すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

緩歩動物門に入門

2012-07-04 22:47:44 | 短歌
「未来」7月号の「今月の一人」のページに、9首+みじかい文章を載せていただきました。
                      
    

        緩歩動物門に入門


からからの苔は涙を埋める森 water bears かぞえて眠れ

敲クのか推スのか緩歩動物の門によりそう月の光は

クロワッサン――クマムシ――クロレラ――つぎつぎとビーズをくぐる銀色の糸

たる? たるる? たるるるる? もう乾いてる? 眠っていると風が尋ねる

クチクラの外から水は満ちてきて時間のつづきだってわかった

ぼくクマムシ。熊は見たことありません(おそらくおおきすぎてみえない)

ゆるゆるとあしのさきからうごきだす(春っておおきすぎてみえない)

ぼくを踏んづけてもぼくに踏まれても知らないままできみも地球も

かんぽかんぽ(さんぽじゃないよ)苔のなかあるいて(さんぽかもしれないよ)



しょせん人間のことばでしかうたえないのだけど、人間の想像力なんて超えたところに生きているものに惹かれる。たとえば、クマムシはどんなふうに世界や時間を感じているのか?と気になる。クマムシになれはしないけど、どこかすこし重なるところにいってみる。「緩歩動物門っていい名前の門。入門したい。」話しかけてみたら、わたしとクマムシのすきまに、うたがうまれた。
(以上)


さて、クマムシってなあに?というみなさんには、クマムシ研究者 堀川大樹さんの「むしブロ+」より「クマムシトリビア総集編」を紹介します。乾眠のようすも動画で見られるので、のぞいてみてね。


それにしてもこんなタイトルの連作を載せてくださる「未来」の懐の深さよということで宣伝もしておこうっと。

                    
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まるまるちから

2012-07-01 17:20:25 | 短歌
石段をのぼっておりてミルキーのつぼみをつけた白梅に会う

「飛梅が空を駆けたのって咲く前?」「満開だったら花が降ります」

天神さんに飛ばない梅も立っている 鳥のなまえの木札をさげて

つぼみがまだつぼみのままでいる力 オカダンゴムシのまるまるちから

   貝柱=閉殻筋。貝に筋肉痛ってあるんだろうか。

曇天に咲いてしまって紅梅は疲れた貝のようにほどけた

(「未来」725号 2012.6月)




 ただでさえ載った時点で三か月たっているのに、ここの更新が周回遅れ的なかんじになっている……いまごろ梅のつぼみとかスミマセン。
でもなんか最近、この「自分の手を離れてから載るまでの三か月」がありがたいもののように思えます。(しようと思えば書いてすぐアップできるネットはしんどいというか……まあ歌自体がその間にかわるわけじゃないし、読む人にとってはおんなじなのかもしれないけど。)

 三月に撮った梅の木の写真を添えておきます。

 さて、「未来」6月号では、「梟(アウル)の鏡」というページ(与えられたテーマに合う歌を選んで、鑑賞文やエッセイを書くコーナー)にも書かせていただきました。テーマが「楽器」!!うわあ好きな歌いっぱいありすぎて困る……ということで「笛」にしぼってみたもののそれでもなかなかしぼりきれませんでした。東直子さんの「リコーダー」穂村弘さんの「マグマ大使の笛(あ、これ楽器でよかったのか?)」そしてそして大ファンである科学者岡ノ谷一夫さんの貴重な一首(『NHK短歌』で発見)をとりあげさせていただきました。(未来以外で読みたいおともだちはこっそりメールくださいね

 もひとつ宣伝。「短歌研究」7月号「うたう☆クラブ」の特集のなかで、初投稿の頃のういういしい話(?)を書かせていただきました。わたしのそれはともかく、コーチの座談会やメッセージ、先輩方の思い出などなど中味の濃い特集です。よんでね。
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