すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

ハバチのかたち

2020-08-14 09:40:15 | 短歌
     ハバチのかたち


水は樹にもらったという 何ハバチかわからないけどハバチのこども
真夏日のイモムシいっぴきそのからだいっぱいぶんの水をたたえて
胸脚は祈るかたちに腹脚は抱くかたちに終わらない夏に
まるまるとつくられた虫をかわいいとかんじるようにつくられたヒト
試験管・シャーレそれぞれ歌を容れほんとはかたちなんてないのに

(「未来」815号 2019.12月)




     追いつめる

あふれだすアレチヌスビトハギ ぼくは歩道の端に追いつめられて
    困ったときは川邊透さんの「虫マトリックス」。
たてよこにみどりみどりとたどりますちいさいきみの名に届くまで
ハラビロヘリカメムシまたはホシハラビロヘリカメムシと追いつめてゆく
夕陽ならまぶたの裏に見るほうが赤いとわかる、電車で眠る

(「未来」816号 2020.1月)



   バスターミナル

十一月、ナンキンハゼの葉の赤も知らないうちに暗くなること
空は雲ごと鳥は群れごと冷えるのを見あげるだけのバスターミナル
四十雀の並べるドミノあぶないよあぶないよって伝える語順
     シジュウカラ語を、ほかの小鳥も聞きわけているのか。
口笛に意味はあるのと笑うから窓にはシジュウカラのさよなら

(「未来」817号 2020.2月)
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