すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

あたま・むね・はら

2017-08-17 01:54:45 | 短歌
ナミアゲハの目玉模様は胸にある こころの場所はしらないけれど

    新しく増えた勤務先は、ときどき草と虫を見に行くエリア。

あたま・むね・はらに分けられそのままで枝を真似ればおおかたは腹

せまい胸にうまれた棘は、これは脚 野茨をゆくためだけの脚

ノイバラはまだ咲かないねキエダシャクあちこちやわらかい棘だらけ

    山科駅に降りる日が少なくなった。

もうひとりぐらい見ている人がいる気がしていつもみあげる梢

僕たちが降りない週に駅前のアオスジアゲハは羽化するだろう



(「未来」786号 2017.7月)
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(題詠)

2017-08-17 01:53:28 | 短歌
日光にとけるふわふわ(野襤褸菊?)飛びたつ前の名は呼ばないで

風はまた流れはじめるなめらかな柳葉魚の群を空に放てば

「聖護院八ッ橋総本店前」と夢のなかでもささやく市バス

レインブーツいいえ長靴折りたたむメジロの羽に三月の雨

銭亀にひなたのまるい石ころをちいさな陸を見つけてあげて



(「未来」785号 2017.6月)



久々に題詠を、ということで、ちょうど視聴していた「学生短歌バトル」のお題を借りました
題《ししゃも 名 夢 ブーツ 羽 銭 日 流 陸 聖》 が2つずつ入っています。
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蛹をみあげる

2017-08-17 01:52:59 | 短歌
雪晴れのまず西山がみえてきてまだまっしろなほうへ行きます

降りる駅 まだぼたん雪 クスノキの葉裏のさなぎ見つけてしまう

    アオスジアゲハの越冬蛹である。

冬を越すことをえらんで手が届きそうな高さでそれでもいいの?

みあげてることを気づかれないように(烏に)気づかれてしまったか

見えるのにわからない今みえているけれども生きているのかどうか

    羽化するとしたら、三月、または四月か。

てのひらに答は降らず春は降りあるいはべつの駅前をゆく







(「未来」784号 2017.5月)
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冬の乗りもの

2017-08-17 01:52:36 | 短歌
風散布のうつしくしい種みていたら動物散布のやつにやられた

すがすがしいほどのとげとげ膝下にコセンダングサからの一撃

ネムノキの向こうにみえるベンチまでわたしは種の乗りものになる

金曜のきょうはきいろい吊革の箱に入ってはこばれてゆく

欄干に融雪剤のふくろたち凭れかかって( 外はさむいよ)

整理券になる前の紙みえているうずまいている壊れるんだね

空の字が空にひかってここからは二日の月がうまく撮れない





(「未来」783号 2017.4月)
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白い林に

2017-08-17 01:52:16 | 短歌
まるい月が沈む時刻に冷えきったミモザの枝に眠るキジバト

このなかに(無音の画像ゆびさして)エナガの群れがさわぐ、さびしい

   去年の冬は、ヒーターが間に合わなかった。

ミドリヒドラみるみる白くなってゆき 雪は降ったかどうかわすれた

    夏、なぜか緑がもどってきたのが、今年最大の奇跡。
    
この冬はこのままでいてヒドラたち色を取りもどしたままでいて

真冬真夜中おどりあがっておっこちてこのあとちゃんと炒飯になる


(「未来」782号 2017.3月)

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さんかくじるし

2017-08-17 01:51:50 | 短歌
あしもとのさんかくじるし1番から縁のくずれたおにぎり並ぶ

乗車位置表示マークをうちがわにつくりなおして外側は、消す

もうみんな帰ったあとのホームには端っこに子供のカモノハシ

鳥たちを白いひかりは呼びはじめナンキンハゼの実がはじけたよ

アスファルトは木の実の殻におおわれて雨あがりには銀河になった

   桜の樹皮にヨコヅナサシガメが集まっている。

ぬけがらを重ねて黒いバリケード築いて虫はまだ眠らない



(「未来」781号 2017.2月)

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