴らし誤答例たちばかり産み出す
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094:流行(おとくにすぎな)

2006-10-08 13:23:43 | 題詠100首
公園にべつの名まえをつけるのが流行りはじめてそのあと春が
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093:落(おとくにすぎな)

2006-10-08 13:22:31 | 題詠100首
かるがると落っこちながら見た空にセミのこどもはまた会えるから
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