空の矢印
にせものの雪でも溶けてしまうからゆきむし、指でうけとめないで
やわらかいものだけ揺れる川べりのススキも水に映るススキも
橋のたもとの「左右注意」の看板の左右で冬を越すものたちよ
うつぶせの舟が乾いている浜をあるいてまるい石をあつめて
海岸地下道入口を指す矢印が空にふいっと浮かぶ冬晴れ
(「未来」818号 2020.3月)
イセリアカイガラムシ
カーブミラー曇る奥から覗くのは来なかったかもしれない冬だ
帰りには撮ると決めてた虫はまだじっとしていて日の入りは五時
イセリアカイガラムシの犇めくこの枝はかろうじて萩、名札でわかる
クリームの筋まっしろなうちがわに孵ったものとまだ眠るもの
あといくつ ナンキンハゼの白い実をカラスはていねいに食べている
(「未来」819号 2020.4月)
ルビーラテ
凶の無いおみくじたちを量産するラミネーターと栞職人
花の名で呼ばれる読書週間にぼくが行きたいのは水族館
締切の頃だけ座る椅子に来てただ空席の列をみている
ルビーラテのカップつめたくなってゆく 歌いたくないわけじゃない、けど
今日わからなくていいやと思うこと 甘いルビーといちごのちがい
(「未来」820号 2020.5月)
にせものの雪でも溶けてしまうからゆきむし、指でうけとめないで
やわらかいものだけ揺れる川べりのススキも水に映るススキも
橋のたもとの「左右注意」の看板の左右で冬を越すものたちよ
うつぶせの舟が乾いている浜をあるいてまるい石をあつめて
海岸地下道入口を指す矢印が空にふいっと浮かぶ冬晴れ
(「未来」818号 2020.3月)
イセリアカイガラムシ
カーブミラー曇る奥から覗くのは来なかったかもしれない冬だ
帰りには撮ると決めてた虫はまだじっとしていて日の入りは五時
イセリアカイガラムシの犇めくこの枝はかろうじて萩、名札でわかる
クリームの筋まっしろなうちがわに孵ったものとまだ眠るもの
あといくつ ナンキンハゼの白い実をカラスはていねいに食べている
(「未来」819号 2020.4月)
ルビーラテ
凶の無いおみくじたちを量産するラミネーターと栞職人
花の名で呼ばれる読書週間にぼくが行きたいのは水族館
締切の頃だけ座る椅子に来てただ空席の列をみている
ルビーラテのカップつめたくなってゆく 歌いたくないわけじゃない、けど
今日わからなくていいやと思うこと 甘いルビーといちごのちがい
(「未来」820号 2020.5月)
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