すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

空の矢印

2020-08-14 09:41:03 | 短歌
    空の矢印

にせものの雪でも溶けてしまうからゆきむし、指でうけとめないで
やわらかいものだけ揺れる川べりのススキも水に映るススキも
橋のたもとの「左右注意」の看板の左右で冬を越すものたちよ
うつぶせの舟が乾いている浜をあるいてまるい石をあつめて
海岸地下道入口を指す矢印が空にふいっと浮かぶ冬晴れ

(「未来」818号 2020.3月)


     イセリアカイガラムシ

カーブミラー曇る奥から覗くのは来なかったかもしれない冬だ
帰りには撮ると決めてた虫はまだじっとしていて日の入りは五時
イセリアカイガラムシの犇めくこの枝はかろうじて萩、名札でわかる
クリームの筋まっしろなうちがわに孵ったものとまだ眠るもの
あといくつ ナンキンハゼの白い実をカラスはていねいに食べている


(「未来」819号 2020.4月)


   ルビーラテ

凶の無いおみくじたちを量産するラミネーターと栞職人
花の名で呼ばれる読書週間にぼくが行きたいのは水族館
締切の頃だけ座る椅子に来てただ空席の列をみている
ルビーラテのカップつめたくなってゆく 歌いたくないわけじゃない、けど
今日わからなくていいやと思うこと 甘いルビーといちごのちがい

(「未来」820号 2020.5月)
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