すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

題詠100首2008

2008-10-24 17:40:18 | 題詠100首2008
ことしの100首です。

「青空チャイム」
001:おはよう おはようは坂のてっぺん ジグザグに蜜柑畑をぬければ予鈴
002:次    港からしっぽをのばすむらさきの島の向こうへ次の春へと
003:理由   理科室の三本脚の木の椅子に海をゆめみる理由を告げた
004:塩    質問にこたえないままその舌は塩キャラメルの塩をみつける
005:放    あの町のFM放送局へ飛べ 色鉛筆でしるす宛先
006:ドラマ  ゆうぐれに学園ドラマ主題歌を踏んで疾走するムカデたち
007:壁    ステージの壁にぴたぴた演劇部一年ヤモリ部隊と名乗る
008:守    校庭は鳥獣保護区のまんなかでおおきな春に守られていた
009:会話   かぎかっこかならずとじて教科書の会話文なら句点でおわる
010:蝶    泣かないで飛び立たないで扉たち 蝶番には鎮めのくすり

「天文館につづく坂道」
011:除    除かれた星の模型が芽をふいたプラネタリウム裏の林で
012:ダイヤ  ダイヤモンドゲームの駒を青と決めいちばん遠い場所にゆく旅
013:優    まっすぐに飛ぶものを優先させて流星群のなか すれちがう
014:泉    ゆらゆらと雲母は剥がれ傷のある泉の底に鼓動はつづく
015:アジア  台風の名前となってコップ座は駆けるアジアの波すれすれに
016:%    ゆびさきは一番星に間に合うか9%の坂道のぼる
017:頭    太陽のほうを向くしかない頭 どの彗星も風に吹かれて
018:集    「博士、居てくれたのですね」全集の十二巻めに銀河の帯が
019:豆腐   この星の表面積が増すように六十四個に分かれる豆腐
020:鳩    メローペも鳩にかわって真空のなかの羽毛はまっすぐ落ちる

「雨かんむりがすこしおもくて」
021:サッカー  ぎゅううんとサッカーボール雲に触れはねかえるまでひとりがいいの
022:低     うらがわが銀の袋はわたしです気圧の低い椅子で待ちます
023:用紙    にわかあめ画用紙の群れにじませて象のせなかにうきあがる地図
024:岸     「海にいるごっこ」をすればこの岸に雲量ゼロの青満ちてくる
025:あられ   ひとつぶの雹をかくしてひといきにあられやこんこぶつけてあげる
026:基     あけがたのにおいがしてるダンボールぼくらの基地の霜注意報
027:消毒    かんむりを消毒しましょう日光と水がいっしょにふりそそぐ日に
028:供     草の実と露をお腰につけてきたいきものたちよ お供をします
029:杖     どこも霧 杖のささったところからうまれた水のうえ ぜんぶ霧
030:湯気    湯気と水蒸気のちがい口早に述べてしずかに雲を拭った

「3のつく数字のときに『さん』を入れ5の倍数で犬っぽくなる」
031:忍  水のコース・風のコースでまよいつつ忍法塾に参加する朝
032:ルージュ たくさんの鳥と木登りカンガルージュリーの飛ばす帽子をさがせ
033:すいか すいかにもトマトにも塩不要派に賛成票をひとつ入れます
034:岡 寝てたでしょう? 「つぎは長岡ペンギン」と駅員さんがいま言ったのに
035:過去  さんさんと過去からしっぽに降るひかり ずいぶん猿と雉に会わない
036:船 船便はあかるい土へ三等星ばかりの空をよこぎってゆく
037:V あと三つV(ブレス)の波をこえたならおしまいですとおじぎをします
038:有 ゆうぐれの有人島の桟橋に真水を積んだ船は寄り添う
039:王子 三日月はひとりでわたるはるばると姫も王子もいない砂丘を
040:粘 さしあげた粘土の犬にゆびの跡さがしてくれたみつけてくれた

「ぐるぐるまるまる」
041:存在 おやゆびとひとさしゆびをくるくるとするときだけの球の存在
042:鱗 すきまなく銀の芽鱗にかこまれてきみたちはまだ花びらじゃない
043:宝くじ かざぐるま型宝くじ抽選機発射係になれる幸運
044:鈴 しっとりとひかる小豆のまんなかにまんまるい鈴埋めておきます
045:楽譜 戻れない路地をのぞけばバイエルの楽譜の上の赤い花丸
046:設 藍色の器にねむる回遊魚 常設展の順路のよどみ
047:ひまわり 消えたこと気づかれないで消えるんだ今朝まわるのをやめたひまわり
048:凧 届かない しっぽが雲につまずいた凧ははげしくまわりはじめた
049:礼 雨あがり鳥とだれかのあしあとが朝礼台の周辺にある
050:確率 駅で転ぶ・傘を忘れる・まわり道したなら会える おなじ確率

「熊のてのひら」
051:熊 熊の手を借りて落ち葉をあつめたら三割くらいドングリでした
052:考 ミドリツキノワは新種、と言いながら大麦若葉のこと考えた
053:キヨスク キヨスクのひとと熊とはみとめあう特濃ミルク飴を選んで
054:笛 口笛訪問がくるよとカーテンのなかで蛹になっている熊
055:乾燥 熊はきらきらとみている乾燥剤青くしてゆくレンジのうなり
056:悩 悩んでるあいだも熊のあしおとはランタナランタナ垣根をめぐる
057:パジャマ しまパジャマ水玉パジャマ熊パジャマこのままパジャマさかさまパジャマ
058:帽 きょうからは夏帽子だね はねている熊の毛先もレモン色です
059:ごはん たまごかけごはんぐるぐるまぜている卵うまない熊とわたしで
060:郎 眠れない熊にきかせる月夜からはじまるほうの次郎物語

