すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

列車風

2020-08-14 09:39:16 | 短歌
     琵琶湖の深呼吸

みずうみも深呼吸していないのに春はなしくずしに来てしまう
なんだかんだ暖冬だったんだと風はざらざら撫でて過ぎるみずうみ
乗換のすくないルートは水色のマークだ 浅い眠りをはこぶ
まちがえて乗ってしまった湖西線経由で春へ、いいえ遠くへ
     
(「未来」809号 2019.6月)




     電車と文庫本

本を読むこどもたちしずかに揺れて電車は朝の水をよこぎる
     今年度は週二日阪急に乗る。
(無理な句跨りは禁止)シートには3/2/3の仕切りがあるね
ドアにもたれつばさ文庫の怪談を読む子よ、ひらくからきをつけて
ここからは新潮文庫の天としかわからないけどほほえむ少女
     前任校で四年育てた棚。
「火の鳥伝記文庫」の棚の春の陽にチンギス=ハンは背を曝される

(「未来」810号 2019.7月)



     列車風

長岡天神駅(ながてん)の鳩と目が合う階段の平行四辺形の窓枠
もぐりこむときに電車はひゅるひゅると地上の風をひきずってゆく
比叡おろしの仲間のようにかぞえられ西院駅の冬、列車風
危険です手すりにおつかまりくださいあなたも風の谷にゆきます
水無月になれば無くなる改札の風の出口はどうなりますか

(「未来」811号 2019.8月)
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