すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

白蝶黄蝶

2015-07-26 15:56:56 | 短歌
あたらしく咲いても春の自転車のおなじタイヤを見ているスミレ

絵のなかの鳥は翼で指している 行きたい森は絵の奥にある

     初蝶来何色と問ふ黄と答ふ(高浜虚子)

この春は白、いま光ったルリシジミ 真昼の空にとおく答えた

初蝶でその年の夏を占う話(たのしいムーミン一家)が好きだった。

おだやかな夏がくるよとまだちゃんと来てない春に告げられている

シジミチョウぽろぽろ川へ降りてゆくキリトリセンのような残像

穂のかたちのこしたままの枯れ草にあたためられているモンキチョウ

黄色にも会えた日だからひそひそと日向の翅に触れていいかな

この春にはじめて会ったヒトとしてきみどりの眼に映してもらう



(「未来」761号 2015.6月)

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二月の樹

2015-07-26 15:51:37 | 短歌
坂をのぼる だれかのダウンコートからぬけだしてきた羽毛をつれて

   大きなセンダンの樹がある道。

実は消えて種はかわいて拾えるとしたらざらざらするなつかしさ

ポケットのなかで触れたらトラピストバター飴、いえ白い種です

銀杏の並木の冬芽は影の色だから クレヨンいっぽんぽきり 折りたい

とりどりの名をもつ梅の名札にはどれも「バラ科」と記されている

卵鞘は梅のつぼみに囲まれて花に会うことはないカマキリ

とおくから見る白梅が好きなこと/その樹の名前 春に忘れる


(「未来」760号 2015.5月)




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