「へんなしつもん」
061:@  @(アットマーク)とト音記号のうずまきはきみの星でも反対ですか
062:浅 ニッキ味浅田飴置く場所として常にただしいのはどこでしょう
063:スリッパ もうそろそろ冬をはじめていいですかキッチンに訪れるスリッパ
064:可憐 「この中に可憐なものはいくつある?」虫こぶ図鑑つきつけて聞く
065:眩 青空で眩しくうごきまわるのは白血球なんだって知ってた?
066:ひとりごと ひとりごと? ひとりうたですアマリリス歌ってたのは炊飯器です
067:葱 ラッキーアイテムと信じていましたか つながっている葱のわっかも
068:踊 ほんとうは段差でつまずいたんでしょう? 踊ったふりのハエトリグモは
069:呼吸 今なにが入れかわったの呼吸する蛙の皮膚とわたしのあいだ
070:籍 どうしてか聞いちゃだめだね床下に籍をおく瓶類はやさしい

「本棚にかくした手紙」
071:メール 未開封電子メールの封筒に糊の匂いをさがして触れる
072:緑 ひとところだけが緑に透けているあの暗闇にホタルギツネが
073:寄 寄宿舎の窓のむこうの空を描く 青のなかまをぜんぶ重ねて
074:銀行 バンクスさんが銀行員であったこと思い出す夜のハーディ・ガーディ 
075:量 蜘蛛の糸編みつづければにじ色にのびてゆく秋風の質量
076:ジャンプ 上へ、とはかぎらないけどずぶ濡れの影をかわしてぼくらはジャンプ!
077:横 プーがいないプー横丁で(こん ぽこぽん)いっぱいの雪虫を見あげる
078:合図 ギターでもハーモニカでもないきみの春の合図が川のほうから
079:児 学校で泣いたことある? 児童集会のはじめの遠方凝視
080:Lサイズ 森じゅうがわきかえるLLLLサイズの卵でつくるカステラ

「たぶんあしたはここにいる」
081:嵐 会いたくて阪急嵐山線にこっそり乗ってきたヌートリア
082:研 つるつるの学研都市にすみついたヒメツルソバのあたらしい花
083:名古屋 千種文化小劇場の蔦の葉にふれて名古屋に間に合いました
084:球 水半球すこしはみだす夢半球少女の黒い帽子のふちは
085:うがい 老医師は宇治茶のボトルゆびさしてうがいはこれでええねんと言う
086:恵 北山のほうを見ててね恵方巻風ロールケーキをたべおわるまで
087:天使 天使は渡り鳥の一種 ぱたぱたと日暮れの琵琶湖におりてねむった
088:錯 メルカトル図法で淡くひろがったグリーンランドのような錯覚
089:減 学生街のココアなかなか減らなくて水平線の跡がいくつも
090:メダル 何番目にうたえば露のメダルだろうイーハトーヴのかしわばやしで

「夢にいちばんちかいのりもの」
091:渇 進まない自転車をこぐ頭上から警告「渇いてからでは遅い」
092:生い立ち この川の生い立ちを伝えるために南へ放つみどりの小舟
093:周 観覧車あかりをともせ円周をなぞる視線はとおくから来る
094:沈黙 特急が走りつづけて沈黙はひとりにひとつふたりにもひとつ
095:しっぽ クロ、おいで。サイドミラーみたいな耳と手紙を書けるしっぽをもって
096:複 春はまだ始発列車の風もまだ はばたくまえの羽状複葉
097:訴 訴えるようにあつまる白鳥のかたちのボートぼくをえらんで
098:地下 地下鉄に窓はひつよう闇でないものが流れるのをたしかめる
099:勇 手を挙げる勇気がなくて校庭の真上にのぼる気球をみてた
100:おやすみ ねむってる顔は市バスのなかでしか見たことないひと おやすみなさい

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完走報告(やすたけまり)

2008-10-24 17:36:05 | 題詠100首2008
やっと完走です。
今年も終盤に暴走でした……。

五十嵐きよみさん、今年もすてきな場を作ってくださってありがとうございました。
みてくれたみなさんもありがとう。またあそびましょう。



熊は花びら形のキノコを発見しました。
(まだまだ住みついていそうな熊です。よろしくね。)

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100:おやすみ(やすたけまり)

2008-10-24 17:31:37 | 題詠100首2008
ねむってる顔は市バスのなかでしか見たことないひと おやすみなさい
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099:勇(やすたけまり)

2008-10-24 17:30:36 | 題詠100首2008
手を挙げる勇気がなくて校庭の真上にのぼる気球をみてた
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098:地下(やすたけまり)

2008-10-24 17:29:35 | 題詠100首2008
地下鉄に窓はひつよう闇でないものが流れるのをたしかめる
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097:訴(やすたけまり)

2008-10-24 17:28:30 | 題詠100首2008
訴えるようにあつまる白鳥のかたちのボートぼくをえらんで
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096:複(やすたけまり)

2008-10-24 17:27:29 | 題詠100首2008
春はまだ始発列車の風もまだ はばたくまえの羽状複葉
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095:しっぽ(やすたけまり)

2008-10-24 17:26:22 | 題詠100首2008
クロ、おいで。サイドミラーみたいな耳と手紙を書けるしっぽをもって
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094:沈黙(やすたけまり)

2008-10-24 17:25:17 | 題詠100首2008
特急が走りつづけて沈黙はひとりにひとつふたりにもひとつ
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093:周(やすたけまり)

2008-10-24 17:24:13 | 題詠100首2008
観覧車あかりをともせ円周をなぞる視線はとおくから来る
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